(1話、そのうち続き書く)追放されまくると最強になれる能力もらった
あらすじ欄:
平凡でつまらない現代日本人が賢くて美しくて慈悲深い女神様にチート貰って異世界で生きるやつです
「あなたは死んだ系のやつです」
「……は? なんだアンタいきなり。死んだ? 誰が?俺?」
「転生じゃなくて転移のやつです」
「いや、転生……転移? 待った。だから死んだって何だよ。心当たりとか全然ないぞ!? し、死因は!? 俺なんで死んだんだ!?」
「法外な能力渡すやつです」
何もない空間。
俺は、ぼそぼそと喋る、なんかすげえ美人と相対していた。
「停滞の打破を狙うやつです。プラスでもマイナスでもどっちでもいいやつです」
「停滞? いや、あの、そんなことより俺の死因! なんで死んだんだよ!?」
「どうでもいいやつです。どうでもよすぎて覚えてないやつです」
俺の死因がどうでもいいの一言で片づけられた……。
俺の人生っていったい……?
「……なんかすげえヘコむんだけど……」
「そうですね」
「そうですね──で終わり!? 謝罪とか慰めとかねえの!?」
「そんなことより、チュートリアルシーケンスを継続するやつです。巻きでいくやつです。巻きで。
転移……この辺はみなさん理解してるやつなので割愛します」
「巻きで、じゃねーよ。俺は理解してないんだけど!?」
そんな俺の声を無視して、女神はなんか厳かな態度を取りだした。それっぽいBGMがどこからか流れ、神聖さがオーラとして見えそうになる。
俺は思わず姿勢を正した。
「流郷なんとか。あなたには《追放されるたびに強くなる能力》をあげます。
一度追放されるたび、あなたの存在強度を100倍にします。
いまはそこらの石ころくらいで100倍した程度じゃちょっと戦えるようになるくらいですが、たくさん追放されれば世界で最強の存在にもなれるやつです」
「おい名前! 『なんとか』って何だよ俺は命だよ!! 流郷命! 無駄に荘厳な態度取りやがって! 出始めからスッ転んでんじゃねーか!
つーか待った。待った待った待った! もう少し説明くれよ! あと石ころと同じとかいうすッげ暴言聞こえたんだけど!?」
「流行ってる系のやつです。追放されるやつです」
「情報量が一向に増えねえ……! というか流行って何!? 流行と俺に何が関係すんの!? つーかぶっちゃけもうそこまで流行ってなかったりしない!? 異世界恋愛とかの方が人気じゃない!?」
「いいえ流行のやつです。もう遅いくないです。まだ間に合うやつです。
なぜなら能力や人格のミスマッチはどこでも起こりうるやつだからです。自由意志を持つ知的存在が寄りあつまって社会を作ればどこかで発生します。流離譚は普遍性のある物語の原器のやつです」
「いやそっちの方の説明とか全くいらねンだけど……なに?
じゃ俺、今から異世界行って?
仲間とか作って?それからそいつらに追放されなきゃいけないの?
わざわざ?」
「そうすると最強になれるやつです」
・・・
・・
・
「返す返すもすげえ適当──!」
宿屋の相部屋で、俺は悪夢から目覚めた。
最っ悪の目覚めだった。
……ここに来て3ヶ月。あの女の適当さはいちいち俺を苦しめた。
剣と魔法の中世ファンタジー世界で現代人が生きることの苦しさ。
言葉はまあ普通に通じてもいちいち文化の違いを感じさせる日常。
なんか魔獣とか出てきて人間の生存圏が切り崩されてる世界情勢。
──説明しろや。もっと説明しろや……! 一から十まで教えろとは言わないけど生命に関わんだろ!?
あの直後に野犬の群れに囲まれてマジで死にそうになったからな俺!
だいたい目的が見えねえ! 俺は何をどうすりゃいいの? 何をなすの?
何もできねぇーよ!! 現代人ナメんな!? なんかポテンシャルを高く見積もりがち!見積もりすぎがち!!
手札がねンだわ! 現代知識ってフレミングの右手と左手がそれぞれ何を表してるとか使えねーぇんだわ!
つーか、やつやつやつやつうッせーんだよぉ!?
「……んぅ……、みーくん……。あさから大声はやめてぇ……」
「あー……、すまん、シャル。悪夢を見たんだ」
「またぁ……? だからぁー……、いっしょのおふとんで寝よってぇ~……、いつもいってるじゃぁん……」
布団をばさっと持ち上げて、おいでおいでと手招きをしてくる女の子は、エルフ族のシャルカラだ。
金髪碧眼のいかにもエルフって見た目で、黙ってるとキレイな美人さんって感じなんだけどシャルはすごい人なつっこい。甘い匂いがする。おっぱい大きい。はだけたパジャマからちらっと覗く肌が白い。
ほどよいぬくさのある布団に俺はふらふらとおびき寄せられ……、ダメだダメだ! 何がダメって──。
「……? おや? 続けたまえよ愛しきミコト。ボクに構わずほら。彼女のやわらかな肢体の誘惑に屈してむつみ合うといい」
この自称天才変態褐色銀髪ロリドワーフが俺らのことをガン見している……!
「最近ね、ボクは気づいたんだよ」
「……一応、聞くか。何をだよ」
「耳長にしては見所のあるいいやその表現では甘いな見所どころかボクが天才であるこのボクが友愛の情を抱いていると言ってもいいシャルカラ嬢と世界の誰よりも愛しく思えるキミがふたり愛を確かめ合っている時に感じるこの胸にじわり広がる痛みがとても甘美であることさ」
「は?」
「おっと失礼。そうだね、一言でいえば──すごく興奮するんだ」
「シャルと俺をそんな目で見るな、ラヴァナ。あと顔が近い。生ぬるい吐息が顔に当たるんだが」
「当てているのさ」
わざとかよ。なんでだよ。
ああもう近い近い近い……! 耳に息を吹きかけるのやめろくすぐったいから……!!
「矮工の外見は、キミの種族基準からすると未成熟な児童のそれに近しい。キミにとっては、これはただの親密なスキンシップだろう?
それとも──欲情するのかな? ボクはそれでも構わない。むしろそれは大いに望むところだからね」
「勘違いさせるような言動やめろっていつも言ってるだろ!?」
「ふふ……。それはカンチガイかな? キミの背に当てているボクの胸の鼓動、感じてみて……? ほら、すごく……どきどきしてるだろう?」
「う──」
とくん、とくんと、跳ねるような心臓のリズムを背中越しに感じる。
……いやいや落ち着け、こいつにそういうの感じたら負けだから。深呼吸深呼吸……。
「らぶちゃんもぉー……きーてー……」
「わっ!?」
背中にへばりついたラヴァナごと、シャルが布団の中に俺を引っ張りこむ。
弓を引いてるだけあって力が強い。形ばかりの抵抗むなしく、俺はラヴァナとまとめて布団の中でぎゅーっと抱きしめられた。
「ちょっ──当たってる! 当たってるからっ!」
「らぶちゃんあったか~……みーくんすきすきぃー……」
「ああ心がきしむ胸が張り裂けそうになるひどいひどいよひどいなぁ一体なんて光景を特等席で見せてくれるんだろう痛いよじくじくする悲しいなあ苦しいなでもちょっと気持ちいいな最高の特等席だよ」
「助けてくれー! 気が変になりそうだー! たすっ、だ、誰か助けてくれーっ!!」
「ルイゴウ、無事か……!」
宿屋の扉を破壊して、片角の生えた筋肉ムキムキの黒髪長髪イケメンの大男──鬼人族のテクタの兄貴が入ってくる。
布団に押し込まれている俺と目があった。やった、これで助かっ──、
「……失礼したな」
破壊された扉を元の位置に立てかけ、テクタ兄貴は去ろうとする。
「ま──待った待った!! ちょっと、俺を一人にしないでくれよ!! ヤバいんだって色々!」
「エロエロなのかい……? ヤバいのかい……?」
「ラヴァナお前なんなの!? いやほんと、マジに助けてくれテクタ」
「わぁーてっさんだー……。てっさんもーぅ……ねよー?」
「何度も伝えたが、己には故郷に残した妹がいるのだ。『老若男女問わず誰かと同衾したら100回殺す』と言われている」
「いつ聞いても暴力系激ヤバヤンデレ妹なんだよな……。テクタ兄貴、よく五体満足でいられたよな」
「問題ない。殺すのは相手の方だ」
「ヤバヤバヤンデレ妹なんだよな。部屋に入らずに助けてもらうことできますか」
目を細めている兄貴はそれを微笑ましい兄妹間のスキンシップか何かのように考えているようだけど、少なくとも俺からしたらマジのガチのヤンデレである。
肉体関係を狙っているタイプの血の繋がったヤンデレだ。逃げられてよかったなほんとに。
「ふふふふふボクの新たな性癖の扉が激しくノックされているのを──ん、なんだいテクタ君か。まったくいつから見ていたのか……。キミのことは信頼できるパーティメンバーだと考えているが、あいにくと見せ物じゃないんだ。散りたまえ。しっしっ」
「うむ」
「おいラヴァナ! テクタ兄貴を帰そうとするんじゃねえよお前マジなんなの?つーか仲良くしろよ」
「仲良くしているつもりだよ? 妹さんの希望を叶えたい彼のためでもある。それに──彼が帰らないと続きができないじゃないかっ……!」
「いやもう、いいから早く起きようぜ……!! ほら、シャルもとっとと目を覚ませ!」
「う~……」
ここに来てから3ヶ月。3ヶ月で色んな出会いがあった。
これが俺のパーティだ。
──追放は、まだ一度だってされてない。
「わたしもバチバチにウケそうなモン書きてえ……!!!」
「何だ急にどうした」
「トレンドに乗りてえっす……!!」
「今日もふじちゃんの自意識がほとばしっていますねえ」
春秋はふわふわと笑う。
後輩が今日もかわいい。
「いや。そもそも君には連載があるんじゃないのか」
「あるっすよ。あるっす……。でもね…………大丈夫か!? 迷走だと思われてないかこの話だいじょぶか!?……って毎話毎話不安でしょーがねーんすよ……! タメの話を書いた時って作者への信頼で繋がなきゃいけないわけで! でもなんか毎回タメになってる気がするんすよ! だからこう、いい感じの短中編書いて信頼度稼ぎたぁい!!」
「『下衆の極み』」
「そこで悩んじゃうなら投稿しなければいいんじゃないですかねえ」
「……でも作品のコンセプトにたくさんの色を使いたい──色んなジャンルの要素を備えたいなっちゆーのがあるのでぇ……。だから色んなパートってかその具体的にはNAISEIパートもカッチリやるんすけどぉ……!」
「ああ。いつも僕らに色々訊ねてくるよな」
「いつもありしゃーす。でもそうやって散りばめた要素要素が迷走だと思われないようにーって不安ぅ……!! 内政やろうにも文化相対主義者だから異世界よか現代の知識の方が優れてるって図式描くのすごい躊躇するしぃ……。だってほら、変化への対応ってその時点でトラブル生むじゃないすか。気候も政治制度も経済活動の規模も形式も違うし倫理観や法律も違うってなるとそのまま持ってきて問題ないのって複式簿記くらいじゃないのか? でもこの発想我ながらいかにもSF者的なリアルめくら……!! 早川のせい……! 創作は沢山嘘をついてよい世界……!!!! いやまあ、わたしの地を出そうって考えの元ずーっと突き進んできた以上?そこ一貫したプレイングって大事なので株仲間解散させなかったですけども。こう、勝利条件を別に据えてる中でも一石二鳥も!ってしないのはエンタメ的じゃないよなぁって思うぅ……」
「『冤罪』」
「長いぞ富士見」
「う゛っメンヘラになってる。いやまあ極論、極論ですけど誤脱修正後の更新話まで目を通してくれてる常連さんの期待を裏切らなきゃそれでいーんすけどね? いーんすけど、いーんすけど……、手すりなしで夜の山道下ってるきぶんぅ……」
スリルだ。スリルを感じる。
Web小説という連載形式は紙面の都合を考えなくてよいので、幹のストーリーラインから離れた枝葉を伸ばし続けることも可能である。
しかしながら……それは迷走ではないか? ラストシーンに向けて伸びた枝葉、収束させられるのか? いやもちろん収束させるけど……。させるけど、させるにしてもついてきてもらえるかなぁ……?
積み重ねた文字数が語りかけてくるのだ……。常命の者の時間を奪ってることがアクセス解析からわかる……。2時間とか3時間とかつきっきりで読んでくれるんですね……。
「その上で、この辺のコンセプトとかテーマとかってあくまでわたしのこだわりであって。わたしの自意識が暴れているのと読者さんの楽しさってぜんっぜん関わりがないんすよねぇ。だから──」
すうっと大きく息を吸い込み、
「わかりやすくウケそうな要素拾いまくったやつ書いてチヤホヤされてえなあーー!!!!!!
長編はもちろん週一以上の頻度で更新継続するけどーー!! 作者にも読者にもシンプルなの書きてえーなぁーーーー!!!!!!」
富士見はなっさけないことを叫んだ。
だから以下の文章の論理が繋がっていない。
支離滅裂だった。
「……大丈夫か?」
「だいじょぶっす。毎日楽しいっす」
「そうですねえ。楽しそうですねえ。ふじちゃんは自縄自縛が大好きなドマゾさんですねえ」
「『ザッヘル=マゾッホ紹介』」
「ドマっ……、違うし!! だいたいセンパ!センパいるんですよここ! 控えて!暗黒要素控えてくださいっ!!」
富士見は慌てて春秋の口を塞ぎ早川のタブレットをひっくり返す。
しかし、センパこと岩波が特に春秋の発言を気にすることはなく。
「こらこら。仲良しだからって早川に乱暴なことはするなよ」
それどころかこっちを批判してくる……!
こいつらはふわふわした態度のお嬢様とか無口の赤面症とかいうキャラクターで得をしている……。富士見は自分のキャラ付け間違えたかなと思った。どうも自分ばかりオチ担当になるのだ。
しかし、そうはいかない。今日は違う。富士見は小柄な姿勢を正した。
「これはあくまで冒頭部だが、続きはどうなるんだ?」
「よっくぞ聞いてくれましたっ! なんすかー? センパもよかったと思うっすか?」
「1話だけで物語は評価できない。少なくとも、今回はいつものような出オチじゃないな」
「感情のないマシンかよ。……いや、いいっす。センパがそういうやつなのは知ってるっす。
ええと。とりあえず、仲間たちは全員主人公くんのことが大好きです。ジレンマは手軽にドラマを生むので『《魅力的な仲間》を取るか《過酷な世界で生き抜くための力を手に入れる》を取るか』ってところをテーマにしたいっすね。
で、こっから各仲間が全員追放されてる的な過去バナを1話3000-4000字前後ずつやってー、過去話それぞれで起伏作りつつ本編スタートまで15000字以内が目安、そこから主人公くんをピンチに押し込むっすかねぇ。わかりやすく与えたキーワードの『手札がない』で色々引っ張ってって完結が6万から8万字?って感じっす。
あとは文体。フダンは「」付きの台詞は息づかいや口語体特有の言葉のブレとかつかえとか抑揚の変化とか息継ぎの句読点とかなんかも文字に起こして書いてるんすけど、そのせいで文字数が単純に多くなってるのでもうちょいシンプルでもいいかなーとは思ってますかね。や、でもキャラの魅力を天秤の片側に載せっから今のままの方が都合いいかな? どうかな? って感じっすー」
「ふわふわのプロットですねえ」
「プロットかっちり定めすぎると言語化した時にわたしの理想と実装された運用が違う!!!ってなりやすいと個人的に思います。プロットから肉付けしてく過程で面白くなったって思えないと筆が進まないんですよね」
「そうかもしれませんねえ。でもふじちゃん、展開のプロットって言いましたけど。この彼、ここから追放されるんですかあ?」
「まだ考えてないでーす」
「……そこ考えてないのか? タイトルだろう」
「や、あの、理由はあるっすよ? そんな目で見ないでほしいっす。
個人的にー、伝家の宝刀は信念を持って最後まで抜かれない方がカッコいいなって思ったりはするんすよ。でも、それはわたしのカッコよさ。感性がひねくれてる自覚があるっす。
それに、能力活かして主人公くんが活躍してくれた方が中編完結作品としてのカタルシスはあるのかなーって思ったりもするんすよね」
「『営業と詐欺の間』」
「追放しないのに追放タグつけていいの? それ詐欺じゃないのふじちゃ。スタートに追放って看板掲げとけばセーフみたいなこと考えてない?」と早川の目が語る。
なお、『目が語る』技法を使って無口キャラに普通に台詞を喋らせるのは飛び道具なので封印します。小説って媒体で無口というのはすなわち描写が皆無であることと同義なのでキャラが空気になりがち問題とは全力で戦っていきたい……!
だから短期連載で完結させる予定の作品に無口キャラは出さない。
……いや、タグの話だった。
「それもね……、まあ気になるよね……。そもそもタグを自分で付けるのって、なんてゆーか、こわいよね……。作者から『この物語はこういう風に見てほしい』って主張しているとゆーか。いや作者の主張とか人間性とか知らねーでしょ。その辺はテキストとして形になっているものが全てでしょ。キャプション読んでエクスキューズ読んで、それで初めて作品の意図が理解できる、みたいなのは高尚じゃなくて自己満足で取っつきづらさ。そもそも作品の意図なんざどうでもよくて、ただそれを読んだときに思ったことが全てでしょ。
──なーんてカッコいいこと本気で思えたらなあーー!! そんな無頼の徒みたいになれたらなーーーー!!」
「そのカッコよさで自家中毒みたいになってますねえ。うふふ」
「まあでも己のカッコよさに殺されるなら本望感は割とありますよね。
でもカッコよくないから死ぬこととかできなーーい!!」
「今日はよく叫ぶな……。のど飴いるか?」
「なめます」
富士見はマヌカハニー飴を口の中でからから転がした。普通においしいけど龍角散の方が効く気がする。
『ころがした』という文章の変換で『頃がした』が先に出てくるのなんか粗暴で悪いネットミームに毒されてる感があってよくないと思った。
「まあそんな感じで。長編書きつつ、使えないアイデアをしっかり形にしたいなって話なんすよ。あとチヤホヤされたい」
チヤホヤされたすぎるだろ。
というか一種の気の迷いだろ。タイトルもあらすじも雑なところにひねくれた感性を隠し切れてないだろ。
文芸部の面々は思った。
「そもそも。いつ続き書くんだ?」
「うう゛うう゛うぐうううう……!」
富士見は呻いた。




