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稲高文芸部活動記録  作者: 稲高文芸部
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サブタイトル


「さいきん長編を書いてるんすけど」


「お、そうなのか? いいな、いいな長編。僕にも見せてくれないか」


「いやーそれが。ここに出すのはなんてか、ちょっとまあ……」


「お話を積んでるうちにあれ? これ面白い?ってなっちゃうんですよねえ。わかりますよう」


「『YES』」


「わたしは、らぶらぶ監禁四肢欠損を書こうかなーって思ってたんですけどお、書いている途中で、あれこれ長編で尺取って表現するものでもないような、ってきもちが先にきちゃって。困りましたねえ」


「らぶら──え、何? 春秋、何て言った今?」


「うふふふ」


 マイナスイオンとか出そうな癒し系の笑みを浮かべる春秋から出てはいけない単語が口走った気がしたが、気のせいだろう。

 何せこんなにも朗らかに笑っているのだ。岩波は丸め込まれた。


「そ、それよりもだ。ここで見せられない理由があるのか? 富士見」


「いやー、見せられないってか、そのー……ひょっとしたら、私だけかもしんないなって思うんすけどー」


「悩みごとか?悩みごとなんだな? よし!ここは話してくれないか。部長の僕が、君の支えになれるかもしれないからな!」


「今『よし』って言ったぞこのひと。いやまあ、すごい些細な話で、ひょっとしたらぜんぜん共感とか得られないかもなーって思うんすけど……」



「──長編作品のサブタイトル。毎回考えるの。めっちゃ、めっっっちゃ!むつかしくないっすか?」



「サブタイトル?」


「いや、あー。このひとWeb小説読まない設定だったな……。毎話毎話、だいたい3000字の中でちょっと目を引くワードとか入れたりしつつ、更新していくって形式なんすけど、そこにタイトル入れるんす」


「ん……?」


「かんたんに言えば、新聞小説の形式ですよう」


「知悉した! Web小説とやら知悉した!!」


「おこがましすぎるっすよ……一万作くらい読んでから言うべきっすよそれ……」


「……ふじちゃ、わるいSF者みたい……っっ!!」


 早川は赤面した。岩波はそちらを見ないであげつつ話を続ける。


「しかし、それの何が問題なんだ? 毎日掲載されるたびに副題のついた新聞小説というのは、僕は寡聞にして知らないのだが」


「『コボちゃん』」


「そうだな早川。あの作品は、副題でなく通し番号だったと記憶しているぞ。小説ではなく漫画だが」


「いやまあ、通し番号振るのも確かな自信とか感じさせるんすけどね? 読むガワからすると、あのお話読み返したいなーって時にサブタイトルがないとちょっと不便なんすよね。あっもちろんこれはもちろん批判してるわけではもちろんなくて──」


「誰に弁明しているんだ富士見」


「弁明は大事ですよう」


「だからサブタイトルは付けたいんすよ。で、それならサブタイ付ける時間短縮するためにも、命名法則持たせればよかったなーって。『絶対文中のフレーズ使う』とか『絶対に何かをパロる』とか」


「別に今からでも直せば──」


「直す……? なにを、どう、なおすんすかね……???」


 富士見の目は昏い闇を湛えた。


「いやもう、一切の誇張抜きにサブタイトル考える時間が一番長いまであるっすよ。執筆推敲追記推敲サブタイ推敲サブタイサブタイサブタイみたいな。私サブタイ書きたいわけじゃねーんすけど? 付けたサブタイもいちいち直したくなるし。はー。『この本文から筆者が適切だと思われるサブタイトルを付けなさい』って国語の課題かッッ!?」


「ど、どうした富士見……? つ、疲れてるのか? お茶飲むか?」


「はー!!文中のキーワードって言っても抜粋の塩梅わからなくてネタバレとか先入観持たれるのはって考えたらセンス問われるし! パロディは賞味期限がある上にセンス問われるし!知ってなきゃパクリですし知ってたらサムいって言われんですよきっと知ってる!! どっちもセンス問われてんじゃんあーもうサブタイのセンス!サブタイのセンスください神!! いや文章のセンスも欲しいなぁーセットで売ってくんないかなァ!? 3000円くらいなら出せるんすけど!?」


「落ち着け! おち、落ち着いてくれないか! ……春秋、早川! 富士見にやさしいものを見せてやってくれ! 僕は部長会議に──」


「ちょっと! 聞いてるんですかセンパ! 悩みごと話せって言ったのセンパの方すよ録音もしてんすよ! 直そうにもこれでいいのかどうなのかがわかんねって……あっマジで逃げる!? 逃げます!? 本気で!? いやもうこっちはサブタイとの格闘を続けて続けて続けっぱなしだってのになんですかそれは──」


割と本気でサブタイ付けに毎日悩んでいます。

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