30話 〜異変〜
ヘルビアに感謝の言葉を伝えた後、すぐに目覚めた。
「おはよう」
「バロン様!」
「バロン!」
「お兄ちゃん!」
目が覚めるとふかふかなベットの上、ここは自室か?
横には涙目になっているセア、アモネ、メイラがいた。
「心配かけてすまなかったな」
起き上がろうとすると体の節々が痛い。筋肉痛だけの痛みではないようだ。
「まだ起き上がらない方がいいです」
「お医者さんが全身打撲に粉砕骨折、生きてるのが奇跡だって言ってたからまだ寝といた方がいいよ」
「ああ、そうするよ」
お言葉に甘えて体を横のままにする。
「バロン、本当に大丈夫なのか?」
メイラが心配そうに俺を見てくる。てか、この場にいる3人が心配そうにしている。
「本当に大丈夫だ。体が痛いだけでしっかり心臓も動いてる」
右腕と左足の感覚がないことは黙っておこう。
「ねえ、何か隠してるよね?」
「なんでそう思うんだ?」
「だって腕にナイフ刺さってるのになんも言わないから」
「なんだと⁉︎」
腕を見てみるがナイフなんて刺さっていない。クソっ、はめられた。
「本当は腕の感覚がないとかなんでしょ?」
「……さすが俺の妹だな」
セアとメイラの顔は真っ青になった。
「もしかしたら針がある状態の針戦機で叩けば治るのでは?」
「俺のこと殺す気か⁉︎」
「冗談に決まってるじゃないですか」
冗談を言ってるような顔じゃなかったんだよなー。
なんというか大切にしてた魔道具が動かなくなって焦ってとりあえず全力で叩いて余計壊れるみたいな?
「そんなことはともかくそれ以外で大丈夫じゃないところありますか?」
「それ以外は特にないぞ? なんか忘れてるような気がするが」
「大切なことならきっと思い出せるのだ」
「ああ、そうだな。重要な時に思い出せる気がする」
とりあえず今はそれは置いといて感覚のない腕を治すか。
「身体強化、そして補強」
周りの3人は首を傾げて不思議そうにしている。
「融合型魔法:自己治癒」
周りに黄緑色の光が現れ全身を包み込む。腕を軽く動かし感覚を確かめてみる。
不自然なところはないな。
「よしっと」
「まだ立たない方が……」
「もう大丈夫だ。ちゃんと動くしな」
ちょっとふらついたりするけど特に異常なない。
「ほんとに大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ」
しばらくはリハビリしたほうがいいな。その後に鍛錬だな。
◆◇◇◆
何日かが過ぎ気付けば日が出ている時間が長く暑い夏の時期になった。
そして問題も突然になんの前触れもなく起こる。
「……この町から出れないってどういうことだ?」
「町から出ようとすると町の入り口に戻ってしまうのだ」
町から出られないか……。原因を探ってみる必要があるな。
「転移」
……何も起きない。メイラの部屋をイメージしたのに転移魔法が発動しない。
まるであの時と同じように。
「バロン様! 町のあっちこっちで巨大なゴーレムが現れ町の家々を破壊していると報告が入りました!」
セアは息を切らし額には汗を流していた。
町から出られずゴーレムが暴走、誰かが故意に起こしたとしか考えられない。
「お兄ちゃん! 天空の城が町の上に……」
「この時期にか?」
天空の城は秋になるまでこの町の上を通らない。あからさまにここにいるぞって言ってるな。
1つずつ対処していくしかないな。今回ばかりは仕事したくないじゃさすがにダメだ。
「セア、ゴーレムは何体いるんだ?」
「今のところは4体でそれぞれ2体ずつの2つのグループに別れています」
セアは息を整えて淡々と話していく。
「シンとハルを呼んで5人でゴーレムを倒してくれ」
「バロンはどうするのだ?」
「俺はアモネが言っていた天空の城に向かう」
町の広場の真上から禍々しい魔力を感じる。ゴーレムの何十倍も強くおそらく傲慢いや、ヘルビアより強い。
知り合いの中で戦えるのは両親とメイラのご両親くらいだ。
「私も一緒に……」
「アモネはゴーレムの討伐と住人を避難させてくれ。今からアモネの言葉が魔王としての言葉だ」
アモネは無言で頷いた。
そしてそれぞれの役割を果たしに向かった。
◆◇◇◆
「なんだよ。ここは」
昔来た時は綺麗な風景が広がる花園だったのに今はジャングルにのように樹木が茂っている。
「ガルゥ」
目の前には狼子、小さな狼がこちらを威嚇していた。
「ガウ!」
飛びかかってくるが簡単に避けられる。
足からは血が出ていた。
「ガウゥ……」
狼子は明らかに弱っている。
……はぁ。
「ちょっとじっとしてろ」
言葉が分かるのかそれとも死を覚悟したのかその場に倒れ込み目をつぶって力を抜いた。
「俺は自己治療はできるけど回復魔法は使えないからな。今はこれで我慢してくれ」
足に白い包帯を巻き、少しだけ足に魔力を流す。程よく魔力を込めることによって骨と筋肉、血管を強化することができる。逆にやりすぎると破裂するけどな。
「ガル? ガウ、ガウ!」
起き上がって俺の周りを駆け回る。
「こら、そんなに走り回るな。まだ治ってないんだから」
「ガウゥ〜」と鳴いて俺の足に頭を擦った。
どうやら懐かれてしまったようだ。
「今から危ないやつと戦うから連れてけないし、ここに置いていっても他の魔物に襲われるからな」
仕方ない。とりあえず城の執事に任せるか。
「えっと、俺が助けた犬だ。怪我を負っているから優しく接してくれっと」
何故かアイテムボックスに犬の首輪が入っていたのでそれを狼子に付け一緒に紙も首輪に挟んでおく。
「転送」
これはワープを応用した魔法で作ったのは多分俺だ。
どっかで似たような魔法を見た気がするんだよな。
「さてとちゃんと城に送れただろうからそろそろこのジャングルを攻略するか」
こうして俺はツタを切り裂いたりたまに襲いかかってくる魔物を倒し最深部を目指した。
◆◇◇◆
城を出て少し歩いたところにある噴水前、シンさんとハルさん、それに手伝ってくれると言ってくれたシンさんのお姉さん。
名前は聞いてないからわからないけど。
「大きいですね」
噴水の前には2体のゴーレムが立っていて私の2倍くらいの大きさ。ちなみにお兄ちゃんに頼まれた通りに住人たちをお城まで避難させた。
お城なら万が一魔物が襲ってきても結界で守られてるし、お兄ちゃんに剣術を教えた剣神って呼ばれてた人やクアーラ達もいるからかなり安全なはず。
「結局3人ずつに分かれて戦うことになっちゃったけどこれに勝てるの?」
「大丈夫なのだ。ゴーレムは核さえ壊してしまえばもう動かないのだ」
そう言いながら武器を構えて3人で駆け出す。
ゴーレムは攻撃の威力は高くてもスピードはそんなに早くはなかったから数分で倒すことができた。
こういう時に強くなったなーと実感する。
「ヘ〜、思ったより早く倒したじゃん」
その声の主は拍手をしながら後ろから近寄ってくる。
声の主は男性、季節に合わない厚手の白いコートに白い髪、その赤い目を見て分かった。この人には1人では絶対に勝てない。
「さてと無駄な抵抗はしないでくれ。あの方に生かして捕まえるように命令されたんだ」
右手に持っていた紅の剣を掲げた。笑みを浮かべる。
「後ろに下がって!」
剣を横に薙ぎ払うと魔力でできた刃が飛んでくる。
「水の神竜の威厳!」
「暴風の刃!」
「破裂!」
3人でそれぞれ魔法を放ち相殺する。
「あれを相殺するか。面白い」
笑みを浮かべてこっちへ近づいてくる。
「ならばせいぜい足掻いてみるがいい」
こうして私、セアさん、メイラさんと不気味な男性との戦いが始まった。




