20話 〜水の神竜の試練〜
「ここに来るのは久しぶりだな」
そこは所々から光が入り込み、足首にも満たない量の水が足元にある広い洞窟だ。
「今となっては懐かしいな」
ただ1つだけ洞窟の中央にある祭壇を摩る。
「この頃からかアモネが心を開いてくれたのは……」
アモネは初めから俺に好意を持っていたわけではない、むしろなかった方だ。
これはアモネの昔話だ。いつもよりほんの少しだけ長くなるかもしれないが静かにな。
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「もう5年も経っておるのに全くと言っていいほど儂らに懐いてくれないの」
その時、魔王だったトーグは両肘をテーブルに手の甲を額に当てて悩んでいた。
魔王の試験よりも世界の破滅の危機の時よりもトーグにとっては難しい問題だったらしい。
「アモネちゃんや、バロンと遊んでおいで」
「……」
ミマは優しく話しかけるがアモネはそっぽを向いた。
「はぁ、明日から儂らは人間界へ行かんといけんのにこれじゃ心配じゃ」
「そうだねぇ、こうなったらうちの息子を信用するしかなくなるねぇ」
2人は困った顔をしていた。今回ばかりは娘を理由にサボることが出来ないのだ。
「上手くやっておくれよ」
ミマがため息をつきながらその言葉をこぼした。
次の日、俺とアモネに留守番を任せ、転移魔法で人間界へと向かった。
留守番と言っても城の中には使用人が大勢いるが……。
「なあ、アモネ。そろそろ目を合わせてくれないか?」
アモネの目を覗き込もうとするがアモネは俺の目線から逃げた。
「……まだダメか」
諦め、アモネの手を握り自分達の部屋へと戻った。
何かが原因でアモネが喋れないのを知っていた。トーグもミマもその解決方法を探しているがまったく出がかりが掴めないらしい。
2人はこれを隠しているが断片的には知っていた。
ちょっと寝るか。
この時、まだ11歳で5時に起きるというのはかなりキツかった。だが、この行動は最もしてはいけなかったのだ。
「アモネ、ちょっと寝る。おやすみ〜」
そして眠りについた。
その後、俺が目を覚ましたのは午前7時。周りを見てもアモネはどこにもいなかった。
「城の中をうろついてるのかな?」
探索魔法を使い、アモネを探した。
城の中央部にある廊下にの真ん中に反応があった。しかし、その場から少しも動こうとしていない。
「……動かない? 何かあったのか!?」
転移魔法を使い、アモネの方へと向かった。
◆◇◇◆
「アモネ!!」
アモネは廊下で蹲り、もがいていた。この廊下はあまり人が通らないのだ。
「どうしたんだよ!」
取り乱してしまう。
「――く―げて、早く逃げて!」
アモネはそう叫ぶと俺のことを押し飛ばした。
「アモネ?」
アモネから水色の光が溢れる。どんどんアモネの姿が変わっていく。
「ギュオォォォ!!!」
アモネは一瞬で水龍の姿になり、雄叫びをあげる。
「……苦しそうだな」
俯き、自分の不甲斐なさにイラついていた。
もっと早く気付けたはずなのに……。あの時寝ていなければ……。そんなことを考えてしまったが今はそれどころではない。
アモネに向けて全力で魔道具を使い、魔法を放った。
「暴風!」
城の壁を破壊し、アモネ、いや、水龍は吹っ飛ぶ。床に膝をつき、魔力を回復するための回復薬を飲んだ。
「まだ……」
まだ終われない、壊された壁から飛び降りる。こんな痛みよりもアモネの方が痛い、この程度なら耐えることができるはずだ。
「ギュラァァァァ!!」
水龍は予想通り、かすり傷され負っていなかった。
「水の神竜の巫女……」
そう呟き、決心する。
「今ならまだ行ける!」
アイテムボックスから練習用の弓と矢を取り出した。
「気を引くくらいならこれで十分だ!」
足と腕に身体強化の魔法をかけ、矢には闇の魔力を宿らせた。矢を放つ。
「ギュラァァァァ!!」
予想通り水龍はこちらへ一直線に突っ込んでくる。
目的の場所へ水龍を誘導するために走った。
走っている間にも水龍の攻撃は放たれていた。
水弾や暴風など攻撃が来たがギリギリ全て避けていた。
あと少し、あと少しだから。無我夢中で走った。ただ1つの目的を胸にして。
広い洞窟に入ると水龍と対面した。
『我は試練を受ける者なり!』
大声で叫ぶと洞窟の中央の祭壇が光る。そこに手を差し伸べると漆黒の剣が現れた。
「これで弱らせることが出来れば……」
『水の神竜の巫女』とは水を祀る神の力を持った竜の力を持っている女性だ。
巫女は1度倒されることによって神竜の力を自在に操れると魔王城の書斎の本に載っていた。あるやつも正しい情報だと認めていた。
「……絶対に救う」
「ギャアァァァ!!!」
身体強化や漆黒の槍などの魔法を駆使しつつ、剣で斬りかかった。
しかし、水龍にはあまりダメージを与えることが出来ない。
「硬い……」
不意に膝をついた瞬間、水龍の尻尾が直撃した。
「ぐっ!」
歯をかみ締めて痛みを堪えた。
「すぅーはぁー」
目を閉じ、深呼吸をする。
自分の中にある監獄のようなところをイメージする。
そこには72匹の悪魔が牢獄に入っていた。
手にはその牢獄の鍵が存在している。
「今回はお前だ」
1人の悪魔にそう告げ、鍵を牢獄に刺した。
「今、助けてやるからな」
目を開け、微笑む。視界は紫色へと変化していた。
「72柱――15柱目……エリゴス」
後ろに乗馬をし、鎧に槍を装備している悪魔が現れる。
その悪魔を吸い込む。
しかし、その悪魔は俺の体を支配しようとしてくる。
「支配される前にこっちが……。」
体に魔力を流し、全力で抗う。
「支配する!」
体が鎧に包まれる。
「はぁッ!」
「ギュラァァァァ!!」
一瞬の隙を見せれば必ず負ける、そう感じていた。
「せあぁぁぁぁッ!!」
ほぼ互角の戦いだった。先に隙を見せれば負け。だが、体力的には竜よりも俺の方が圧倒的不利だと言うことはわかっている。
「出し惜しみしてられるかァァ!!」
アイテムボックスから赤、青、緑、黄、黒、白のひし形の魔道具を取り出し、全てを漆黒の剣で斬る。
「行けッ!」
それぞれの魔道具は槍の形に変形し、水龍の方へと飛んでいく。
その間に残りの魔力の全てを剣に集める。
「これで終わらせることが出来なければ……」
剣を頭上に振り上げる。
「いや、これで終わらせる!」
「ギュオォォォォ!!!」
「終焉斬!!!」
水龍が放った「暴風水弾」と終焉斬がぶつかり合う。
「はぁぁッ!!」
「ギュアァァ!!」
周りは眩い光に包まれた。
「勝った……のか?」
どこを見ても水龍の姿はない。水龍がいた所にはアモネが浮いていた。完全勝利のようだ。
「アモネ!」
アモネの方へと駆け寄り、抱えた。
「お兄……ちゃん?」
「ああ、そうだぞ。やっと目を合わせてくれたな」
微笑み返事をするとその場に倒れ込んでしまった。
「お兄ちゃん!!」
アモネが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「どうして私なんかのことを助けたの?」
「そりゃ、家族だからに決まってんだろ」
アモネの頭を優しく撫でながら微笑む。
「だって私、1度も目も合わせたこともないし、話したことだってないんだよ?」
アモネの頬には涙が流れていた。
「それは違うぞ? 今、こうして目も合わせてるし話もしてる。それにこれからもこうやってできるだろ?」
上半身を浮かせる。アモネを胸に抱き寄せ、優しく撫で続けた。
「うん、うん、今までごめんね」
「違う、これからもよろしくだ」
アモネは「うん、うん」と言いながら俺の胸でひたすら泣いた。その間ひたすらアモネの頭を優しく撫でていた。
その後とは言うと城の従業員が親に竜が現れたことを通信魔法で伝えたようだ。
通信魔法の圏内にたどり着くのに約1時間かかったとか。
俺は両親の顔を見ると安心してしまい、すぐに意識を失ってしまった。
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「おっと、これだな」
祭壇の後ろには水色の宝石が付いた腕輪が置いてあった。
「あの時、水龍と戦った時に手に入れた〈水龍の腕輪〉」
それを確認するとアイテムボックスに入れる。
「これを少し早めの誕生日プレゼントにするか」
そう呟き、祭壇に向かって1回お辞儀をすると転移魔法で自分の部屋へと戻った。




