第54話 悪霊からの脅迫状
廃墟を目指して、俺たちは警戒しながら歩いている。
「思った以上に暗いな?」
周囲は、照らし出されている。
ゴレスケの変化したライトアミュレットによって。
それでも暗く感じるのは、想定を超えているからだ。
「この暗さは、感覚の問題じゃないですよ」
「本当に暗いのか」
「悪霊を見かけたでしょ? あいつが、原因です」
「魔法なのかスキルなのか、そういう能力があるのか?」
「今回の場合、闇の亡霊なんでしょう」
問題の悪霊は、闇そのものらしい。
「それ、攻撃にも防御にも転用できるんじゃないか?」
「心配しないでください、攻略方法を考えておきます」
「頼りにしているぞ」
「まかせんしゃい!」
「何のキャラだよ?」
「カレー大好き、スラマロ・イエロー!」
ブルブル!
スラマロのボケにウケたらしく、ライトアミュレットは震えた。
「お前ら、仲いいな……声?」
俺は異変に気づく。
「アルト君、助けて!」
「エリス……? 今、助ける!」
こちらに向かって走ってくるのは、エリスたち。
一瞥した限りでは、全員揃っている。
緊急事態は、ゴーストによるものだろう。
「行くぞ!」
「ほーい!」
息を合せる。
「「『性質変化』!」」
次の瞬間――
スラマロは、シルバーロッドに変化する!
「ロッドの戦闘特技は、バレットですよ」
「バレット? マナバレットだろ」
確認を済ませると、先行する一体に狙いをつける。
「マナバレット!」
パーン!
宙に浮いたゴーストを消し去る。
「弾けたぞ!」
「弾けますよぉ!」
驚く俺と、喜ぶスラマロ。
「みんな、立ち止まらずに走り抜けてくれ!」
「わかった!」
エリスたちは、俺の横を走り抜けていく。
「一気に殲滅するぞ!」
迫り来るゴーストの群れを迎え撃つ。
「マナバレット! マナバレット! マナバレット!」
パーン! パーン! パーン!
弾け続けるゴースト。
一体、また一体、さらに一体。
確実に減らして、最後の一体に狙いを定める。
「マナバレット!」
パーン!
最後の一体となったゴーストも、反撃する暇も与えずに消し去る。
「安全確保だな?」
見渡すと、ゴーストはすべて消えている。
その時、心地よい音色が聞こえ始める。
テレテレッテッテッテー♪
「「「レベルアップ!」」」
ゴレスケも加わり、久しぶりの成長を喜ぶ。
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名前・アルト
職業・レジェンドテイマー
レベル・11
攻撃・200(レベルアップによる能力値上昇+10)
防御・200(レベルアップによる能力値上昇+10)
敏捷・200(レベルアップによる能力値上昇+10)
魔力・200(レベルアップによる能力値上昇+10)
技能・性質変化
レジェンドの眼光
レジェンドの御手
耐性・レジェンドの証
契約・あり
名前・スラマロ
職業・イータースライム
レベル・11
攻撃・115(レベルアップによる能力値上昇+5)
防御・115(レベルアップによる能力値上昇+5)
敏捷・115(レベルアップによる能力値上昇+5)
魔力・265(レベルアップによる能力値上昇+5)
技能・大食い
武器化
耐性・毒耐性
契約・あり
名前・ゴレスケ
職業・エレメンタルゴーレム
レベル・11
攻撃・100(レベルアップによる能力値上昇+5)
防御・100(レベルアップによる能力値上昇+5)
敏捷・100(レベルアップによる能力値上昇+5)
魔力・170(レベルアップによる能力値上昇+5)
技能・精霊の加護
防具化
アーティファクト化
耐性・麻痺耐性
契約・あり
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レベルアップに関する感想は、物足りない。
エリスのレベルは上がらないし、事務局員のレベルも上がらない。
俺たちのレベルも、1のみ上がっている。
「どうしてエリスたちは、ゴーストの群れに襲われたんだ?」
心当たりはないらしく、エリスたちは首を傾げている。
「戦利品は?」
「エリスたちの安全でしょう」
ブルブル!
見渡していると、ライトアミュレットが震える。
「落し物?」
ライトアミュレットの照らし出した先には、見覚えのある紙切れ。
「地図……」
「ダーリン、血文字です!」
地図の裏側には、血文字によってこう書かれていた。
『お前たちの仲間を預かった。
返して欲しければ、金のロザリオを持って来い。
持って来ない場合、お前たちの仲間を殺す』
「宛名と差出人は、ないんだな?」
「あるわけないでしょ!」
「ハナコより、タロウへ。そう書かれていたら、嬉しいだろ?」
「むしろ、嫌ですよね」
突っ込むスラマロ。
「エリス、本当に大丈夫か?」
「本当に大丈夫だよ……ああ、疲れた」
「襲われたのは、俺たちがいなくなった直後だろ?」
「アルト君たちがいなくなるなり、魔物が襲ってきたんだよ!」
ゴーストは、邪魔者がいなくなるのを見計らっていたんだろう。
「なぜ、我々は襲われたのです?」
「金のロザリオのためです」
「回収した遺物のせい?」
「悪霊からの脅迫状です」
裏側にした地図を渡すと、事務局員は息を呑む。
「これは――」
脅迫状を読んだ人々から、悲鳴が上がる。
「嘘だろ!」
「マジかよ!」
「どうするんだよ!」
事務局員は考え込んでいる。
「そう言えば、金のロザリオを手に取った途端、周囲の空気が変わったな」
「金のロザリオが、悪霊を抑えてたの?」
「前回の調査は遺物を回収できなかったんじゃない、回収しなかったんだ」
「悪霊が、解き放たれた――」
息を呑むエリス。
「前回と同じく、金のロザリオを戻すの?」
「戻しても、根本的な解決にはならない。むしろ、問題の引き延ばしだ」
「それなら、どうするの?」
「もちろん、倒す。――そうだろ?」
仲間に話を振ると、
「悪霊退治ですね!」
「完全勝利っすね!」
力強い返事。
「事務局員さん、金のロザリオを渡してください」
「何のために?」
「依頼を達成するために!」
俺の自信たっぷりな言葉に、
「あなたになら、託せます。人質を救出して、悪霊を退治してください」
事務局員は金のロザリオを差し出してきた。
お読みいただき、ありがとうございます。
アルトはいい意味でお人よしですね。
まぁ、その分、頼りになる仲間が揃っているんですけど。




