13話 〜メイラへの贈り物〜
「さて、少しお時間頂けますか? 勇者様」
少しふざけながらメイラに手を差し出す。
「ああ、いいぞ。魔王殿」
メイラは手を取り、微笑んだ。
メイラの手を引きながら、食堂を出るとなんの迷いもなく、道を進んだ。
◆◇◇◆
「バロン、今からどこに行くのだ?」
メイラはとても楽しみにしているようだ。
「着いてからのお楽しみだな」
大きな広場で足を止める。
「ここなのか?」
この広場には今は噴水とその周りに綺麗な花が咲いているだけだ。
「ああ、あと30秒くらい待ってくれ」
メイラはとてもうずうずしていた。
「3……2……1……」
すると広場を囲むように地面から水が吹き出る。
見せてやろう。これが俺の魔法だ。
「複製魔法――ライト」
魔法を唱え、赤、青、黄、緑、白の5色の光を作り出す。
5つの光が水の中へ入れると光をより強くした。
「混合」
別の魔法を唱える。光が混ざり合い一定時間毎に変わるようになった。
「凄く綺麗なのだ……」
メイラは周りを見渡している。
「今、俺ができる精一杯の贈り物だ」
「ありがとうなのだ」
メイラな俺の顔を見ると微笑んだ。
「さて、そろそろ帰るか」
「うむ!」
メイラは元気に答えた。
▽▲▽▲▽
時刻は戻り8時55分、支度を終わらせ椅子に座った。
「これで準備完了なのだ」
心の中で安堵した。
時間になるとバロンが来る予定なのだ。
しばらくすると扉を叩く音がした。
「どうぞなのだ」
するとバロンが「よっ」とでも言うように手を軽く上げた。
「これ、似合ってるか?」
不安げにバロンに聞いてみた。
「ああ、凄く似合ってるぞ」
バロンは笑顔で答えた。
よかったのだと思うとともにバロンに「ありがとうなのだ」と言った。
「それじゃあ、行くか」
「今日はどこへ行くのだ?」
「今日は魔王城の下にある城下町だ」
「おお〜、行くのだー!」
元気に言うとバロンの腕に抱きついた。
これがセアとメイラに聞いたアピール? の方法なのだ。
昨日、バロンが逃げた後に2人に話を聞いたのだ。
効果はあるようでバロンの顔は少し赤くなっているように見える。
「転移」
バロンは転移魔法で城下町へと転移した。
◆◇◇◆
城下町への路地裏へと転移していた。
「これ、付けといてくれ」
バロンは小さな赤い宝石の付いた指輪を差し出した。こ、これは……!
「こ、これはまさか結婚ゆ……」
「隠蔽魔法の効果がある魔道具だ!」
バロンの顔を見ると少し赤くなっていた。
これがドキドキさせると言うことなのか?
「その魔道具は付けていると自分の姿が別人に見える効果がある」
バロンが少し誇らしげに説明を続ける。
「ただし、その魔道具を付けているのが誰かわかっていれば意味がないけどな」
指輪を左手の薬指に嵌める。
その指輪をうっとりと見てしまった。
「なんでその指に……まあ、いいか」
2人は路地裏を出て、城下町へ向かった。
◆◇◇◆
「今日も賑わってるな」
バロンは周りを見ながらそう言った。
いろいろな出店が出ている。
その光景に心を躍らせていた。
こんなふうに城下町をまわることが出来るのは初めてなのだ。
生まれてから1度も自由に遊び回ったことがない。
つい軽く走ってしまった。
「面白そうなものを探すのだー!」
バロンが「おい、はぐれるなよ」と言ったが、聞こえないふりをすることにした。
しばらく進むと目の前に人集りが出来ていた。
「あそこ、凄い人がいるぞ!」
はしゃぎながらバロンに言った。
「バーゲンセールでもしてるのか?」
バロンは少しふざけ気味に言った。
2人は人混みへと向かった。
そこには美少女が楽しそうに踊りながら歌っていた。
「〜♪」
とても元気な歌声だ。
こんなふうに好きな人とでぇと? するのはこんなにも楽しいのだな。
始まったばかりだがそう思っていた。
そしてバロンがほんとに好きな人だと確認するためにはこれしか……。
自分知っている相手を知る方法は手合わせしかなかったのだ。
「それよりも行きたいところがあるんだろ?」
バロンがそう聞く「うむ!」と答え、一直線に闘技場へ向かった。
◆◇◇◆
闘技場でバロンと戦い終わった後、少し考えていた。
あの戦いの結果は惨敗だった。
始めは優勢だったが、一瞬で逆転されてしまった。
それに対して惨敗だと思っていた。
また、負けたのだ……しかし、不思議と不愉快な気持ちにはならない。
父上と戦い、何度も負け、あれほど悔しいと思っていたのに……。
負けたことはお父様にしかないが全て悔しいなど不愉快に思ってしまっていた。
これは、負けてもしょうがないという気持ちではなく、もっと違う感情だ……。
いや、これは不愉快な気持ちよりも違う感情が勝っている?
思考回路がショートしてしまった。
まあ、バロンと一緒に居れば自ずとわかる……気がするのだ。
するとバロンが起き上がり、「はぁ、疲れた」とため息をついていた。
バロンは体が痛そうにしていた。
「……負〜け〜た〜の〜だ!」
考え事をやめ、バロンに駄々をこねるように言った。
その後、誰も知らないバロンの秘密を聞き、一緒にご飯を食べた。
◆◇◇◆
2人で今、バロンに連れられて噴水のある広場へ来ていた。
バロンに少し待てと言われ、待っていると広場の周りに水が吹き出し始めた。
なにかのイベントのようなのだ。
するとバロンはなにかの魔法を使う。
バロンは今から何をするのだ?
「複製魔法――ライト」
すると、5色の光が生成される。
その光は水に入るとより強くなった。
「混合」
すると様々な色に一定時間毎に変化する。
その光景に心を奪われていた。
ふと、メイラはバロンの顔を見た。
バロンの顔はどこか誇らしげだった。数十秒間、じっと見てしまっていた。
なっ、これが見惚れるというのか!?
「今、俺ができる精一杯の贈り物だ」
バロンは微笑んだ。
「ありがとうなのだ」
バロンの顔を見ると微笑んだ。
これで終わりなんてなんだか寂しいのだな。
……あの日からなのだ……あの日、負けてから……。
自分の思考を理解しきれていなかった。
そもそもなぜ私はこんなことを思っているのだ?
これが好きなのか……?
そう思った時、何かが腑に落ち、モヤモヤが取れた気がした。
やはり、好きなのか。
それを確信できた時、とても嬉しくなってしまった。
「そろそろ帰るか」
「うむ!」
メイラはバロンに満面の笑みで答えた。
◆◇◇◆
家(というか城)に帰り、疲れ果てベッドへ飛び込んだ。
バロンが広い世界を見せてくれなければ、私は……。
足をバタバタさせながら考える。
しかし、今日はとても楽しかったのだ。
左手の薬指にある指輪を見ながらそう思っていた。




