第66話 最後のざまぁ、偽勇者ゼノンの末路
「「「完全勝利!」」」
俺たちは勝利の雄たけびを上げる。
その時、心地よい音色が聞こえ始める。
テレテレッテッテッテー♪
「「「レベルアップ!」」」
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名前・アルト
職業・レジェンドテイマー
レベル・13
攻撃・220(レベルアップによる能力値上昇+10)
防御・220(レベルアップによる能力値上昇+10)
敏捷・220(レベルアップによる能力値上昇+10)
魔力・220(レベルアップによる能力値上昇+10)
技能・性質変化
レジェンドの眼光
レジェンドの御手
耐性・レジェンドの証
契約・あり
名前・スラマロ
職業・イータースライム
レベル・13
攻撃・125(レベルアップによる能力値上昇+5)
防御・125(レベルアップによる能力値上昇+5)
敏捷・125(レベルアップによる能力値上昇+5)
魔力・275(レベルアップによる能力値上昇+5)
技能・大食い
武器化
耐性・毒耐性
契約・あり
名前・ゴレスケ
職業・エレメンタルゴーレム
レベル・13
攻撃・110(レベルアップによる能力値上昇+5)
防御・110(レベルアップによる能力値上昇+5)
敏捷・110(レベルアップによる能力値上昇+5)
魔力・180(レベルアップによる能力値上昇+5)
技能・精霊の加護
防具化
アーティファクト化
耐性・麻痺耐性
契約・あり
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レベルアップは、すごく嬉しい。
目的を達成したため、素直にそう思える。
戦利品はもちろん、今回の勝利だ。
「宿敵からの勝利は、最高だな!」
勝利を噛み締める俺たち。
一方のゼノンは――
「ぐげぼおおおおおおおお!」
ゼノンは絶叫しながら吹っ飛び、舞台の上に倒れる。
「あっ、ああっ……」
ラッシュとブレイズによるダメージは、想像以上だ。
ゼノンの顔は腫れ上がっているし、体は焼け焦げている。
さらに失禁したらしく、股間は濡れている。
「デーモンが消えたら、ボクはどうすればいいんだ……」
異界のデーモンを失ったショックに、ゼノンは打ちのめされる。
実際、ぶつぶつ呟く姿は狂人を連想させる。
そう、ゼノンは傲慢らしい天罰を受けて、苦しみ抜いている。
「ゼノン、悪夢から目覚めたか?」
「君は……生きてたのか!」
「やっと思い出したの? 頭ゼノンなんだね!」
「生きてて、よかった……」
「ゼノン、お前――」
ゼノンから後悔の念を感じ取ったために、俺は文句を呑む。
「ゼノン、事情を説明しろ」
「今更、説明しても遅いよ」
「それを決めるのはお前じゃない、俺だ」
「君は、ボクよりもよっぽど傲慢だね」
ゼノンは苦笑いを浮かべる。
「封印の間の出来事は、夢のように感じるんだ」
「夢?」
「その時の記憶が曖昧なんだ。ただ――」
「ただ?」
「君にひどいことを言って、ひどいことをしたのは忘れてない」
「どうして、そんな状態に陥ったんだ?」
俺は問題の核心に触れる。
「ボクは、ずっと前から異界のデーモンに魅入られてたんだろう」
「ずっと前?」
「あの遺跡を訪ねたのは、実は二度目なんだ」
「まさか――」
「その時のボクは、君と同じく追放生贄にされたのさ」
「因果応報かよ!」
予想外の告白に、俺は呆然とする。
「だけど、それによって『成長限界の呪い』から逃れられたんだ」
「叡智の賢者によって?」
「異界のデーモンによって」
「契約したのか?」
「その時は、自分の力だと思ってた。でも、だんだんと力が衰えてきたんだ」
「そのために、さらなる力を得ようと思ったんだな?」
俺の問いに、ゼノンは頷く。
「力を貸してくれた相手が、異界のデーモンだと知らずに乗り込んだのさ」
「そして、異界のデーモンの求めに従って、俺を生贄追放にしたのか?」
「言い訳に聞こえるかもしれないけど、その通りだ。ただ――」
「ただ?」
「異界のデーモンには、本心を見透かされてたんだろう」
「どういうことだ?」
意味深な言葉に引っ掛かる。
「あの時の君は、若いころのボクみたいだった」
「若いころのゼノン?」
「無力な底辺なのに、将来に希望を持ってた」
「悪いことじゃないだろ?」
「悪いことじゃない。それにボクとは違い、君には秘められた才能があった」
「あの言葉は、嘘じゃなかったのか!」
ゼノンの言葉は、嘘には聞こえなかった。
「実際、君には才能があっただろう?」
「叡智の賢者に、力を引き出してもらったおかげだよ」
「たまたまさ。叡智の賢者の後継者にならなくても、君は世界に羽ばたいたよ」
「それが、俺を追放生贄に選んだ本当の理由なのか?」
「そう、将来性のある君が羨ましかったんだ」
「ゼノン、お前……」
ゼノンから羨望の念を感じ取ったために、俺は言葉を失う。
「アルト、ボクを殺せ。ボクには、生きる意味も価値もない」
「どうして?」
「知らなかったとはいえ異界のデーモンと契約した以上、ボクは大罪人だ」
「それだけか?」
「それに何より、君にひどいことをした」
ゼノンの言葉は、言い訳には聞こえなかった。
「ゼノン、生きろ!」
「生きて、どうする!」
「生きて、罪を償うんだ!」
「罪を償えるのか!」
「償えなくても、償うんだよ! 死んで楽になろうとするんじゃない!」
俺の言葉に、ゼノンはハッとする。
「ボクは、自殺さえ許されないのか?」
「普通の人の自殺は許される。でも、お前は悪党だ」
「悪党の自殺は許されないのか?」
「勝ち逃げだろ」
「あははっ、面白い考えだ」
ゼノンは笑う。
「ゲルドにもグレアムにも言ったけど、生きて罪を償えよ――『性質変化』!」
生きる意志を取り戻したゼノンに、俺は『性質変化』を与える。
果たして――
「うおおおおおおおお!」
傷ついたゼノンの体は、瞬く間に治っていく。
実際――
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名前・ゼノン
職業・勇者
レベル・1
攻撃・20
防御・20
敏捷・20
魔力・20
技能・なし
耐性・勇者の証(成長限界の呪い打ち消し)
契約・なし
備考・精神汚染除去、人体損傷完治
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俺によって覚醒したゼノンは、『成長限界の呪い』に打ち勝ったんだ!
「……ボクは、本当に生きていいのか?」
「生きて、罪を償うんだ」
「わかった、罪に等しい罰を受けるよ」
「がんばれよ、ゼノン」
「アルト、本当にすまなかった、そして本当にありがとう」
ゼノンは深々と頭を下げる。
それから――
「勇者ゼノン、殺人未遂を始めとした罪により、お前を逮捕する!」
俺の指示により駆けつけた兵士に、ゼノンは素直に連行されていく。
「何と、何と、何と、勝者はチームアルト!」
遅れに遅れたものの、審判の判定が下される。
「会場の皆さん、アルト、スラマロ、ゴレスケ、三人の勝利に祝福を!」
ワアアアアアアアアァァァァァァァァ!
地震が起きたのかと、勘違いする。
それぐらいの地響き。
その正体は、俺たちの勝利を祝福する歓声だ。
「アルト君、おめでとう!」
「アルトちゃん、最高!」
「アシュミー、かっこよかったわよ!」
「冒険者アルト、見事だったぞ!」
観客は、総立ちだ。
惜しみのない拍手を送ってくる。
エリスも、マスターも、ナンナも、それに国王も喜んでいる。
「ダーリン、偽勇者退治成功ですね!」
「アニキ、特大のざまぁ達成っすね!」
「二人とも、ここから成り上がるぞ!」
俺たちは頷き合うと、
「「「応援、ありがとうございました!」」」
観客に向かって一礼する。
みんな、これこそ本当のざまぁだ!
お読みいただき、ありがとうございます。
作者としても予想外なことに、感動的な話になっています。
前の二人とは違い、ゼノンが死を望んだからでしょう。
ただ、アルトはそれを拒み、ゼノンに救いの手を差し伸べました。
アルトは人がいいだけじゃなく、人としての器が大きいみたいです。
本当の勇者とは、アルトみたいな器の大きい人物なのでしょう。




