12話 〜72の悪魔〜
「いざ、尋常に……」
メイラが右手の剣を振り上げる。
「「勝負!!」」
同時にそう言うと真正面から剣でぶつかり合った。
剣がぶつかり合うと同時に火花が散った。
「ほんとに厄介だな、それ」
メイラの剣を見ながら苦笑してしまう。
メイラの剣が炎に包まれていたのだ。
「優しい悪夢」
メイラに左手を向け、魔法を放つ。
メイラがそれを見ると剣が輝いた。
「はあぁぁぁッ!」
メイラは魔法を破壊すると真っ直ぐこっちの方へ向かうべく地面を蹴った。
「なっ」
驚くと同時にメイラの剣を受け止める。
出来るだけ早く左手に黒い粒子が集める。
「暗黒拳」
魔法を唱え、左手をメイラの腹部に打ち込もうとする。
メイラはそれを察したのか後ろに飛んだ。
その一瞬の隙をつき、魔法を放つ。
「真の暗黒の爆裂弾」
黒い球体をメイラの方へ飛ばすがメイラの剣が輝き、球体は消滅した。
メイラが着地すると同時に身体強化を使い、メイラの方へ地面を蹴った。
「爆炎!」
メイラが叫び、剣を振ると空気中で爆発し、爆煙が起こる。
メイラは爆煙を突き抜け、剣を振る。
剣はしっかりと俺にに当たり、壁まで吹っ飛ばされてしまった。その衝撃で砂煙が舞う。
「まだなのだ……!」
メイラは俺が吹っ飛ばされた場所をめがけて地面を蹴る。
「火炎斬!」
剣を振り、半円状になった炎直線上に飛ばす。地面を巻き込んでまたもや俺に当たった。
「危険な暗黒拳」
砂煙から拳の形をした魔法が放つ。
メイラはその魔法を避けた。
「……痛いな」
立ち上がり、できる限り大きく目を開く。
視界がうっすらと紫色になる。
「……全力で行くぞ」
空高くに剣を掲げる。
辺り一面が闇に包まれ、背中に漆黒の羽が生える。
その姿はまさに魔王と言うに相応しいだろう。鏡を見たら本当に俺か疑うレベルだ。
「72柱――1柱目……バエル」
背後にクモの胴体を持った悪魔が現れる。
その悪魔を吸収し、自分の姿を消す。
「なっ!」
メイラは殺気を感じたのか、咄嗟に剣を背中に移動させた。
すると剣がぶつかり合う音が出る。
「72柱――7柱目……アモン」
そう呟くと闘技場を囲むように周りに無数の炎が現れる。
全てがメイラの方へ飛ばした。
メイラは全て斬ろうと剣を輝かせる。
「やあぁぁぁァ!!」
メイラの剣が炎に触れると炎はより燃え上がった。
「なに!?」
メイラは咄嗟に剣を捨て、後ろへ飛ぶ。
「これで終わりだ」
自分の姿を現すと同時にメイラは意識を失った。
するとどこからか「バロンWIN」という男性の声が聞こえた。
◆◇◇◆
「はぁ、疲れた」
体はずっと座っていたはずなのに体の節々が痛い。
「……負〜け〜た〜の〜だ!」
メイラが幼子が駄々をこねるように足をばたつかせていた。
「こっちはかなりギリギリだったんだからな?」
これだけ見るとメイラはかなり余裕があるように見えるんだが?
「なあ、バロン。前から思っていたのだが、その目はどうなっているのだ?」
メイラが出した質問には動揺してしまった。
「自分で創り出した魔法だ」
無意識にメイラから目を逸らしてしまっていた。
「バロンは嘘がわかりやすいのだな」
微笑んでいる。やべ、一瞬お姉さんみたいに見えた。
「これは固有魔法みたいなものだな」
誤魔化しても諦めてはくれなさそうなので観念し、しょうがなく話し始めた。
「この魔法はとある人に封印された72匹の悪魔を呼び出し、使役する魔法みたいなものだ」
つい、少し苦笑してしまった。
「じゃあ、なぜ光の魔法剣では破壊できなかったのだ?」
とても不思議そうだった。まあ、魔法なら光の魔法で全て消せるからな。
「だから言っただろ? "魔法みたいなもの"だって」
そう言うが理解ができていないようだった。
「つまり、魔法のように発動するが魔法とは違う力なんだよ」
メイラは余計、頭の上にはてなマークが浮かんでいるように見えた。
「そうだな、魔法は魔力だけを消費して使うがこれは体力も消費して使う力だ」
今度は少しはわかったような顔になった。
「では、その力を使い過ぎたら……」
メイラは深刻な顔になる。すごい表情が変わるなー。
「ああ、最悪死ぬな」
「じゃあ、なぜ……」
「問題ない、1日に72柱全員呼んだりしない限り死ぬことはないから安心しろ」
微笑み、「心配するな」と声をかける。
「う、うむ。ホントなのだな……?」
「ああ、ほんとに大丈夫だよ」
優しくメイラの頭を撫でながら答えた。
◆◇◇◆
少し休憩し、闘技場を出た。
「もう、2時なのか……時間というのはこんなにも早いものなのだな」
メイラが少し残念そうに言っている。
「少し遅めだがお昼ご飯食べるか」
辺りを見渡し、近くにあった食堂へと入って行った。
◆◇◇◆
「さて、どれにするかな」
席に座ると2人はメニューを開いた。
「こ、これは……」
メイラは何かをブツブツ言っている。
どうしたんだ?
「今日は俺が奢るから好きなだけ食べていいぞ」
するとメイラは「ほんとか!」ととても嬉しそうだった。
「俺はこのマグロ丼でいいか」
メニュー決め、メイラの方を見るとメイラも決まったようだった。
それを確認すると呼鈴を鳴らした。
「ご注文がお決まりでしょうか?」
エメラルド色の髪の少女が元気に登場した。
なんだろう? どこかで会ったような?
「えっと、マグロ丼を1つと……」
そういえばメイラの注文を聞いてなかったな。
「デミグラスソースのハンバーグのチーズ増し増し乗せをお願いするのだ!」
メイラは興奮気味だ。てか、早すぎてデミグラスとチーズしか聞こえなかったぞ?
「……分かりました! マグロ丼とデミグラハンバーグのチーズ増し増しですね」
少女がそう聞くと「ああ」と微笑みながら答えた。この定員すごいな。
◐◓◒◑
「お待たせ致しました〜!」
少女が笑顔で料理を運んで来た。
少女は料理を目の前に置くと軽くお辞儀をして厨房へ戻って行った。
やっぱ、どこかで見たことあるな……。
「いただきます」
メイラと声を合わせて言った。
「ん〜美味しいのだ!」
メイラは料理を堪能しているようだ。俺も食べるか。
「このマグロ美味しいな」
よし、次はアモネと来よう。いや、3人か。
「ご馳走様でした」
2人は息を吸い、深く吐いた。
「さて、少しお時間頂けますか? 勇者様」
少しふざけながらメイラに手を差し出す。
「ああ、いいぞ。魔王殿」
メイラは手を取り、微笑む。
メイラの手を引きながら、食堂を出るとなんの迷いもなく、道を進んだ。




