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稲高文芸部活動記録  作者: 稲高文芸部
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週刊少年誌


「週間少年誌ってあるじゃないっすか」


「あるな。ジャンプ、サンデー、マガジン、チャンピオン……、だったか。僕は名前しか知らないが」


「これ、中年に変えられないものが混ざってないすか?」


 いきなり何を言い出す富士見。岩波は動揺した。

 そもそも中年に変えられるものがあるのか。


「中年マガジンは、まあ普通だと思うんすよ」


「『週刊文春』」


「そうですねえ。いかがわしいにおいが、しますねえ? 文の春なんて。うふふ」


「春秋先輩、結構えろの人っすよね」


「『エマニュエル夫人』」


「もう。早川ちゃん、わたし、そこまでふしだらじゃないですよう」


 女子同士のライトな下ネタって、男子にとって居心地悪いよな……と思う岩波。少しばつが悪い。後輩には一人くらい男子が欲しかった。


 しかし、だいたいノリはわかった。


「その点中年サンデーは爽やかさあるっすよね、日曜日のパパさん、みたいな」


「『毎日が日曜日』」


「ああ、発売水曜っすもんね。早川ちゃん切れ味鋭いっす」


「それ社会人じゃないだろ。中年でそれはどうなんだ」


「いけませんよ岩波くん。それは偏見です。めっ、ですよう」


 春秋に叱られる岩波。

 岩波はぐぬぬ、と呻いた。反論はなかった。大方その通りであると認識していた。

 しかし同級生に叱られる経験というのは、部長職に対してどこか神経症めいた神聖さを感じる彼にとって恥辱の極みだ。


「そうですねえ。富士ちゃんの言うとおり、中年チャンピオンは、いけますねえ。ドラマを感じさせます」


「『中年がチャンピオンになる』でも『中年がチャンピオンの座を守る』でもドラマあるっすよねー」


「『えびボクサー』」


「あ、早川ちゃん映画もセーフなんすね。その映画は内容違うっすけど」


「『know』」


「で。中年ジャンプになると、途端にっすよ」


「うふふ。──事件性が、増しますねえ」


「『完全自殺マニュアル』」


「しかも週間っすよ。けっこーな頻度で飛んでる」


「やめないか君たち。中年だってジャンプしたいこともあるだろう。いや動作の意味でな? 中年期危機というものがあってだな……」


「仮に動作だけを指してたとしてもヤバいっすよ。少年のジャンプと中年のジャンプって性質違うじゃないっすか。中年のおっさんがジャンプしてたらヤバいやつっす」


「季節の変わり目ですものねえ」


「『変態仮面』」


「君たちも大概偏見がきつくないか?」


 岩波はふう、とため息をつく。

 これ以上のネタは出てこないはず──。


「『チャンピオン』→『サンデー』→『ジャンプ』→『マガジン』」


 コンボで来た。


「物語性を付与するんじゃない早川。大バッドエンドじゃないか」


「少年時代にチャンピオンになった主人公。しかし事故によって選手生命を引退。毎日がサンデーとなってしまう。その境遇を苦にして、ついにジャンプする。彼の死はマガジン──週刊誌がおもしろおかしく報じた……どっすか?」


「乗るな富士見。肉付けをしてあらすじを作るな」


「『俺はこんなはずじゃない』を口癖にしましょうねえ。葛藤と挫折と諦念がない混ざりの一人称小説、きっと面白いですよう」


「春秋。悲劇しか待ってないキャラクターの設定を詰めるな」

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