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魔王さま、働いてください!!  作者: 沢山 綱政
第3章 魔王はつらい

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26話 〜七大罪の武具と暴食〜

「おお、動けるな」


 戦闘中は全く動かなかったのに今は全然動く。

 久しぶりの開放感だ。


「おい、バロン」


 シンが近づいてくる。さっき手に入れた大剣を右手に持ちながら……。


「何か言うことねぇのか?」


 こういう笑顔程怖いものってないよね。

 ははは……。


「なんの事かわからないなァ!」


 大剣が体スレスレに過ぎる。

 なんか変な声出ちゃったじゃん!


「はい、すいません。黙っててすいません」


 1秒未満で土下座した。それはもう魔王の威厳を失うレベルの速さで。


「ほう、で?」


 痛い、痛い、痛い。俺、Mじゃない。背中を踏まないで欲しい。


「ハイヒール痛い。ちょ、やめて」

「だから?」


 相当お怒りのようだ。転移魔法で逃げようにもこの状態のまま移動しちゃうからな。


「えっと、てへぺろ★」


 えっと、見事に顔面キックを喰らいました。

 超絶痛かったです。


「まあ、それはともかく次はハルだな」

「オレか?」


 ハルは不思議そうな顔をしている。


「これは罪の重さ順で進んでくんだ」

「7番目が色欲、6番目が暴食、5番目が強欲、4が怠惰の3が憤怒で2が嫉妬で、1が傲慢だ」


 全員、大丈夫そうだな。


「で、7、シン。6、ハル。5、クアーラ。4、セア。3、アモネ。2、メイラで最後が俺だ」


「ちなみに選ばれる理由はその罪を犯すことがない人らしい」

「どこでそのような情報を手に入れたんですか?」


 セアが真っ直ぐにこちらを見つめてくる。


「そうだな。かなり信用しているヘルパーみないなとこかな」


 もちろん、この情報をくれたのはユウキだが、それを言ったところで意味の無いので言わないでおこう。


「分かりました。ですがもうひとつだけ」

「言ってみ?」

「この剣はあのおとぎ話の剣ですか?」

「ああ」


 今だから言っておこうか前に話したおとぎ話には続きがある。


 旅人が去った後、剣が消えたのだ。まるで自らの意思を手に入れたかのように。


 消えた翌日、とある7人が行方意不明になった。

 1人目は国民から嫌われている傲慢な王。

 2人目は嫉妬深かった貴族。

 3人目はすぐに怒鳴り散らす。酒場の男。

 4人目は全く働かずに家に篭っていた女、

 5人目はなんでも手に入れようとした貴族。

 6人目はなんでも食べてしまう。大食い。

 7人目は男を惑わす。妖女。


 この7人が行方意不明になった後、その国はとても平和になった。

 剣は7人を消し、洞窟で眠っていると語り継がれている。


 この物語の教訓は多分、悪い大人になるなよ! ってことだと思う。


「ほんとに実在したんだ……」


 クアーラがポカーンと口を開けている。

 いつもの敬語が消えてるよ。


「それよりもしゅっぱーつ!」


 半分強引に全員を引き連れ、下の階層へ向かおうとした時だった。


「妾のことを忘れてもらっては困るぞ?」


 シンが持っている大剣が光り輝いた。

 一瞬で女性の姿に変身した。

 しかし、裸だ……。裸!?


「お兄ちゃん見ちゃだめ!」


 アモネが両手で俺の目を塞いできた。

 ちなみにハルの方はシンが腕で目を囲い込むように塞いだらしい。


「すまん、すまん、間違えてしまったわい」


 「カッカッカ」と高笑いしながら魔法で服を作り出す。(音がした)


「もう、いいぞ」


 ルクスは胸を開いた服を着ていた。


「さて、話があるのじゃ」


 ルクスは宙で座る。空気イスじゃなく宙に浮かんでいるのだ。


「ここから先はやつ――傲慢のやつ以外は決まった言葉以外話さない」

「どういうことなのだ?」


「一言で言うならばまだ寝ておるの」


 ルクスは自分の髪をを(もてあそ)んでいる。


「全く、寝坊助だのぅ」


 またもや「カッカッカ」と高笑いをした。

 こいつ笑いしすぎだろ。


「じゃあ試練は出来ないのか?」


 ハルが尋ねるとルクスは首を横に振る。


「いいや、試練はできるぞ。難易度が多少、低くなるがのう」


 ルクスは地面に足を付け、こちらへ近寄る。


「お主は分かっておるのだろう? それでも進むのか?」

「ああ、もちろん」

「お主、強欲だのぉ」


 またもや「カッカッカ」と高笑いし、剣に戻った。


「妾は疲れた。主様よ、持ってくれないか」

「おい、ならせめてこっちに入れ」

「ケチな主様じゃ」


 ブツブツ言いながらシンの手の甲の紋章へ入っていった。

 あいつ、シンのこと主だと思ってないだろ。


「今度こそ行くぞ!」


 ほら、早く帰ってゴロゴロしないといけないんだから。光の速さで終わらせるよ!


        ◆◇◇◆


 ユウキから聞いた通り、次はハルの番だった。

 さすが、ユウキだ。


「……我輩ハ暴食ノ宝具デアル。デハ、シレンヲハジメル」


 黄色に光り、姿が変わる。鎧を着た男に変わった。


 すると、無言でハルの方へ襲いかかる。


 あと、今頃だが。試練中は俺たちに攻撃が当たること、怪我することはないらしいぞ。


 ハルは盾で攻撃を受け止めると盾を振り上げる。


 暴食の体勢が傾くとその隙に剣を振る。

 しかし、少しも傷が付いた様子がない。


「やっぱ、ダメかぁ」


 ハルは剣を腰にしまい、盾を両手で持つ。


「よし、こい!」


 それに応えるかのように暴食が突進する。


反射盾(リフテクトシールド)!」


 暴食の腕が折れる鈍い音が聞こえた。


盾の攻撃(シールドアタック)!」


 暴食が倒れそうになっているところに突進攻撃を当てた。


「グルァァ!!」


 暴食が唸るとみるみると傷が回復している。


「えっと、えー、は?」


 ハルは少し取り乱している。それもそのはずだろう。あれが暴食の固有魔法なのだから。


「そいつ、自分の損傷を喰って回復するからな〜」


 言ってあげた。俺って結構優しいよね。


「言うのが遅い!」


 せっかく教えてあげたのに怒られてしまった。


「あと弱点は背中だぞ」

「ほんとに言うのが遅い!!」


 さっきよりも大きな声で怒鳴るなよぉ。


「まあ、いいや」


 ハルは背中に回り込んで盾を振り上げる。


「おりゃぁ!」


 ハルは盾の角で暴食を殴る。

 あれはかなり痛いやつだ。


 暴食は立ち上がることも回復することも出来ていない。

 ひたすら殴るはずるくない?


「我輩ノ主トシテミトメマス」


 暴食が盾に変わる。あれ? 剣じゃなかっけ?


「黄色の盾じゃん! カッコよ!」


 ハルは喜んでるからそれで良しとするか。


「勝ったようじゃの」


 戦いが終わったタイミングでルクスが出てきた。


「そういえば昔、旅人以外に妾達を手に入れたやつが1人だけいたのじゃ」


 突然、一人語りを始めた。大丈夫かこいつ?


「その時にやつが武具の形を変形させる魔法を施したのじゃ」


 舌打ちしそうな顔になっている。

 相当、やばい所有者だったんだなー。


「ちなみにそやつは初代魔王の妻じゃ」


 ご先祖さまでした。うちの先祖がまじですいません。


「他のやつは鎌や弓になったり、あとはもう武器でさえない手袋のようなグローブや指輪にされたやつもいたの」


 最後のやつらは可哀想だなー。

 多分、俺の武具じゃないからいいけど。


「お主たちはそんなことしないのじゃろうな?」


 みんな無言で頷いた。威圧感が半端ないって……。


「なら、いいのじゃ」


 ルクスはくるっと後ろを向き、下に降りる階段に指をさした。


「では、次の階層へごーなのじゃ!」

「おー」


 なぜかルクスが仕切る感じで進んでしまった。

 俺の役目が……。

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