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魔王さま、働いてください!!  作者: 沢山 綱政
第3章 魔王はつらい

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29.5話 〜夢は万能〜

 これは俺も忘れてしまった物語。

 てか、夢って起きたら忘れちゃうよね。


        ♪ ♪ ♪


 私はアキア。気づいたらものすごく強くなってたっていうそこら辺に普通にいる女の子よ。

 いや、普通な女の子なはず?


「貴方に決闘を申し込みます」


 え? 決闘を申し込まれるのは普通じゃないって?

 君だって女の子に決闘を申し込まれたことあるでしょ?

 なんで分かるかだって? そりゃ、君の夢だからね。バロン君。


「はああ!!」

「力み過ぎだよ、もっと力を抜いて!」


 決闘のはずなのにいつも戦い方を教えちゃうんだよね。

 まあここ学校だしいいよね。


「はいっと」

「くっ……参りました」


 これでえっと、1754連勝目かな? なんで覚えてるのかって? それはね、頭がいいからよ。


「やっぱ、高嶺の花だったんだよ。ほら、元気だせって」

「今日は勝てる気がしたのに……」


 どうやら、私に勝ったら付き合えるみたいな噂が流れているらしい。まあ、綺麗な茶色の瞳と髪を持っている超絶美人だからね。


「すいません」

「ん? 決闘?」

「それも是非ともしたいんですけどちょっと手伝って欲しいことがあって……」

「ふーん、やって欲しいことって?」

「世界を救って欲しい……みたいな?」

「みたいなって」


 思わず苦笑してしまう。軽く言ってる割には凄いこと言ってるんだもん。


「いいよ、いいよ」

「ほんとですか!」

「ただし条件がある」

「条件って?」


 こうなったらあれでしょう? 目と目があったらやることと言ったら1つしかないしね。


「私に勝つことだ!」

「やっぱですか」


 ん? メイラに似てるって? 私は世界を救うって言うくらいなんだからどれくらいの強さがあるか確かめる必要があるよね!


「さあ、どこからでもかかって来なさい!」

「じゃあ、遠慮なく?」


 異空間から取り出した剣を構え、私の方へ突っ込んでくる。


「⁉︎」


 見えなかった? 気づいたら目の前に彼がいた。そういえばまだ名前を聞いてなかった。


「そういえば君の名前は?」

「僕の名前は……」


 スッと鋭い風が彼の顔を刺すように通り過ぎ、前髪が持ち上がる。


「ユウーーだ」

「そう、じゃあユーでいいよね」


 ユーは無言で頷く。じゃあ今聞きたいことは聞いたし、そろそろちゃんと戦おうかな。


「ほら!」


 剣で受けとめられてしまった。今まで戦ってきた人の中で1番強いかも。


「……」


 ユーは何かを呟いた。すると私の後ろに現れた。


「はあぁぁ‼︎」


 なんで後ろに⁉︎ そんな魔法、聞いたことある気がする。

 その攻撃に反射的に反応し、剣を背中に移動させる。すると金属と金属がぶつかり合う音がする。


「へえ〜そのくらい強いんだ」


 少し本気を出してみよう。とりあえずあの力でいいか。


「ウィンティア!」

「はーい?」

「お願い!」

「はーい」


 そう返事をすると人から指輪へと変身した。


「さて、これくらいで倒されないでくれたまえよ。救世主ユー!」


 そんなことを言っている間にもユー攻撃を与えてくる。

 私に攻撃を当てられるかな?


「⁈」


 ユーの攻撃は私の目の前に現れた蒼く輝くオーラに弾かれる。いや、反射したかな?

 やっぱり驚いてるね! おとぎ話に出てくる武器をまさか私が持ってるとは思わないだろう。

 ん? なんで君はそんなに驚いているのかな?


「ネオ・漆黒の槍(ダークランス)!」


 漆黒の槍が1本だけ現れる。その槍は反射圏内に入る直前、15本になった? 生成、複製、分裂?


「ッ……‼︎」


 そんなことを考えている暇はないようだ。

 これを突破するとか結構やるじゃん。


「ねえ、ユー」

「はい?」

「私、全力で戦うからユーも全力で戦ってくれない?」

「今のがぜんりょーー」

「じゃないでしょ。私を……」


 手に持っていた片手剣を振る。さっきまで使っていたこの剣も七大罪の武具の1人だ。


「見くびらないでよ!」


 傲慢の剣、自分より弱いと思っていると火力が2倍になる。これを使うと下手したら相手が死んでしまう。

 本気を出してくれないのがいけないし、そもそもこれで死ぬような人ではないことはわかってる。

 でも、思いっきり校舎に穴開けちゃった。あれ? 死んで……ないよね?


「……」


 良かった。無事みたい。それに目が紫色に光ってる。

 ゾクゾクって武者震いしちゃった。


「ルクス! 撹乱!」

「わかったのじゃ」


 ルクスは姿を消す。すると無数の美人な私が現れる。


「妾が少しばかり相手をしてやるのじゃ」


 周りが霧で包まれる。ユーが完全に霧に包まれるとルクスが作り出した私の分身たちが一斉に飛びかかる。 


「……ヴィネ」


 ユーは何かを呟いて魔法の槍を投げる。ヴィネってなんだろう? 君は知っているんだね。


「なっ‼︎」


 ルクスの顔をスレスレにユーが投げた槍が飛んでいく。


「どうやら少しばかり本気を出さないと時間稼ぎをできないようじゃな」

「時間稼ぎ?」

「さあ、無様に踊るのじゃ」


 ルクスがそう言うと霧がより濃くなる。

 しばらく金属同士がぶつかり合う音が聞こえていたが突然その音は止んだ。

 霧が晴れるとルクスが膝をついていた。ユーは無傷だ。


「今までにないくらい本気で戦わないと勝てないかも」


 そんなことぼやいているとユーが目の前に現れた。

 やっぱり転移魔法か何かなの?


「くっ、すまない主様よ」

「ううん、十分すぎるくらい時間を稼いでくれたよ」


 これを人に使うのは初めてだ。それくらいユーは強い。


虚無の剣(ソード・ゼロ)


 白の炎を刀身に纏わせた。

 この技を使ったのはヘルビア以来というかヘルビアにしか使ったことがない。

 人に使っちゃダメな技だしね。


地獄の業火(ネオ・インフェルノ)


 ユーは漆黒の炎を刀身に纏わせ、かなり大振りに剣を振る。

 私とユーの剣はぶつかり合うと白と黒は混ざり合い大きく爆発する。

 その時起きた爆風によって後ろに吹き飛ばされてしまった。


「……」


 砂埃が舞い視界は霞む。

 ユーを探すために周りを見渡すとドーム型の結界が姿を現していた。

 その結界にはボロボロになっていて崩れないのが奇跡のような状態になっている。

 先生たち、何があっても壊れないとか言ってたはずだけど?


 そんなことを考えていたせいなのか前から近寄ってくる気配に気づけなかった。

 いや、ただ疲れただけ、かな。


「僕の勝ち、ってことでいいですか」

「うん、ユーの勝ちだ。youだけにね」


 そんなギャグはともかく押し倒されて手が顔の前にある、これで負けを認めないのは見苦しすぎる。


「一緒に世界でもなんでも救ってあげるよ」

「はい、よろしくお願いします」


 こうして私とユー、そして仲間たちの短い旅が始まるのでした。


 ………………


 …………


 ……


 でこの物語は終わらないよ。


 次の日から3日間、これが本当の旅の始まりで君がこれから絶対に必要になる物語。

 って言っても起きたら全て忘れちゃうんだけどね。

 忘れるとは言っても一時的に、必要な時にこの物語を思い出すだろうから目を大きくして見るんだよ。


 じゃあ、この物語を始めよう。魔界の伝説の一つを……。

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