表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
念い(おもい)  作者: カワラヒワ
2/3

 オレと妹を育てるため、働き詰めだったおふくろ。随分苦労したと思う。

 忙しさにかまけて、化粧もおしゃれもしなかったおふくろは、年より老けて見えた。

 けれど、若い頃のおふくろは色白で、澄んだ目の美人だった。


 そんな若い頃のおふくろの姿をさっき見た父親の姿と同じように、何度も見たのだ。

 

 最初、おふくろの幻を見たのは、妹が生まれて間もない時だった。

 

父親とおふくろはまだ仲良くやっていて、平和で普通の毎日を送っていた。

 オレが小学校に入学したばかりの頃だった。

 

 ある日の夕方、オレは自分の部屋に行こうと、父親とおふくろの部屋の前を通った。

 その部屋のドアが半分開いていて、おふくろが布団で横になっているのが見えた。

 

 あれっ、と思いオレは立ち止まった。

 オレに気づいたおふくろは、薄暗い部屋の布団から笑いながらオレに手を振った。

 優しい、いつもと変わらないおふくろの姿だった。

 

 でも、オレは驚き、怖くなって慌てて階段を下りた。

 なぜって、おふくろがそんな所でオレに手を振るはずがなかったからだ。

 おふくろは下の居間で赤ん坊の妹を抱いてあやしていたのだから。

 

 居間に戻ると、やっぱりおふくろはさっきと同じように、赤ん坊を抱いてそこにいた。

 オレの顔を見たおふくろが、どうしたの?ときいた。べつに・・。オレは今見たことを言わなかった。言ってはいけないような気がして。

 

 しかし、オレはおふくろのあの姿に見覚えがあった。

 細く白い手を布団から出して、微笑んだ顔。

 あれは、おふくろが妹を産むまで、つわりで寝込んでいた時の姿だった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ