25話 〜色欲の龍〜
「今からお探検に行きたいと思います」
アモネの誕生日の次の日、セア、アモネ、メイラの前で宣言した。
「なに、お散歩感覚でとんでもないこと言ってるんですか」
セアは呆れたような顔だ。
「いや、あるかないかで俺の運命が決まるアイテムを取りに行くんだぞ?」
「それがあればお兄ちゃんは生きていられる」
「ああ、多分な」
腕と背筋を伸ばし、ピンと蹴伸びの体勢になりストレッチを始める。
「バロン、何を探しに行くんだ?」
「そうだな。秘密ってことで」
「それでこの4人で行くんですか?」
セアがそう尋ねると体勢を戻し、「いや」と言った。
「7人で行かないといけない。まあ、選ばれし7人じゃないと最悪死ぬけどな」
「その7人って?」
そう聞かれたので笑みを浮かべる。
「俺、セア、アモネ、メイラ、シン、ハル、クアーラ。この編成で行く」
「これはゲームじゃないですよ」
「今から行くところは対戦ゲームみたいなもんだ」
そう言うと3人に手を差し出す。
「ほら、行くぞ」
4人で門前へ向かった。
◆◇◇◆
「お、ちょうどいい所にいたな」
門前に転移するとシンとハル、仕事中のクアーラがいた。
「今日はどんな用事で……」
「今日は探検に行くぞ」
シンの言葉を遮り、空に指を向ける。
「探検……?」
シンが不可解そうに呟くとハルの目が輝く。
「シン! 探検だぞ! もっとテンションプリーズ!」
「そうだそうだ。心躍る探検だそ!」
ハルと意気投合してしまった。
「はぁ、全くこのバカ魔王様は……」
セアは横で呆れていた。
「お兄ちゃんは昔からこういうの好きだったから」
アモネは苦笑いをしている。
「クアーラ殿も行くのだろ?」
メイラがクアーラの方を向き、尋ねている。
「そうなんですか!?」
後ろで立っていたカーシュとリンはニヤッとするとクアーラの背中を押した。
「いい報告を待ってる」
「クアーラの分まで仕事しとくから行ってこい」
2人がそう言うのでクアーラは「分かったよ」とついてくることになった。
「じゃあ、城を守ってくれよ。カーシュとリン」
そう言い転移する前に2人は「了解です」と背筋を伸ばして敬礼した。
◆◇◇◆
「ここはダンジョンじゃないですか!」
セアが大声で叫んだ。
「まさかダンジョンに来たかっただけですか?」
「違う、違う」
全力で否定し、ボス部屋へ向かった。
「ってあれ? 結構最近に誰か入ったぽいな」
誰かが入った痕跡がある。
「ボス部屋ってそんなもんじゃないのか?」
シンの顔には疑問が浮かんでいた。
「ここにはある鍵が必要なんだよ」
そう言い、扉の鎖を触る。
「お父さんとお母さんが入ったんじゃないかな?」
アモネは冷や汗をかいている。
「いや、あの二人は槍を使わない」
扉を触りながら何かを確認する。
「なあ、アモネ。確か、槍を使うよな」
アモネの体が反応するかのようにビクッと動く。
「えっと、ごめんなさい?」
アモネは可愛らしい笑顔で謝った。
「いや、別にいいんだけどな?」
アイテムボックスから漆黒の剣を取り出し、扉に突き刺す。
「ほら、全員準備しろ」
そう言うと全員武器を構える。それと同時に転移した。
転移先はドーム型の部屋だ。
「ここは3分以内にクリアするぞ」
そう言うとアモネは驚いていた。
「でも、ボスは3匹いるよ?」
「ああ、1匹につき1分以内だな」
そう言いながら何も存在しない床に魔法を放つ。
「暗黒の爆裂弾」
床には大きな穴が開いた。
それと同時に稲妻が前から直線的に向かってくる。雷竜が現れたのだ。
「ハル、受け止められるか?」
「あれくらいなら余裕だ」
白い盾に稲妻が当たると稲妻は霧散する。
「漆黒の槍」
黒い槍が雷竜の口に槍が突き刺さり、一撃で倒れる。
「次は火竜だよ」
「いや、もう終わりだ」
そう告げると先程穴を開けた場所に指を向ける。
「あれ? 倒してる?」
火竜は丸焦げになっていた。
「火竜は出てくると同時に火球を出してくるからな」
説明しながら後ろへ魔法を放つ。
「真の漆黒の槍」
無数の槍が後ろへ飛んでいく。
「ギュラァ……」
地龍の呻き声が聞こえると同時に倒れる。
「さて、これだな」
地龍の様子を確認することなく、部屋の奥にある扉に剣を突き刺す。
剣を刺した壁は消え、階段が現れる。
「これは隠し階段ですね」
全員、階段を見下ろしている。
「この下からが命懸けになるぞ〜」
そう言いながら階段を降りる。
俺について行こうと全員、階段を降りた。
大きな空間に着き、少し歩くと1人を除いて全員動けなくなってしまった。
「妾は七大罪、色欲の龍、ルクスなり」
桃色の龍が目の前に現れる。
「貴様の名を名乗るがいい」
ルクスと名乗る龍はシンの方を見る。
「俺か?」
この空間で唯一動くことができるのがシンだけなのだ。
「あ〜、シンだ」
「貴様は男の体をよく知っているようだ」
ルクスはニヤついている。
「おい、言っとくけど一応男だからな?」
「そんなことはいい、我にうち勝てば色欲の武具をやろう」
「色欲……?」
シンは俺の方を見る。つい目を逸らしてしまう。
「おい」
「まさかシンが選ばれるとはなー」
知ってたけど多分言わない方がベストだよなー。
「なんでよりによって色欲なんだよ!」
「今更だけど初めの頃より雰囲気が柔らかくなったよな」
「なんで今なんだよ!」
ため息をつき、ルクスの方へ向く。
「じゃあ、やるか」
シンは大剣を構えた。
「では、試練を始めるとしよう」
ルクスが光に包まれる。それと同調するかのように周りが桃色に染まっていく。
「やはり、こちらの方が戦いやすいのでな」
光が消え去ると龍が女性に変身していた。
「神竜族はこのように姿を変えることができる。では、本当にそろそろ始めよう」
ルクスがそう言うと同時にシンの目の前に現れる。
「なっ」
突如現れたルクスを叩き斬る。確かに斬ったはずなのに手応えがなさそうだ。
「どこを狙っておるのだ?」
ルクスはシンの後ろにいた。不敵な笑みを浮かべている。
「そりゃッ!」
ルクスを真っ二つに斬ったはずだがどこにもルクスは見当たらない。
「だからどこを狙っておるのだ?」
シンは1つの魔法を思い浮かべる。
「今まで斬ったやつは全て幻影か。色欲って言うくらいだから幻影魔法くらいお手の物か」
シンがそう言うとルクスは笑みを浮かべ、「ご名答」と言った。
「なら、全て破壊すればいい」
シンは深呼吸をし、心を落ち着かせた。
「狂想曲!」
シンの瞳は真紅に染まる。破壊するとしか考えられなくなっているようだった。
「グアァァ!!」
ルクスが10体ほど現れる。しかし、一瞬にして霧散する。
「グアァァァ!!」
今度はルクスの姿が見えなくなる。
(破壊、破壊、破壊、はか……考えろ!)
この時、初めて狂想曲を発動している間に自我を取り戻した。
(いつもより感覚が何十倍も鋭い気がする)
シンは視覚、嗅覚、聴覚がいつもより機能している。
細かな音でルクスがとこにいるかが分かる。
「そこだァァ!」
鉄がぶつかり合う音が聞こえた。ルクスは後ろへ吹っ飛ばされる。
「くふふ、貴様なかなか面白いのぉ」
ルクスは立ち上がり、シンの方へ手を向ける。
「良かろう。貴様を認めよう。主様よ」
ルクスがそう言うと光に包まれる。光が消え去ると大剣が浮いていた。
「お、動けるようになった」
全員、動けることを確認するとシンの方へ向かった。
「ほら、早く手に取れよ」
シンは頷き、大剣を手に取る。すると、剣は手に吸い込まれ、手の甲に紋章が浮かぶ。
「なっ」
驚くと同時に頭の中に声が響いてくる。
『主様よ、今、主の頭に直接話しかけている。これからよろしく頼むぞ』
ルクスがそう言うとシンは「ああ、よろしく」と呟いていた。




