28話 〜憤怒と嫉妬、そして……〜
さて、やって来ました。
えっと、憤怒の間かな?
うんうん、メイラだけ動けてるから憤怒だな。
「さあ、どこからでもかかってくるのだ!」
「試練ヲ始メル」
メイラがせっかちすぎて憤怒の声と被ってるよ。
あれか、欲求(戦闘)不満なのか?
たまに戦ってやるか。
「……」
憤怒は相当お怒りの様子だ。
赤色に輝き、龍から人型の男性に変身すると何も言わずにメイラへ突撃する。
「やあっ!」
メイラは予め準備していた聖剣でその攻撃を受け止める。
憤怒の爪は長く伸び鋭く尖っている。
「これは……」
メイラは1人でブツブツと言いながら笑みを浮かべる。
正直に言おう。怖ーよ、ちょっと引いたよ。
「火炎斬!」
メイラの剣に炎が宿る。
「……」
憤怒の爪も炎が宿り、憤怒の背も赤く燃え上がる。
「おお〜」
メイラは歓喜の声を上げている。
メイラの剣と憤怒の爪がぶつかり合い「キーン」と音を立てる。
ぶつかり合った衝撃で火の粉が舞う。
てか、熱すぎな。
「そろそろ本気を出すのだ」
聖剣に黄金の光も宿る。炎と光が混ざり合い、綺麗に光っている。
「全てを無に帰す剣」
剣を中心に光と炎の渦ができる。
その渦を地面に叩きつけ、憤怒の方へ飛ばした。
地面を巻き上げながら憤怒に直撃する。
あの攻撃は転移魔法を使わない限りは避けきれないだろう。
「一応、楽しかったのだ」
敵役みたいなことを言いながら聖剣をしまう。
あれ? 憤怒が消滅してるんじゃね? だって無に帰す剣って……。
「なあ、メイラ」
「ん? なんなのだ?」
「まさか憤怒を跡形もなく消したか?」
「……」
そこでの無言はかなり困るんだが? まさか、まじで消しちゃった?
と心配したが憤怒が立っていた場所が赤く光る。
「ちゃんとあるな……グローブが」
「剣が出てくるよりこっちの方がいいのだ」
そう言いながら装着すると手を握ったり、広げたりして着け心地を試している。
「なるほど……」
1人でブツブツと言いながら壁に手を向ける。
「破裂」
そう唱えると壁が爆発する。脳筋が……脳筋が魔法を使えるように!?
「メイラ!」
メイラは魔法を撃つと同時に右膝を地面に付ける。
「大丈夫なのだ。急に力が抜けただけで……」
「あ〜魔力切れか」
あの火力の魔法を初心者が撃ったんだ、魔力切れになっても仕方ないか。
「ほら、おぶってやる」
「そこまでしなくてもいいのだ! 凄い元気なのだ……」
勢いよく立ち上がったがすぐに倒れてしまった。やっぱり、まだだめだな。
「ほら、そんな状態なんだからつべこべ言わない」
半場強引にメイラをおんぶする。
身体強化をしないと持ち上がらないな。鎧重すぎんだろ……。
「むぅ……」
メイラはそんな声を出しながら素直におんぶさせてくれた。
今日に限って魔力を回復するポーション、略して魔力ポーションを忘れたんだよなー。
「まあ、このまま嫉妬まで……」
「行くのじゃー!」
ルクスは忘れた頃にやって来るってか?
◆◇◇◆
難なく嫉妬の間まで来たわけだが……。
間じゃなくて階層だっけ? まあいいや。
今回はアモネで次は俺かー。ドキドキしてくるな。
「私ハ嫉妬、試練ヲ始メル」
嫉妬が言うとアモネは槍を構える。
青色に光り、姿を変える。
その姿は小さな女の子だ。
今、思ったけど遠距離武器を使うのってクアーラだけだよな。
「すぅ……水の神竜の威厳!!」
嫉妬に向かって槍を向ける。と同時に
「×3!!」
かける3って雑すぎだろ。
槍に光と闇が集まり混ざる。右に水の槍が左に風の槍が現れる。
それも3つ。ちゃんと現れるもんなんだな。
「行けぇぇー」
アモネが手を振りかざすと全ての槍が嫉妬の方へ飛んでいく。
「グラァァ」
嫉妬が唸ると大きな盾が現れる。
槍がその盾に当たると全てアモネに跳ね返っていく。
「転移」
アモネは転移魔法で嫉妬の後ろへ転移する。
「闇雷!」
稲妻が嫉妬へ向かっていく。今度の攻撃はしっかりと直撃した。
あの盾に当たらなければ攻撃は通るようだ。
「ふぅ……よし」
アモネは何かを決心したようだ。
「闇雷」
嫉妬に向かって放つ。その攻撃は盾に当たった。
「転移」
それを確認するとすぐに嫉妬の後ろへ転移する。
「水の神竜の威厳×3!!」
すぐに1番初めに放った魔法を使う。
今度は全ての攻撃が嫉妬に直撃した。
まーた、手加減してないよ。あの3人は手加減が出来ないのか?
幸い、この武具たちは(多分)壊れたりしないから良かった。
「で、今回の武具は?」
「指輪?」
アモネが疑問形で答えているが、どう見ても指輪だ。
「武具じゃなくなったもう1人が嫉妬なのじゃ」
唐突に出てきたルクスが指輪に哀れみの目を向けている。
「さあ、次こそお主の番じゃ。覚悟は出来ておるのか?」
そんなことを言われたら答えは一つしかないだろ?
「ああ、もちろんだ」
他のみんなは俺とこいつの会話の意味が分からずに頭を傾げている。
まあ、当然か。これについてわかっているのは俺とルクスとユウキだけなんだから。
「さあ、そろそろ終わらせようぜ」
大きな声でそう呼びかけ本当の最下層へと向かう。
いっそのことフラグでも立てておくか。
この戦いが終わったら……
Blu-rayを大人買いするんだ。
◆◇◇◆
とまあ、冗談はさておき。
俺の目の前には美少女が立っている。
「……」
金色の瞳、俺と同じ黒髪。そんな感想よりも先に思ったことがある。
無表情だ。こちらに全く興味持っていないような表情。
「試練者?」
その美少女、いや、傲慢は首を傾げる。
「なんでこんなに弱い奴が私の所有者候補なの?」
結構、辛辣なこと言ってくる。そこそこ強いと思ってたんだけどな……。
「いいや、今まで弱かったあの6人とは違って私は強いから」
傲慢はこちらへ近づいてくる。
「すぐに終わらせてあげる」
不敵な笑みを浮かべる。背中に息も詰まりそうなオーラを纏いながら。
「ふぅ……ああ、どこからでもかかってこい」
一旦、息を整えて漆黒の剣を構える。
「試練を始める……!」
同時に地面を蹴り、戦いの火蓋が切られた。




