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稲高文芸部活動記録  作者: 稲高文芸部
22/31

伏線のロングパスについて


 季節は冬。

 旧校舎の文芸部部室にはすきま風が入り込む。

 本シリーズは筆慣らしの筆遊びが目的なのにちっとも更新していないせいで活気がなく寒いのだ。


「申し訳ねえーという気持ちはあるんすよ……」


「『すごい謝罪!』」


 早川が電子書籍の書影を映す中、富士見はいつもより縮こまっている。

 今回の長編の更新話について、思うところがあるのだ。


 ──リアル8ヶ月前である。

 今回富士見が更新した話は、マクラにした話が40話ほど前である。日付見たらリアル8ヶ月前の話である。8ヶ月て。男子三日会わざれば刮目して見るべきって考えるともう80回刮目するような変化があるわけでそれは別人なのである。

 こうなると、もうぶつ切りで読んでいくことになるWeb小説長期連載読書スタイルは夕食がどうのこうのという次元の話ではない……!


「いやまあ?覚えてもらえてるなら、ほーんそうだったのねー、の一言で流してもらえるような、あくまで展開を動かすためのギミックなのでテーマからすると枝葉であるわけっすけどぉ……」


「ちょっと覚えてませんねえ。この名前、どちらさまですかあ?」


「でーすーよーねーー!」


 なんかもう時間の流れに恐怖心を覚えるというか単純に純粋に更新頻度の問題なのだ。これが週2更新であれば4ヶ月で該当話にたどり着けるし週4更新なら2ヶ月である。

 星の数ほどあるコンテンツの中からあえてアマチュア創作選ぶ理由って『商業流通に乗せることを考えていない情念が乗ってる』以上に、やはり更新性の高さと手軽さからだろう。

 どういった形式で読まれることを想定しているか、という話である。一度最新話まで読み切ったヒトは、まあ基本的にはその後は更新話を追うことになるだろう。そうなると、過去の話をマクラにするというのはうろ覚えなところを突くことになる。

 星の数あるコンテンツの中で、あえて拙作を読み返させようなどと考えることは──なんかどうも、1話あたり3-5分とか掛かるらしいびっくり──意図していない……!

 もうほんとわかって……、わかってはいるのだ……。


「いやまあ月産1万6000から2万字程度は書いているんすけどぉ……。文庫本が8万から10万字としたら5ヶ月で1冊刊行できるペースは何とかなんとか維持をしているんすけどぉ……まーでもあのヤカラが喋らなきゃこの文字数って半分以下になるのは疑いないしこのカウントもだいぶ甘いというか……」


「なるほどな。余暇時間の全てを執筆に捧げればいいんじゃないか?」


「わたしセンパみたいな血の通わない勉強マシーンじゃないんすよぉ!? ごろごろしたいゲームしたいアニメ見たいマンガ読みたいWeb小説読みたいー!」


「おやあ? 小説が一番後ろですねえ、ふじちゃん」


「うッぐっ……!」


 痛いところであった。

 この世界には娯楽が多いのに、小説は摂取するにあたっての時間対効率がぶっちゃけそこまで良くもなくて、しかし想像を惹起するために脳のエネルギーをより欲するのだ。

 富士見はじたばたもがく。ハアハアと過呼吸気味に喘ぐ。自意識の海に溺れそうになっている。しかし文芸部に助ける者はいない。





「はあ、はッ、はあーッ……! 思うに……、長期連載による完結を想定している作品って、継ぎ足していく秘伝のタレなんすよね」


 材料は決まっている。味付けの方向性も定まっている。

 しかしながら、材料を混ぜ込み続けて壷の中で化学反応を起こし、筆者の想定する分量や味からはズレたものになる。

 感想ひとつ貰えるだけで調味料の入れ方ちょっと変ーえよってなるのです。そしてそれが、とても楽しいWeb長期連載ってフォーマットならではの姿だと思います。


「で、一方でチェーホフの銃だかいう言葉がある。物語において銃が出てきたなら撃つシーンが存在するべきっす。すなわち、物語の構成要素としてなにか普通ではない何かが出てきたのなら、それはどこかで回収されるべきで……、それがまあ、伏線と呼ばれるものっすよね」


 可能な限り、作者の能力が届く限り、何か非合理な、あるいはなにか目につく描写があれば、そこには理由を用意しているつもりである。──作者の感性が普通人からズレている自覚はあるので必ずしも全てとは言えないが能力の限り!

 その一方、ちょろーっと意味深な描写を置いて、ここは伏線として伸ばせるなーみたいな、今後の展開を変化させるアソビを作っておいたりもしている。

 それがこう……話数の更新を重ね、継ぎ足し継ぎ足しされていく中、優先度とかがこう……ぐちゃーってなるのだ。


「読者のひとに楽しんでもらう、という観点を考えるなら、ですね。こういった離れた位置にある話の要素ほじくるのは更新頻度に自信がなきゃいかんな……とは思うんすよ」


 とは思う。思ってはいるのです。

 でも、向こう見ずな決断は一見するとキレイに見えても、きちんと一瞬のキレイさを通り過ぎた先に試練が待ち受けているべきだし、雄弁さの裏にある舌禍も当然付きまとうべきだとも思う……!!



 描きたいテーマを章ごとに定めていて、これは枝葉だのこれは幹だのこの色は先に置いとくだのゴチャゴチャやっているのだが……これはちょろっと、なんというか構成として若干問題があるのではなかろうかー、と筆者に問いかけてくるものがある今回の更新話。

 このエピソードやらなきゃ時間進めなくて済むな、話数重ねて描写もっと擦れるな、みたいな打算もあったことは認めなければならない。


「重ね重ねっ……! 更新頻度の問題っ……!」


 猛省……!!


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