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稲高文芸部活動記録  作者: 稲高文芸部
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代表作機能



「代表作機能! 素晴らしいっすねーっ!!」


 いつもの放課後。

 半年ぶりの部室には、本棚から埃が生えていた。


「『UIデザイン みんなで考え、カイゼンする。』」


「ね。カイゼンしてる感ある。正直わたし、UIの更新って基本嫌いなんだよね。デザイナーが仕事してますアピールのためにするモンって認識で。しなくていい仕事を創出しやがったせいで重くなったりするのが本っ当にイヤ。Chromeとかほんと初期のままでよかったわ。

 ──でも。今回の機能は手放しにいいッ! いいね機能よりもっといいッッ!!」


 富士見は叫んだ。


「いちいち何かに毒を吐かないといけないのか君は」


「わたしはサイレントマジョリティの言葉を代わりに発してあげてるんすよ」


「多数派を自称するべきじゃない。自分の偏見の補強材料を外部に求めるな」


「センパは頭がカタいっすねー」


 岩波に諭されても、富士見はどこ吹く風とけらけらと笑う。



「そもそも僕は、その機能の概要からして知らないんだが──がががががががが知悉した。代表作機能完全に理解した」


 ビビビビ!知識伝達ビームを受けて岩波は痙攣しながらガンギマった目でそう言った。


「すべてが……理解できたぞ……!」


 岩波の目は白く濁っている。

 さて、長期連載を企図する場合、レギュラーとなるキャラに話を作る上で制約となる設定を持たせるのは障害として機能する。

 毎度このくだりをやらないといけないのは文字数の無駄であった。


「全てを理解した僕から、真理を得た僕から、まず当該機能の概要を確認・整理しよう。代表作機能とは、9/27に実装された、本サイトの仕様である。投稿した作品の中から1作のみを設定することができ、各作者ページの「作品一覧」項に投稿日時に関係なく、最上部にアイコンと共に表示されるものだ。拙作の作者の場合、現在『しいたけ』という短編小説が表示されている。

 この機能のどこに魅力を感じているか。それは、作者の自薦作を一目で可視化させている点にある」


「そうそう。作者のおコトバって、読者にとってはそこまで関心のないものだと思うんすよね。おいしいなーってお店を見つけて、そこのシェフのパーソナリティまで気にしたりはしないじゃないすか」


「ふじちゃんは悲観的ですねえ」


「そうでもねっすよ。関心を持つべき、とか全然まったく思いませんし。もちろん関心持ってくれるひとはありがたいっすけど。作品と作者の人格は関係ない……ワケがないんで。あんま真っ当じゃねーので助かるっす」


「君の人格の問題は一旦置いておくが、確かに作者の言葉が通るかといえばそうではないだろう。システムで自薦作までの導線を作った点が良いな。現在は最終投稿日時で昇順ソートとなっており、多作家ほど、本命の作品が埋もれてしまうという構造になっている。

 一般に、作品とは、どれもまったく同じだけの熱意で作っているものではない。作者の中で思い入れ、優先順位の差というものはある。

 もちろん、その優先順位をあえて見せない、というのもひとつの戦略だろう。代表作を何とするか。己の中の哲学……価値観が最も表出したものを代表とするのか、それとも高い人気を得たものを代表とするのか。そもそも代表作を設定しなくてもいい。選定方針はすべて、作者個人に委ねられているんだ」


「Web小説は、作者が広報までやっていい自由なトコも魅力っすよね」


「Web小説とは、作者に決定権の多くが委ねられている。今回のシステム更新は、その遊間の幅を増やすものである。

 作者の側から発言をしたが、読者の側から見ても面白いと思う。富士見は読者は作者に対して無関心と言ったが、僕はそうではない。一読者の側として、この人は何を代表作とするのだろう、どこに熱意があるのだろうと観察するのも楽しいものだよ」


「うふふ。前回更新が半年前のものは、少なくとも熱意はなさそうですねえ」


「そうだな」


 岩波は勢いよく認めた。

 否定するところは何もなかった。



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