21話 〜人界でもトラブル?〜
「ここが人界かぁ」
目を輝かせて周りを見渡す。
魔界は旧ヨーロッパ風なら人界は現代の日本風だろうか?
今日はバロン、セア、アモネ、ハル、俺で人界へと来ていた。
「魔族は魔法を人族は科学を極めたらしいぞ」
バロンは周りを見渡している4人に説明するかのように言った。
━━━━━━━人族と魔族━━━━━━━
久しぶりのティクの説明タイムだよ!
今回は人族と魔族についてだよ!
人族と魔族には違いは1つしかないんだ。
その違いが魔法を使いこなせるかこなせないか、これしかないよ。
人族は魔法は使えるけど目くらまし用の魔法か軽い傷を治すくらいしか出来ないんだ。
だから、代わりとして人族は科学を進歩させたんだ。
だけど、科学というのは自然を犠牲にしてしまう。自然を犠牲にしないために魔族の仕事が増えたんだ。
これについて魔族の誘拐事件などが起きたけど魔王と人界の王で色々な対策を行ったんだ。
これがふたつの種族の共存の始まりになったよ!
今回はここまで、またね〜!
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「今日はどんな用事でここに来たの」
アモネさんがバロンの裾を軽く引っ張りながら聞いている。
「それは昨日……」
昨日メイラさんが急に言い出したらしい。
□■□■□
「バロン、明日は人界に来てくれないか?」
セアとアモネに捕まり、拘束されている俺に対して何かを思い出したように話しかけてきた。
「なんでだ?」
顔だけをメイラに向ける。
「明日、私のお父さんがバロンに会いたいって……」
「はぁ!?」
驚きのあまり、魔力を暴走させてしまった。あ、やべ。
「あっ、拘束が……」
「明日な、わかったよ」
そう言い残すと転移魔法で逃げ出した。
□■□■□
「お兄ちゃんはお城の場所がわかるの?」
「えっと、メイラの部屋の前なら……」
現在地は人界だが、城の付近ではなく港町だ。
「じゃあ、1度そっちに行って、外を覚えてから戻ってくれば?」
「その手があったか!」
メイラの部屋の前へと転移した。
◆◇◇◆
「さてと、ちゃっちゃと外を見るか」
軽く運動をしながら、独り言を漏らしてしまう。
「窓、発見っと」
窓を開け、外を見る。数秒、見てから転移魔法を使おうとしたが魔法が発動しなかった。
「なんだ……?」
転移以外の魔法も使ってみようとするがやはり発動しない。
「とりあえず、あるあるのとこに行ってみるか」
うろ覚えな城内を進んだ。
◆◇◇◆
結果は予想通りだった。予想していた、王座の間にその原因があった。
「バロン! 逃げるのだ!」
メイラは俺を見るなり、そう叫んだ。
「貴様がバロンかァァ!」
金髪のイケメンが禍々しいオーラを纏い、城内の全体に響くような声で叫ぶ。
「魔法が使えないのはお前のせいか」
ため息をつきながらすぐ近くにあった剣を手に取った。とりあえずこの剣でいいか。
「貴様を殺せばメイラは自分に振り向いてくれんンだァ!」
男がそう叫ぶだけで軽く後ろへ飛ばされた。
「それだけでこんなに飛ぶのかよ」
苦笑し、足に力を込める。
「あいにく、俺の持ち札は片手剣と魔法だけじゃないんでね」
ジャケットの内側に手を入れ、男に向かって短剣を3本程投げた。
「無駄だァ!」
男は全てを剣で撃ち落とす。その隙に男の懐に潜り込んでいた。
「喰らえッ!」
両手を床に付け、右足で男の脇腹を思いっきり蹴った。
男は足を地面に付いたまま、後ろへ飛ばされた。
「魔法だけ封じてもダメだということかァ」
その時、男の顔をしっかりと見た。首にはチョーカーを、目は充血しており、憎悪などの負の感情が滲み出ている。
「ククク、クハァァァ!!」
男が不気味に笑うと背中が変形していく。
「全力を出そうじゃないかァ」
すぐさま、男の原型は消え、竜に似た顔を持った悪魔のような姿になった。
「これじゃ、物理も効かないな」
またもや苦笑してしまうが目を閉じ集中する。
「だからと言って自分の知り合い、いや、一応の婚約者を見捨てる理由にはならないな」
視界が紫色になると、不敵な笑みを浮かべた。
「死ねェェ!」
男が長い爪を突き出しながら突撃してくる。
「72柱――51柱目……バラム」
そう呟くと背中に牛、人、羊の頭に蛇の尾を持った悪魔が現れる。その悪魔を取り込み、男の攻撃を軽々と避ける。
「貴様ァ! なぜ魔法が使えるのだァ!」
「さあ? なんでだろうな」
男を煽るような態度で話す。
「貴様ァ、答えなければ殺すぞォ!」
「どーせ、言わなくても殺すつもりだろ?」
ため息をつき、やれやれとわざとポーズを取る。
「調子に乗るなァァ!」
男は爪を振り上げ、風の刃を作り出す。
全てを避け、何事も無かったかのように立つ。
「こっちのターンだな」
ゆっくり歩きながら男へと近づいていく。男は俺の方へ襲いかかろうとしている。
「お前の攻撃は今後一切当たらないぞ」
まるで見えているかのように攻撃を避けているように見えるだろうが実際に見えている。その隙に一撃を入れた。
「グハッ!」
男は床に大の字で倒れ込むがすぐに立ち上がり体制を整えた。
「やっぱ、魔法が使えないのはキツイな」
そんな独り言を呟く。その隙にも男は攻撃してくるがかすりもしなかった。
「なぜだァ、なぜ当たらんのだァ!」
男は息を切らし、膝を床についている。
「そうだな、特別に教えてやろう」
男へと近づき、剣を男の首に向けた。
「全て見えてるんだよ」
男が首に付けていたチョーカーを切り裂いた。
すると、男は元の姿に戻った。
「やっぱり、これか」
黒いチョーカーを握ると塵となって消えた。
「なっ、消えた……?」
疑問に感じたがそれよりも先にメイラの様子を見ないと。
「メイラ、大丈夫か?」
メイラの顔を覗き込むとメイラは笑顔で「大丈夫なのだ」と言った。
「それにしてもバロンは凄いのだな」
「いや、メイラが力負けするなんて珍しいな」
「それは……これのせいなのだ」
メイラの右の手首には腕輪がついていた。
「これは……?」
「弱体化の腕輪らしいのだ」
腕輪に指を当てると小さな声で「解除」と呟いた。すると、腕輪は真っ二つに割れた。
「体が軽くなったのだ!」
「そうか、それは良かった」
あれ? 何か忘れているような?
「やべ、みんな置いてけぼりのままだ」
おそらく港町で待っているのだろう。
「メイラも一緒に来るか?」
「ああ、行くのだ!」
メイラはどこが上機嫌だ。
(戦いの中で私のことを婚約者と言ってくれたのだ)
怖い目にあったことよりも俺を両親に会わせることよりも先にこのことを考えていた。
ちなみに暴走した男は5日前からの記憶が一切なく、1ヶ月ほど逮捕されたあと何事もなかったかのように釈放された。
「じゃ、迎えに行くか」
「うむ!」
2人で転移魔法でみんなの居るところへ向かった。




