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第66話 最後のざまぁ、偽勇者ゼノンの末路

「「「完全勝利!」」」


 俺たちは勝利の雄たけびを上げる。


 その時、心地よい音色が聞こえ始める。


 テレテレッテッテッテー♪


「「「レベルアップ!」」」


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼


 名前・アルト

 職業・レジェンドテイマー

 レベル・13

 攻撃・220(レベルアップによる能力値上昇+10)

 防御・220(レベルアップによる能力値上昇+10)

 敏捷・220(レベルアップによる能力値上昇+10)

 魔力・220(レベルアップによる能力値上昇+10)

 技能・性質変化

    レジェンドの眼光

    レジェンドの御手

 耐性・レジェンドの証

 契約・あり


 名前・スラマロ

 職業・イータースライム

 レベル・13

 攻撃・125(レベルアップによる能力値上昇+5)

 防御・125(レベルアップによる能力値上昇+5)

 敏捷・125(レベルアップによる能力値上昇+5)

 魔力・275(レベルアップによる能力値上昇+5)

 技能・大食い

    武器化

 耐性・毒耐性

 契約・あり


 名前・ゴレスケ

 職業・エレメンタルゴーレム

 レベル・13

 攻撃・110(レベルアップによる能力値上昇+5)

 防御・110(レベルアップによる能力値上昇+5)

 敏捷・110(レベルアップによる能力値上昇+5)

 魔力・180(レベルアップによる能力値上昇+5)

 技能・精霊の加護

    防具化

    アーティファクト化

 耐性・麻痺耐性

 契約・あり


▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


 レベルアップは、すごく嬉しい。

 目的を達成したため、素直にそう思える。

 戦利品はもちろん、今回の勝利だ。


「宿敵からの勝利は、最高だな!」


 勝利を噛み締める俺たち。


 一方のゼノンは――


「ぐげぼおおおおおおおお!」


 ゼノンは絶叫しながら吹っ飛び、舞台の上に倒れる。


「あっ、ああっ……」


 ラッシュとブレイズによるダメージは、想像以上だ。

 ゼノンの顔は腫れ上がっているし、体は焼け焦げている。

 さらに失禁したらしく、股間は濡れている。


「デーモンが消えたら、ボクはどうすればいいんだ……」


 異界のデーモンを失ったショックに、ゼノンは打ちのめされる。

 実際、ぶつぶつ呟く姿は狂人を連想させる。

 そう、ゼノンは傲慢らしい天罰を受けて、苦しみ抜いている。


「ゼノン、悪夢から目覚めたか?」


「君は……生きてたのか!」


「やっと思い出したの? 頭ゼノンなんだね!」


「生きてて、よかった……」


「ゼノン、お前――」


 ゼノンから後悔の念を感じ取ったために、俺は文句を呑む。


「ゼノン、事情を説明しろ」


「今更、説明しても遅いよ」


「それを決めるのはお前じゃない、俺だ」


「君は、ボクよりもよっぽど傲慢だね」


 ゼノンは苦笑いを浮かべる。


「封印の間の出来事は、夢のように感じるんだ」


「夢?」


「その時の記憶が曖昧なんだ。ただ――」


「ただ?」


「君にひどいことを言って、ひどいことをしたのは忘れてない」


「どうして、そんな状態に陥ったんだ?」


 俺は問題の核心に触れる。


「ボクは、ずっと前から異界のデーモンに魅入られてたんだろう」


「ずっと前?」


「あの遺跡を訪ねたのは、実は二度目なんだ」


「まさか――」


「その時のボクは、君と同じく追放生贄にされたのさ」


「因果応報かよ!」


 予想外の告白に、俺は呆然とする。


「だけど、それによって『成長限界の呪い』から逃れられたんだ」


「叡智の賢者によって?」


「異界のデーモンによって」


「契約したのか?」


「その時は、自分の力だと思ってた。でも、だんだんと力が衰えてきたんだ」


「そのために、さらなる力を得ようと思ったんだな?」


 俺の問いに、ゼノンは頷く。


「力を貸してくれた相手が、異界のデーモンだと知らずに乗り込んだのさ」


「そして、異界のデーモンの求めに従って、俺を生贄追放にしたのか?」


「言い訳に聞こえるかもしれないけど、その通りだ。ただ――」


「ただ?」


「異界のデーモンには、本心を見透かされてたんだろう」


「どういうことだ?」


 意味深な言葉に引っ掛かる。


「あの時の君は、若いころのボクみたいだった」


「若いころのゼノン?」


「無力な底辺なのに、将来に希望を持ってた」


「悪いことじゃないだろ?」


「悪いことじゃない。それにボクとは違い、君には秘められた才能があった」


「あの言葉は、嘘じゃなかったのか!」


 ゼノンの言葉は、嘘には聞こえなかった。


「実際、君には才能があっただろう?」


「叡智の賢者に、力を引き出してもらったおかげだよ」


「たまたまさ。叡智の賢者の後継者にならなくても、君は世界に羽ばたいたよ」


「それが、俺を追放生贄に選んだ本当の理由なのか?」


「そう、将来性のある君が羨ましかったんだ」


「ゼノン、お前……」


 ゼノンから羨望の念を感じ取ったために、俺は言葉を失う。


「アルト、ボクを殺せ。ボクには、生きる意味も価値もない」


「どうして?」


「知らなかったとはいえ異界のデーモンと契約した以上、ボクは大罪人だ」


「それだけか?」


「それに何より、君にひどいことをした」


 ゼノンの言葉は、言い訳には聞こえなかった。


「ゼノン、生きろ!」


「生きて、どうする!」


「生きて、罪を償うんだ!」


「罪を償えるのか!」


「償えなくても、償うんだよ! 死んで楽になろうとするんじゃない!」


 俺の言葉に、ゼノンはハッとする。


「ボクは、自殺さえ許されないのか?」


「普通の人の自殺は許される。でも、お前は悪党だ」


「悪党の自殺は許されないのか?」


「勝ち逃げだろ」


「あははっ、面白い考えだ」


 ゼノンは笑う。


「ゲルドにもグレアムにも言ったけど、生きて罪を償えよ――『性質変化』!」


 生きる意志を取り戻したゼノンに、俺は『性質変化』を与える。


 果たして――


「うおおおおおおおお!」


 傷ついたゼノンの体は、瞬く間に治っていく。


 実際――


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼


 名前・ゼノン

 職業・勇者

 レベル・1

 攻撃・20

 防御・20

 敏捷・20

 魔力・20

 技能・なし

 耐性・勇者の証(成長限界の呪い打ち消し)

 契約・なし

 備考・精神汚染除去、人体損傷完治


▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲


 俺によって覚醒したゼノンは、『成長限界の呪い』に打ち勝ったんだ!


「……ボクは、本当に生きていいのか?」


「生きて、罪を償うんだ」


「わかった、罪に等しい罰を受けるよ」


「がんばれよ、ゼノン」


「アルト、本当にすまなかった、そして本当にありがとう」


 ゼノンは深々と頭を下げる。


 それから――


「勇者ゼノン、殺人未遂を始めとした罪により、お前を逮捕する!」


 俺の指示により駆けつけた兵士に、ゼノンは素直に連行されていく。


「何と、何と、何と、勝者はチームアルト!」


 遅れに遅れたものの、審判の判定が下される。


「会場の皆さん、アルト、スラマロ、ゴレスケ、三人の勝利に祝福を!」


 ワアアアアアアアアァァァァァァァァ!


 地震が起きたのかと、勘違いする。

 それぐらいの地響き。

 その正体は、俺たちの勝利を祝福する歓声だ。


「アルト君、おめでとう!」


「アルトちゃん、最高!」


「アシュミー、かっこよかったわよ!」


「冒険者アルト、見事だったぞ!」


 観客は、総立ちだ。

 惜しみのない拍手を送ってくる。

 エリスも、マスターも、ナンナも、それに国王も喜んでいる。


「ダーリン、偽勇者退治成功ですね!」


「アニキ、特大のざまぁ達成っすね!」


「二人とも、ここから成り上がるぞ!」


 俺たちは頷き合うと、


「「「応援、ありがとうございました!」」」


 観客に向かって一礼する。


 みんな、これこそ本当のざまぁだ!

 お読みいただき、ありがとうございます。

 作者としても予想外なことに、感動的な話になっています。

 前の二人とは違い、ゼノンが死を望んだからでしょう。

 ただ、アルトはそれを拒み、ゼノンに救いの手を差し伸べました。

 アルトは人がいいだけじゃなく、人としての器が大きいみたいです。

 本当の勇者とは、アルトみたいな器の大きい人物なのでしょう。

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