14話 〜両親の隠れ家〜
「さてと」
軽くストレッチしながら独り言を呟く。
「これからどうしようか」
時刻は4時、恐らくこのまま帰れば間違いなく仕事をさせられるからなー。
「少し街を歩くか」
とりあえず目的もなく歩き始めた。
しばらくすると顔見知りの蒼色の髪の女性が屋台で買い物をしていた。
「おっ、クアーラこんなとこで何してんだ?」
そこには城の門番のクアーラがいた。
「は、はい! 今日は非番なので弟と買い物をしていたところです!」
クアーラは背筋を伸ばし、ハッキリと話す。
「そんなに硬くならなくていいんだそ?」
クアーラの雰囲気が少し軟らかくなった気がした。
「では、できる限り軟らかく接します」
クアーラが微笑む。
「姉さん、買ってきたよ……誰?」
クアーラと同じ色の髪の少年が警戒しながらクアーラに尋ねる。
「この人は……私の上司みたいなものよ」
少年にとても砕けた喋り方で話す。
「ふーん。じゃあ、あなたが姉さんとけっ……」
クアーラが咄嗟に少年の口を塞いだ。
「ち、違う!」
クアーラが顔を少し赤くしている。
「魔王様じゃないの!」
クアーラは少し大きめな声で言ってしまった。
すると、周囲から「ほんとだ、バロン様がいるぞ」など声が聞こえた。
「あ〜、じゃ、またな」
騒ぎを起こすのはダメな気がするのでクアーラに別れを告げ、転移魔法を使う。
魔法が発動する直前、クアーラに「それと俺はバロンでいいぞ」と言い残した。
◆◇◇◆
「対して時間稼ぎ出来なかったな」
何かボソッとお兄ちゃんが言った気がした。
「おかえりなさいませ、バロン様」
「おかえり、お兄ちゃん」
セアさんの声は目の前に獲物がいるかのような声だった。まあ、私も大差ないだろうけど。
「黒煙」
周りに黒い煙が漂うがその時には私たちの魔法が放たれていた。
「竜巻」
威力が弱めの風の渦が煙を巻きとる。
「拘束」
お兄ちゃんは次の魔法を唱えようとしていたけどその前に魔法の縄で拘束した。
「さて、これで……」
「逃げられないよ。お兄ちゃん」
「逃げられませんよ。バロン様」
2人は声を合わせて言った。
「……」
しかし、何も聞こえてこない。
「バロン様?」
「お兄ちゃん?」
疑問に思い、お兄ちゃんの顔を覗いた。
「はぁ、全く……」
「お兄ちゃん、相当疲れてたんだね」
お兄ちゃんは眠ってしまっていた。
━━━━━━数日後━━━━━━
今日は俺といつもの3人で元魔王とその妻(母さん)が隠居している別荘の近くにいた。
厳密に言えばいるはずなのだが。
「全く、なんでこんなとこに住んでんだよ」
今、歩いている道はジャングルに近い森だった。
「これは……熊とか出てきそうですね」
セアは警戒している
「ちょっとした探検みたいで少し楽しいのだ」
メイラは剣で蘿を斬り進んでいる。
「実際はどこに家があるかって正確にわかってないから一種の探索かな」
アモネは少し考え、発言した。
「72柱――3柱目……ウァサゴ」
そう唱えて目を閉じる。
「ほんとにめんどくさいことしてるな……」
ある木に手を向ける。周りと全く同じ木だ。
「これで魔力を一定量注ぎ込むと……」
突如、目の前にゲートが現れる。
「ほら、3人とも行くぞ」
3人は少しの間ぽかんとしていた。
◆◇◇◆
ゲートを潜ると平野に綺麗な家が一件建っていた。
「やっと見つけたぞ」
少し疲れ気味に言った。
魔力跡を追うだけで3日もかかったんだ。
「少し腹癒せしておこう」
悪い笑みを浮かべ、家に手をかざす。
「漆黒の槍」
魔法を放つと漆黒の槍が姿を現す。
一直線に槍は家へと飛んで行った。
「ブラックホール」
家の前の空間が歪み小さなブラックホールが生まれる。
槍はブラックホールに吸い込まれてしまった。
「全く、親の家にいきなり攻撃魔法撃ってくる息子なんて存在したのじゃな」
目の前に老人が転移してくる。
「なんでそんなに老けてるように見せてんだよ、ジジイ」
老人が紫色の光に包まれるとジジイ(父親)の姿になった。
「お父さん、何やってるの?」
アモネが可哀想な人を見るかのように見ている。
「その目をやめんか!」
アモネに咄嗟にツッコミを入れるように言った。
「トーグ様、お久しぶりです」
「はじめましてなのだ!」
「メイラちゃんははじめてじゃないぞ。2人とも久しぶりじゃな」
トーグは少し頭を下げる。もう呼び捨てでいいや。
「そうだ、ジジイ。なんか俺に言うことないか?」
少し苛立っていた。てか、かなり苛立っていた。
「メイラちゃん、可愛いじゃろ……グフォ」
すかさずトーグの腹にパンチを入れる。こんのクソジジイ。
「トーグ様!?」
「さすがに今のはダメだと思うぞ!?」
2人とも驚いているようだった。
「あの程度じゃ、怪我ひとつしないよ」
3人が話している間に魔法の準備をしていた。
「暗黒拳‼︎」
倒れているトーグに魔法を放つ。
魔法はトーグに当たる前に相殺された。
「全く何してるんだい?」
家の中から見た目20~30代の女性が現れる。
「バロン、アモネ久しぶりだね」
「お母さん、久しぶり」
「母さん、久しぶり」
彼女は母さんだ。
「何やられてるフリなんてしてるんだい!」
母さんはトーグの頭を軽く蹴る。
「ミマまで酷いことを……」
トーグが立ち上がり、砂埃を叩き落とす。
母さんはセアとメイラの方を見た。
「2人ははじめましてだね。私はこの2人の母親のミマだ」
「どうも、バロン様の専属メイド、セアです」
「バロンの許嫁のメイラと申すのだ」
3人が挨拶し合う。メイラは少し緊張しているようだ。てか、おいおいセアさん?
「で、今日は何の用だい?」
母さんは俺をまっすぐ見る。
「用がないといけないのか?」
少し素っ気なく答えた。
「用って言ったら、これの謝罪くらいだな」
そう言いながらトーグの方に指を向ける。
「わ、儂?」
トーグは不思議そうにしている。
「ああ、ジジイだよ」
「うむむ、儂は何かやったかの?」
トーグが惚けているので顔をスレスレに漆黒の槍を飛ばした。
「突然、魔王にしてすまんかった!」
トーグは土下座モードになった。
「それで」
トーグを見下す。
「……あと、勝手にアモネのプリン食べてすまんかった!」
アモネが軽く震え、トーグに手をかざす。
「お父さん、今なんて?」
アモネは手に刃物があったら斬りかかってくる勢いだ。
「プリン食べてすまんかった!」
アモネは両手をトーグに向ける。
「暴風水弾‼︎」
滝の勢いの水を纏った風の渦がトーグに直撃する。
トーグは空へ舞い上がり、そのままどこかへ行ってしまった。
「悪は滅びた」
アモネはどや顔をしていた。
「まあ、家に入りな」
母さんは家に戻り、扉を開け手招きしていた。




