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第60話 宿敵の攻略法を見つけろ

 Sランクの強者を子供扱いする、SSSランクの勇者に勝利する?


「無理だろ」


 闇討ちのほうが、可能性はある。

 ただその場合、失敗は許されない。

 失敗したら、確実に殺される。


「ダーリン、対策を立てないといけませんね」


「お前、白旗じゃなかったのか?」


「それは何の対策もなく、真っ向からぶつかる場合です」


「それ以外の場合、可能性はあるのか?」


「そのために、試合を見に行ったんでしょ!」


 微笑むスラマロ。


「アニキ、突破口は時間の経過によって、ゼノンの動きが止まることっすね」


「お前、お手上げじゃなかったのか?」


「オレたちでも、隙ぐらいは突けると思うんすよ」


「隙を突けば、可能性はあるのか?」


「そのためには、どうして止まったのかを知る必要があるっすね!」


 笑うゴレスケ。


「お前ら……ありがとう」


 仲間の前向きな姿勢に、やる気を取り戻す。


「問題は、情報不足ですね。欠けた情報を補わないと、勝利は不可能ですよ」


「隙を突けるかもしれないのに?」


「その程度は予測されますし、予測されなくても対応されます」


「結局、振り出しかよ!」


 カードゲームにたとえるなら、勝利するための手札が揃っていない状況だ。


「アルト君、情報不足なら、あの事務局員さんを頼ればいいんだよ」


「あの人、王都に来ているの?」


「本来の職場は、王都らしいよ」


「よし、マスターを迎えに行くついでに、あの事務局員と接触しよう」


 エリスの助言を受けて、目的地をギルド連盟の本部に変更する。


「それにしても、ゼノンは圧倒的な強さだったな?」


「でも、すご過ぎてうそ臭かったね」


 エリスのみならず、スラマロとゴレスケも拒否感を示している。


「ひょっとして、借り物なんじゃないか?」


「借り物?」


「契約によって、得た力なんだ。それこそ、すべて」


「そうだとしたら、虚しいね」


 ゼノン、お前は偽りの勇者なのかよ?


「みんな、あれがギルド連盟の本部だよ」


 エリスの示した先には――


 宮殿みたいに巨大な建物。

 ウチのギルドとの違いに、苦笑さえ漏れない。

 そのくせウチのマスターは、ここの幹部よりも偉いらしい。


「偉いわけじゃないわ」


「マスター、どうしたの?」


「あなたたちが遅いから、心配になって迎えに行こうと思ったのよ」


 安心するマスター。


「マスターは、お嬢様なの?」


「元、ね」


「没落令嬢?」


「そんなものよ」


 曖昧に応じるマスター。


「プチ家出中でしょう、お嬢様?」


「お嬢様はやめてと、言ったでしょう?」


「グランドマスターも、愛娘を心配なされていますよ」


 会話に入ってくる事務局員。


「グランドマスター?」


「ギルド連盟のトップです」


「マスター、本物のお嬢様じゃん!」


「昔は可愛らしかったんですけど……謝りますから怒らないでください、お嬢様」


 謝罪する事務局員。


「私のことよりも、あなたたちの用事は何なの?」


「あたしは、マスターの迎えです。アルト君は、事務局員さんに相談事です」


「それなら、私たちは宿に戻りましょう。遅くなると、危ないから」


「そういうことだから、あたしは宿に戻るよ? みんな、がんばって!」


 そう言い残して、エリスとマスターは宿に向かう。


「アルトさん、相談事とは何ですか?」


「ゼノンの強さの秘密を知りたいんです」


「難題ですね。知っているとしたら、あの三人でしょう」


「謹慎中の?」


 あの三人を始めとした不正に関わった面々は、謹慎中だ。

 ただ、俺の口ぞえもあって、最悪の事態を免れている。

 その代わりに、ギルド連盟にこき使われるみたいだ。


「そう言えば、あの三人からアルトさんへの伝言があります」


「伝言?」


「ゼノンは青色の石を大切にしているから、調べてみるといい、と」


「青色の石、か」


「仕事中のため、これで失礼します」


 そう断りを入れて、事務局員は仕事に戻った。


「二人とも、青色の石に心当たりはあるか?」


「ダーリン、ゲルドとグレアムを倒した後、石を拾いましたよね?」


「アニキ、その石と異界のデーモンと、関係してるっすよね?」


「言われてみると、その通りだな!」


 我ながら、間の抜けた反応だ。


「ゼノンの大切にしている青色の石は、同じものなのか?」


 俺は背負った皮袋から、問題の石を取り出す。


 黄色と桃色の石。

 どっちも、そこらへんに転がっている石と大差ない。

 それでいて事情を踏まえると、まったく別物らしい。


「単なる石ころだよな?」


「いい機会ですから、石の専門家に当たってみましょう」


「石の専門家?」


「鉱山ギルドに、行けばいいんですよ。鑑定も、請け負ってくれます」


「スラマロ、お前、物知りだな!」


「褒められるのは嬉しいですけど、褒められるほどのことでもないですね」


 謙遜するスラマロ。


「アニキ、鉱山ギルドは、向かいの通りにあるっすよ」


「それじゃあ、向かいの通りに行こう」


 一部を除いて、各種のギルドは固まっている。

 そのため、すぐに目的地に到着する。

 建物に入ると、受付に向かう。


「用件は、鑑定ですね? 鑑定士がいるのは、あちらになります」


 受付嬢に教えられたのは、すぐ近くの部屋だ。


「すみません、石を鑑定してください」


「どうぞ、中へ」


 指示に従い、俺たちは部屋の中に入った。

 お読みいただき、ありがとうございます。

 連続更新は、ラストスパートに向けた地ならしです。

 もちろん、一区切りはゼノンへのざまぁです。

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