評価よりいいね欲しい!!!!(もちろん評価もほしい。感想はもっとほしい)
「いい機能っすね、いいね機能」
「いつもの掛詞か?」
「違いますケド。だじゃれ怪人みたいなこと言うのやめてください」
文体のクセを指摘されて富士見は口を尖らせた。
長編の一話あたりの小オチをつけるときも大抵これに頼ってる気がする。物語の基本は反復であるという考えや、人間が笑いを感じるメカニズムは諸説あれど、想定する型から外れた時であるという説を信奉していることも関係している。掛詞は簡易に型を作り外しができるのでコスパがよい。
ただし多用するとクドさを生む……。バランス……!
「あ、今回もびーむ接種済みですよう」
「あきらくんの脳細胞が心配なんですけど」
「何の話だ?」
「なんでもありませんよう。後遺症は報告されていません。うふふ」
Web小説という媒体で不定期連載しているのにガチガチのアナログ人間という設定は土台ムリがあったのだ。
とりわけこういうテーマの時は実在の書名縛りの早川よりも使いづらい。連載の時は継続しやすさでレギュラーキャラクターの設定を考えるべきである。こいつらの存在は戒めとしたい。
「そんなコトよりいいね機能の話ですよいいね機能いいねっ! 何がいいって作者の側から誰がいいねを置いたのかわからないのがいいっすー!」
「『コミュニケーション不全症候群』」
「早川さんにそれを言われる筋合いはないよね」
富士見は致命の刃で斬り返した。ガチトーンである。
SF者は──正確にはSF者とかいうムラ言葉を積極的に使うヤカラは──入れない方がよい筋金を入れてしまった類の気質なので定期的にシメる必要があるのだ。
「君のその、人見知りなところは一旦置いておいて。やはり、外部に開示されない数値というのは大きなメリットだと僕は思う。
評価ポイントというシステムの狙いには、人気作品をソートしやすくすることの他に、作者のモチベーションを高めることも当然あったはずだ。しかしながら、比較の論理が働いて、現状このサイトにおいて後者の役割は十分に果たせているとは言い難いだろう」
「どうしたって気になるっすからね。ポイントが増えたり減ったりそのたびごとに一喜一憂っすよ。ポイント獲得を目的にした話も投稿したいなーって日々思うっす」
「当初僕は、後発サイトの機能を後追いしているものだと思っていた。具体的に言えば、ハーメルンの「ここすき」だな。あれは行単位で好きな箇所を指定でき、やはり投票者が何者なのかは作者からはわからないようになっている……という認識だ。投稿者側ではないのでやや事実誤認があるかもしれない。
しかし当該機能の場合は、外部からその数を確認することができてしまう。説明によるとβ版故とのことだが、恐らく本実装でもここすき数は開示されるのではないかな……。そうなれば、いいねとは機能実装の狙いが違うと見るべきだろう。これは僕の不明だった。
一方でいいねは非公開だ。それは純粋に、作者にモチベーションだけを与えるものだと僕は思う。そして読者の側は、10点評価以上の評価を作品にすることができる。……もっとも、いいねの数でも比較を始めてしまいかねないが……、今のところはそういった風潮は見えてこないかな。僕の狭い観測範囲の話になるが」
「人間の業ですねえ。創作というのは業を摂取しやすい形に加工することなんですよう」
「人間には理性がある。春秋の見方には賛同できない。読者に何かを与える小説もあるはずだ」
「啓蒙主義は驕りが過ぎますねえ。小説はただ、人をこそ描くべきものですよう、岩波くん」
「小説の本義はテーマ性だと──」
「ンなお利口サンで衒学めいたクソご意見じゃなくてー! いいねの話に戻るっすよ! センパのセリフはあくまで枠組みに終止してましたけど、もっと直接的に長編に役立てられるなって思うんすよ」
「役立つ? 何がだ」
「わたしの連載の話になりますけど。各小節ごとにジャンルを意図的に散らしてるんすよね。で、結構自信あるぞー!ってハナシ以外は10話以内、50000字以内で終わらせるのを目安にやってるんすよね。だから、いいねを貰えるとこの辺がウケるのかーって目安にできるんす」
今回更新話・バレンタイン特別編のラブコメ要素を盛り込んだやつはいいねが付くのがかなり早かった。需要この辺かぁ、というのがよくわかる。そりゃそうだってなった。動かしててあっ強ぇーわこのキャラとなった。
ともあれ。そういった需要を認識した上で、今後の展開を考えることができるのはとても大きい。
「感想という形で直接ダイレクトに何かを伝えることって、ためらいがあったりとかあると思うんすよね。まあ躊躇いなく来られたら来られたでうおお!?って困惑しそうな気もしますけど……でもその辺の積極性って人間社会においてプラスっすよね。面の皮が厚いは褒め言葉だなと思うっす。だって顔面のVITが高いとか普通に有利じゃないすか」
「人間社会でVITって値を気にする機会ないだろ」
「ありますー。突然の事故とかで顔守れたら強いですー。まあでも、強いだけあって特殊スキルなんすよね。
で、匿名であること。周囲の目がないことは、やっぱり違いが出てくると思うんすよ。そゆ剥き出しの意見を受容すべきか否かって問題はまた別にありますけど、いいね機能は否定のメッセージがない。あくまで、いいね、だけなんすよね。匿名性を身につけられ、かつメッセージを送らない形式なのは結構大きいかなーって思うっす」
具体的には──感想欄ではこのタイトルについてツッコミ入らないんだなぁ、とか。
一人称視点の人物が、何やら随分持ってまわった言い回しをすること。主人公が偏見持たれている人種という構造をタイトルで再現したかったのである。感想返しのタイミングでドヤ顔で説明したかった……!
「その上、感想と違って指先ぽち、でいいところもいいっすね。わたし、読書感想文、だいッ嫌いなんですよ。読者に感想を持つコトを強要すんな。課題図書じゃねえんじゃ。ムっカつくんじゃッ! でも感想ほしい……!」
「気性難の側面が出てきたな……」
「感想の次に欲しいのがいいねっす。欲を言いますと、最新更新話に偏りがちなので古い話にもいいねが飛ぶと指標にできるって役割を達成しやすいかなーって。いいねくださーーーーーーいっっ!たくさんくださーーーーーーーーい!!!!」
富士見は叫んだ。
プライドはなかった。




