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第43話 ナンナ救出作戦

「お前は――」


 見覚えのある男は言葉を失う。


 一つ断っておくと、ハンスじゃない。

 人さらいのボスに従っていた傭兵の一人だ。

 凄腕らしく、失点を重ねても雇われているらしい。


「お前の仕業か?」


「こっちの台詞、君たちの仕業か?」


「子供だからといって、容赦しないぞ」


「負けた言い訳にはなるよ」


 俺の挑発に乗って、傭兵は剣を抜き放つ。


「スラマロ、行くぞ!」


「ほーい」


 息を合せる。


「「『性質変化』」」


 次の瞬間――


 スラマロは、ブロンズソードに変化する。


「あのいけ好かない男を始末したのは、お前か?」


「始末したのは魔物だよ」


「どっちにしても同じだ、始末してやる!」


「返り討ちだよ!」


 お互いに距離を詰める。


「マナスラッシュ!」


「スラッシュ!」


 ザシュ!


 俺のマナスラッシュに比べると、相手のスラッシュは弱過ぎる。

 相手の剣を弾き飛ばすと、そのまま切り倒す。

 重傷を免れたらしく、傭兵は両手を上げる。


「降参だ、助けてくれ!」


 傭兵は後ろを向くと、壁にくっつく。


「お前、何者だ?」


「売り出し中の冒険者だよ」


「ランクは、Sか?」


「Eだけど?」


「嘘だろ!」


 驚愕する傭兵。


「どうして、嘘だと思うんだ?」


「スラッシュの速度も威力も、おかしいだろ!」


「こんなものだろ」


「初級の戦闘特技が、そんなに強いわけねえだろ!」


 憤慨する傭兵。


「スラマロ、どういうことだ?」


「ダーリン、マロの力が乗ってるから、スラッシュはあの性能なんですよ」


「戦闘特技は、スラマロと力を合せているのか?」


 その問いに応じるのは、ゴレスケ。


「アニキ、シールドの戦闘特技の場合、オレの力が乗るっす」


「それぞれの武具に、対応しているのか!」


 納得できないのは傭兵。


「テイマーと魔物の連携技だとしても、お前のスラッシュはヤバ過ぎる」


「何が言いたい?」


「お前らは、存在がチートなんだよ!」


 傭兵の遠回しの賞賛に、


「「「うひょー!」」」


 俺たちは調子に乗る。


「そうそう、知っているかもしれないけど、君も連座するぜ」


「連座?」


「大司教には、誘拐を始めとした罪がたんまりある」


「あのクソジジィ、俺たちを騙したのか……くそったれ!」


 毒づく傭兵。


「そういうことだから、少し眠っていてくれ」


「眠る? ぐへええええええええ!」


 無防備な脇腹に一撃入れると、傭兵は床に倒れた。


「アニキ、容赦ないっすね?」


「こういう時は、全員叩きのめすんだよ」


「言われてみると、そのほうが安全っすね!」


 感心するゴレスケ。


「みんな、助けに来たぞ!」


 地下室の前に立つと、傭兵から奪った鍵を使って扉を開ける。


「アルト君!」


 エリスは、嬉しそうに駆け寄ってくる。

 地下室にはエリスを始めとして、十数人の少女が捕まっている。

 ただ、その中にナンナの姿はなかった。


「全員じゃないよな?」


「ナンナは、少し前に一人だけ連れて行かれたの!」


「入れ違いか? 戻ろう!」


 回れ右をする俺たち。


「あたしたちは、下で待ってるよ」


「面倒かもしれないけど、伸びた連中を地下室に閉じ込めておいてくれ」


「うん、わかった。ナンナのこと、お願い!」


 エリスたちと別れると、二階にある大司教の部屋を目指す。


「よし、入ろう!」


 深呼吸した後、大司教の部屋の扉を蹴破った。


「ナンナ、無事か?」


 中に入ると――


「行くぞ!」


 宣言するパンツ一枚の大司教。


「来ないで!」


 拒絶するメイド服のナンナ。


「ナーンナちゃーん!」


 嫌々と首を振るナンナに向かって、喜色満面の大司教は襲い掛かる。


「グレアム・ダイブ!」


 ノリノリな大司教。


「誰か、助けて!」


「俺が、助けに来たぞ!」


 跳んできた大司教に、俺は渾身の蹴りを放つ。


 ボコッ!


「うげええええええええ!」


 蹴り飛ばされた大司教は、窓を割りながら地面へと落ちていく。


「そのまま病院送りになれ、外道!」


 どうやら、悲劇を免れたようだ。

 ナンナは立ち上がると、首を傾げる。

 その仕草に、屈託は感じられない。


「あなたたち……誰?」


 ナンナの疑問は、もっとも。


「アルトこと、アシュミーでちゅ!」


「スラマロこと、スラリーヌなのじゃ!」


「ゴレスケこと、ゴレアンテですわ!」


「みんな……転生したの!」


 ナンナのズレた反応に、俺たちはズッコケる。


「こっちが、本当の姿なんだよ!」


「女装してたの? 変態だっ!」


「緊急時だから、ボケはいらないよ」


「そっちと違って、こっちは乙女心ズタズタなのよ」


「またまた、ご冗談を!」


「張り倒すわよ!」


 無事に再会できたため、軽口を叩き合う。


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 名前・ナンナ

 職業・メイド

 レベル・1

 攻撃・10

 防御・10

 敏捷・10

 魔力・0

 備考・心身ともに健康


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 ステータスからもわかるように、ナンナは心身ともに健康だ。


「みんなは?」


「下で待ってる。合流したら、脱出する予定だ」


 ナンナを連れて、一階に下りる。

 玄関に着くと、合図を送る。

 それに従い、やってきたエリスたちと合流する。


「ナンナ、大丈夫? ふぅ、無事でよかった!」


「エリスこそ、大丈夫? はぁ、無事でよかった!」


 エリスとナンナは、お互いの無事を喜び合っている。


「全員揃ったから、帰ろう!」


「このまま帰れると、本当に思っているのかね?」


 平穏をぶち壊したのは、絡みつくような声だった。

 お読みいただき、ありがとうございます。

 実はアルトたちはスキルに限らず、存在自体がチートだったんです。

 次回は、大司教との決戦です。 

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