表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
稲高文芸部活動記録  作者: 稲高文芸部
6/31

記念日


「マルマル記念日とか、あるじゃないっすか」


 日当たりのよい、穏やかな昼の部室にて。


「まあ、記念じゃない日なんてないだろうな。毎日が誰かにとっての記念日だ」


「うふふ。岩波くんは好いこといいますねえ」


「『人生の教養が身につく名言集』」


「早川。褒める通り越してそれはちょっと怖い」


「センパの録音名言集。聴くっすか?」


「お前は何をやってるんだ……?」


 ごとり、と年季の入ったレコーダーを出されて、岩波はちょっとヒいた。

 確かに、受験期にレコーダー使って岩波の講義をリピートさせていた記憶はある。

 まだ削除していなかったのだろうか。岩波は呆れた。


「富士ちゃんは岩波くんとずっと昔からお知り合いでしたもんねえ」


「まあ、家が近かったしな。小中と一緒だった」


「いやー。センパには昔からお世話になりっぱなしっすよ」


「大したことはしてないさ。富士見にも世話になったと思っているぞ。文芸部に入ってもらえたお陰で、存続の危機を免れたからな」


 岩波は部長力──岩波は部長職にはそういうものがあると盲信している──によって、早川が少し所在なさそうにしている姿が目に入った。


「もちろん。助けてくれたのは君もだぞ。早川」


「……ぶちょ、っ……!」


 早川が口を塞ぎ、顔を赤らめる。

 異性に声を聞かれるのは恥ずかしい、という申告は今も変わらないようだ。


「まあ、君のその体質も。僕にとっては大したことではない。気にしなくていいからな。いつか、気兼ねなく喋りたいと思っているが……ああすまん、プレッシャーをかける気はないぞ?」


「『感謝だ、ジーヴス』」


 大型のタブレットで顔を隠しながら、早川は『感謝』の文字を一生懸命指でなぞっていた。


「……周りからすりゃどうってことないことでも、当人にとっては、すごく大事なものなんすよね。きっと」


「そうですねえ。投稿一ヶ月記念、とか。当人はすごく嬉しいですよねえ。周りはわからないですけど」


「投稿?」


「何でもないですよう。うふふ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ