16話 〜魔王逃亡〜
「ふわぁ〜眠い」
あくびをしながら起き上がる。
「って、あれ?」
手首と足首が自由に動かない?
見てみると手錠が付いていた。
「えっと、あれ?」
手錠を壊すべく魔法を使おうとするが魔力が使えない。
まるで魔力が封じられたかのようだ。
「……転移」
試しに魔法を唱えてみるが魔法は発動しない。
「ここから動こうとしても足が使えなきゃな」
そう考えていると扉が開く。
「お兄ちゃんおはよう」
「バロン様おはようございます」
セアとアモネが挨拶をしながら入ってきた。
「こいつの説明を頼めるか?」
手首の手錠を見ながら尋ねてみた。
「警察の方から頂いた手錠です。ちなみに魔力を封じる魔道具でもあります」
セアはたんたんと説明していく。
「いや、なんで付けられてるの?」
「お兄ちゃんが逃げられないようにだけど」
アモネがそう言いながら足首の手錠だけを外す。
「さあ、バロン様。仕事をしましょう?」
セアが笑顔で聞いてくる。
「……じゃあ、こっちも外してくれないか?」
手首の手錠を掲げるが2人に笑顔で拒否されてしまった。
「では、仕事部屋に……」
「逃走だぁぁ!!」
全力で走った。それはもう何も考えずに。
すると廊下でメイラとすれ違った。
まずい、ここでメイラが参戦すると勝ち目がなくなってくる。
そう考え、メイラにダメ元で話しかけてみた。
「なあ、この手錠斬ってくれないか?」
「それは無理なのだ!」
「やっぱな」
諦め、同時にさっきよりも早く走り始めた。
部屋に逃げ込んだりし、広い城の中を逃げ回っていた。
「さすがに魔法なしであの3人はキツいな」
息を整える。少しでも多く体力を回復しておきたいところだ。
すると廊下から足音がした。
どうにかして逃げながらこの手錠を壊さないと……。
この手錠は城にあるものでは破壊できなかった。
俺が持っている剣なら斬れるかもしれないが魔法が使えないので諦めるしかない。
そろそろこの部屋に入ってくる頃なので勢いよく飛び出した。
「今日は絶対逃がしませんよ」
セアが走りながら近づいてくる。
メイラがいないならまだ行けるか……?
曲がり角に差し掛かった時、曲がり角から人影が現れた。
「うわぁっ」
「きゃっ」
小さく悲鳴を上げてしまった。
曲がり角から現れた人影は門番のクアーラだ。
「す、すまん。このお詫びはいつか……」
クアーラの手をとり、立たせると走る始める。
「あの、お伝えしたいことが……」
そう聞こえたが今、引き返すとセアに捕まってしまうので全力で逃げた。
今度、ちゃんと話を聞くから今回は許してくれ。
そういえば仕事部屋にジジイの剣があったはず。
その希望を胸に仕事部屋へと向かった。
◆◇◇◆
「さて、誰もいないよな……?」
こっそり部屋の中を覗く。見渡すが誰もいないようだ。
そういえば全くアモネを見かけなかった気が……。
部屋に入り、ジジイが使っていた剣の前に来た時だった。
「お兄ちゃん確保!」
アモネが物陰から飛び出し、虫取りあみのような物を頭に被せられるが他に何も起きなかった。
「間違えた!?」
アモネは動揺している。
アモネが飛び出した方を見るともう一本虫取りあみと同じ大きさの槍があった。
その槍は尖端が丸まっていて尖端に触れると何らかの魔法が発動するようだ。って、怖いんだが?
「チャンスだ」
剣を取り、天井ギリギリまで投げた。
剣は手錠の鎖に当たり鎖が切れた。
「そろそろセアが来る頃か」
剣を手に取り、部屋を後にしようとしたが扉にはセアが立っていた。
「さあ、バロン様。観念してください」
セアがこちらに手を向ける。
それと同時にアモネは槍を持った。
「諦めきれるかよぉぉ!」
窓の方を向き、手を向けた。
こうなったら強行突破だぁぁ!
「暗黒の爆裂弾!」
窓のガラスが粉々になるのを確認し、そこから飛び降りる。
少しするとそこから黒い煙が立ち上がる。
「まさか……!」
アモネはこちらを覗き込み、風魔法を使う。
しかし、その煙は魔法では払えなかった。
「そこは確か門の前だったはずです!」
2人は急いで門の前へと向かった。
◆◇◇◆
外に出ると空が黒く、雲が凍っていた。
門の前に降りるとクアーラが膝を付き、太っている男がクアーラに手を伸ばしていた。
何故か嫌な感じがする。
クアーラに当たらないように細心の注意をしながら魔法を放った。
「漆黒の槍」
その魔法は男の手の前を通り過ぎた。
「おい、うちの門番達になにしてんだ?」
少し怒っていた。いや、かなりキレている。
城の従業員に手を出されたからには宣戦布告と同じだ。
「貴様が新しい魔王か」
嘲笑うかのように言い放ち、男が俺を睨む。
「私はシーゴ家の者だ! 魔王は私が継ぐ! さっさと消えろ」
鼻で笑うように話す。
「嫌に決まってんだろ。このジジイ」
心底呆れた。こいつはバカなのか? 男は憤怒の顔になり、バロンに手を向けた。
どうやら魔法を使おうとしているようだ。
それならついさっき思いついた魔法を使うことにしよう。
「闇の鎖」
紫色の鎖が男を縛る。
この魔法はセアの魔法の縄を参考にして作り出した魔法だ。
「こんな仕打ちシーゴ家が許さんぞ!」
男は悪あがきをしている。
「許さないのはこっちだ。このバカ息子が!」
後ろから男性の声が聞こえた。
「ギルドマスターか」
その男性は何時ぞやに見たギルドマスターのジョンだ。
「家のバカ息子が誠にすいませんでした」
ジョンが深々と頭を下げる。
その間にも男は「私が王になるんだ」など叫んでいた。
「この息子は私に任せて頂けませんでしょうか……」
ジョンは頭を下げ、膝をつける。半分土下座の状態だ。
「具体的にどうするつもりだ?」
あえて怒っているような声で喋った。てか、怒ってるし。
「北部の開拓に携わせようと思います」
北部の開拓は主に重罪犯が働いており、最も辛い仕事だと言われている。
「私はそんなとこには……」
「最凶の悪夢」
男を眠らせると男は唸り始めた。
この魔法は自分にとって最も怖いことを夢で見せる魔法だ。
「今すぐにそいつを送ってやれ」
声をとても冷たくした。
「はい、わかりました」
ジョンは頭を下げ、その場を去った。
すぐにクアーラの方へ近づく。
「クアーラ、大丈夫か?」
クアーラの肩を掴む。少し冷たくなっていた。
「少し寝てた方がいいな」
優しい悪夢を使い、クアーラを眠らせた。
クアーラの顔は笑顔だった。しっかりいい夢を見れてるな。
クアーラを抱えると2人の門番の方へ向いた。
「こんなことになってごめんな」
軽く頭を下げると2人は「頭を上げてください」と申し訳なさそうだった。
「2人の名前を教えてくれるか?」
尋ねると男性はカーシュ、女性はリンと答えた。
「あと、俺はバロンでいいからな」
その場を後にし、応接室の横にある来客用の部屋に向かった。




