26話 〜七大罪の武具と暴食〜
「おお、動けるな」
戦闘中は全く動かなかったのに今は全然動く。
久しぶりの開放感だ。
「おい、バロン」
シンが近づいてくる。さっき手に入れた大剣を右手に持ちながら……。
「何か言うことねぇのか?」
こういう笑顔程怖いものってないよね。
ははは……。
「なんの事かわからないなァ!」
大剣が体スレスレに過ぎる。
なんか変な声出ちゃったじゃん!
「はい、すいません。黙っててすいません」
1秒未満で土下座した。それはもう魔王の威厳を失うレベルの速さで。
「ほう、で?」
痛い、痛い、痛い。俺、Mじゃない。背中を踏まないで欲しい。
「ハイヒール痛い。ちょ、やめて」
「だから?」
相当お怒りのようだ。転移魔法で逃げようにもこの状態のまま移動しちゃうからな。
「えっと、てへぺろ★」
えっと、見事に顔面キックを喰らいました。
超絶痛かったです。
「まあ、それはともかく次はハルだな」
「オレか?」
ハルは不思議そうな顔をしている。
「これは罪の重さ順で進んでくんだ」
「7番目が色欲、6番目が暴食、5番目が強欲、4が怠惰の3が憤怒で2が嫉妬で、1が傲慢だ」
全員、大丈夫そうだな。
「で、7、シン。6、ハル。5、クアーラ。4、セア。3、アモネ。2、メイラで最後が俺だ」
「ちなみに選ばれる理由はその罪を犯すことがない人らしい」
「どこでそのような情報を手に入れたんですか?」
セアが真っ直ぐにこちらを見つめてくる。
「そうだな。かなり信用しているヘルパーみないなとこかな」
もちろん、この情報をくれたのはユウキだが、それを言ったところで意味の無いので言わないでおこう。
「分かりました。ですがもうひとつだけ」
「言ってみ?」
「この剣はあのおとぎ話の剣ですか?」
「ああ」
今だから言っておこうか前に話したおとぎ話には続きがある。
旅人が去った後、剣が消えたのだ。まるで自らの意思を手に入れたかのように。
消えた翌日、とある7人が行方意不明になった。
1人目は国民から嫌われている傲慢な王。
2人目は嫉妬深かった貴族。
3人目はすぐに怒鳴り散らす。酒場の男。
4人目は全く働かずに家に篭っていた女、
5人目はなんでも手に入れようとした貴族。
6人目はなんでも食べてしまう。大食い。
7人目は男を惑わす。妖女。
この7人が行方意不明になった後、その国はとても平和になった。
剣は7人を消し、洞窟で眠っていると語り継がれている。
この物語の教訓は多分、悪い大人になるなよ! ってことだと思う。
「ほんとに実在したんだ……」
クアーラがポカーンと口を開けている。
いつもの敬語が消えてるよ。
「それよりもしゅっぱーつ!」
半分強引に全員を引き連れ、下の階層へ向かおうとした時だった。
「妾のことを忘れてもらっては困るぞ?」
シンが持っている大剣が光り輝いた。
一瞬で女性の姿に変身した。
しかし、裸だ……。裸!?
「お兄ちゃん見ちゃだめ!」
アモネが両手で俺の目を塞いできた。
ちなみにハルの方はシンが腕で目を囲い込むように塞いだらしい。
「すまん、すまん、間違えてしまったわい」
「カッカッカ」と高笑いしながら魔法で服を作り出す。(音がした)
「もう、いいぞ」
ルクスは胸を開いた服を着ていた。
「さて、話があるのじゃ」
ルクスは宙で座る。空気イスじゃなく宙に浮かんでいるのだ。
「ここから先はやつ――傲慢のやつ以外は決まった言葉以外話さない」
「どういうことなのだ?」
「一言で言うならばまだ寝ておるの」
ルクスは自分の髪をを弄んでいる。
「全く、寝坊助だのぅ」
またもや「カッカッカ」と高笑いをした。
こいつ笑いしすぎだろ。
「じゃあ試練は出来ないのか?」
ハルが尋ねるとルクスは首を横に振る。
「いいや、試練はできるぞ。難易度が多少、低くなるがのう」
ルクスは地面に足を付け、こちらへ近寄る。
「お主は分かっておるのだろう? それでも進むのか?」
「ああ、もちろん」
「お主、強欲だのぉ」
またもや「カッカッカ」と高笑いし、剣に戻った。
「妾は疲れた。主様よ、持ってくれないか」
「おい、ならせめてこっちに入れ」
「ケチな主様じゃ」
ブツブツ言いながらシンの手の甲の紋章へ入っていった。
あいつ、シンのこと主だと思ってないだろ。
「今度こそ行くぞ!」
ほら、早く帰ってゴロゴロしないといけないんだから。光の速さで終わらせるよ!
◆◇◇◆
ユウキから聞いた通り、次はハルの番だった。
さすが、ユウキだ。
「……我輩ハ暴食ノ宝具デアル。デハ、シレンヲハジメル」
黄色に光り、姿が変わる。鎧を着た男に変わった。
すると、無言でハルの方へ襲いかかる。
あと、今頃だが。試練中は俺たちに攻撃が当たること、怪我することはないらしいぞ。
ハルは盾で攻撃を受け止めると盾を振り上げる。
暴食の体勢が傾くとその隙に剣を振る。
しかし、少しも傷が付いた様子がない。
「やっぱ、ダメかぁ」
ハルは剣を腰にしまい、盾を両手で持つ。
「よし、こい!」
それに応えるかのように暴食が突進する。
「反射盾!」
暴食の腕が折れる鈍い音が聞こえた。
「盾の攻撃!」
暴食が倒れそうになっているところに突進攻撃を当てた。
「グルァァ!!」
暴食が唸るとみるみると傷が回復している。
「えっと、えー、は?」
ハルは少し取り乱している。それもそのはずだろう。あれが暴食の固有魔法なのだから。
「そいつ、自分の損傷を喰って回復するからな〜」
言ってあげた。俺って結構優しいよね。
「言うのが遅い!」
せっかく教えてあげたのに怒られてしまった。
「あと弱点は背中だぞ」
「ほんとに言うのが遅い!!」
さっきよりも大きな声で怒鳴るなよぉ。
「まあ、いいや」
ハルは背中に回り込んで盾を振り上げる。
「おりゃぁ!」
ハルは盾の角で暴食を殴る。
あれはかなり痛いやつだ。
暴食は立ち上がることも回復することも出来ていない。
ひたすら殴るはずるくない?
「我輩ノ主トシテミトメマス」
暴食が盾に変わる。あれ? 剣じゃなかっけ?
「黄色の盾じゃん! カッコよ!」
ハルは喜んでるからそれで良しとするか。
「勝ったようじゃの」
戦いが終わったタイミングでルクスが出てきた。
「そういえば昔、旅人以外に妾達を手に入れたやつが1人だけいたのじゃ」
突然、一人語りを始めた。大丈夫かこいつ?
「その時にやつが武具の形を変形させる魔法を施したのじゃ」
舌打ちしそうな顔になっている。
相当、やばい所有者だったんだなー。
「ちなみにそやつは初代魔王の妻じゃ」
ご先祖さまでした。うちの先祖がまじですいません。
「他のやつは鎌や弓になったり、あとはもう武器でさえない手袋のようなグローブや指輪にされたやつもいたの」
最後のやつらは可哀想だなー。
多分、俺の武具じゃないからいいけど。
「お主たちはそんなことしないのじゃろうな?」
みんな無言で頷いた。威圧感が半端ないって……。
「なら、いいのじゃ」
ルクスはくるっと後ろを向き、下に降りる階段に指をさした。
「では、次の階層へごーなのじゃ!」
「おー」
なぜかルクスが仕切る感じで進んでしまった。
俺の役目が……。




