第20話 最初のざまぁ、悪代官ゲルドの末路
「「「完全勝利!」」」
俺たちは勝利の雄たけびを上げる。
その時、心地よい音色が聞こえ始める。
テレテレッテッテッテー♪
「「「レベルアップ!」」」
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名前・アルト
職業・レジェンドテイマー
レベル・6
攻撃・150(レベルアップによる能力値上昇+10)
防御・150(レベルアップによる能力値上昇+10)
敏捷・150(レベルアップによる能力値上昇+10)
魔力・150(レベルアップによる能力値上昇+10)
技能・性質変化
レジェンドの眼光(ステータス隠蔽無効、性質変化の派生スキル)
レジェンドの御手(属性の付加と強化、性質変化の派生スキル)
耐性・レジェンドの証
契約・あり
名前・スラマロ
職業・イータースライム
レベル・6
攻撃・70(レベルアップによる能力値上昇+5)
防御・70(レベルアップによる能力値上昇+5)
敏捷・70(レベルアップによる能力値上昇+5)
魔力・220(レベルアップによる能力値上昇+5)
技能・大食い
武器化
耐性・毒耐性
契約・あり
名前・ゴレスケ
職業・エレメンタルゴーレム
レベル・6
攻撃・75(レベルアップによる能力値上昇+5)
防御・75(レベルアップによる能力値上昇+5)
敏捷・75(レベルアップによる能力値上昇+5)
魔力・145(レベルアップによる能力値上昇+5)
技能・精霊の加護
防具化
耐性・麻痺耐性
契約・あり
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レベルアップしたけれど、1のみ。
強敵に勝利したから、2以上レベルアップすると思っていた。
ただ、嬉しいことに変わりはないから問題ない。
「戦利品は?」
「ダーリン、ざまぁですよ!」
「アニキ、石ならあるっすよ!」
呆れる仲間をよそに、俺は黄色い石を拾う。
「強敵からの勝利は、格別だな!」
勝利を噛み締める俺たち。
一方のゲルドは――
「デーモンが消えてしまったら、私の夢はどうなる……」
高価な服はボロキレみたいに破れ、体は電撃により傷だらだけだ。
「ゲルド、お前の夢は幻だったんだよ」
「お前は……あの時の小僧!」
「やっと思い出したの? 頭ゲルドなんだね!」
「お前のせいで、お前のせいで、お前のせいで――」
ゲルドは悔しそうに地面を殴りつける。
「私の破滅は、お前のせいだぞ!」
「自分のせいでしょ」
「お前のせいだ――」
俺に突っかかってきたゲルドは、地面に倒れる。
ベキッ!
元の姿に戻っていたゴレスケに、顔を殴り飛ばされて。
「今のは、苦しめられたみんなの分! オレは、アニキほど優しくないっすよ?」
「うっ……!」
鼻の骨が折れたらしく、滴る鼻血を抑えるゲルドの顔は苦痛に歪んでいる。
「ゴレスケ、ありがとう」
「アニキ、礼には及ばないっす」
嬉しそうなゴレスケ。
「それじゃあ、こいつを兵士に突き出そう」
「証拠は十分ですから、揉み消されませんね」
楽しそうなスラマロ。
「小僧、私を見逃してくれ!」
「見逃す?」
「私は、このまま姿をくらます!」
「その場合?」
「一生遊んで暮らせる金を払うぞ!」
ゲルドの浅ましい提案に、俺たちは呆れ返る。
「なぁ、頼むよ、元仲間だろ? 一度でいいから、助けてくれよ!」
「下手に逃げると、処刑されるぞ」
「このままだと処刑されなくても、厳罰を与えられるんだぞ!」
「元仲間だからこそ、不正を見逃せない」
「くそっ……」
ゲルドはがくりとうなだれる。
「私は、こんなところでは終わらない!」
一瞬の隙を突いて、ゲルドは屋敷の中に逃げ込む。
「逃走は、無駄ですね!」
「逆転は、無理っすね!」
「それでも、追いかけるぞ!」
鼻血と思しき血痕をたどる。
ほどなく、ゲルドを見つけ出す。
そこは、金の延べ棒が積み上げられた大広間だ。
「金さえあれば、やり直せる! やり直して、夢を叶えられる!」
「お前の夢は、終わったんだよ」
「お前は、私から夢さえ奪うのか?」
「ゲルド、悪夢から目を覚ませ」
「悪夢……?」
ゲルドはふらふらと夢遊病者みたいに、金の延べ棒の山に寄りかかる。
ガラッ!
「ゲルド、金から離れろ!」
「これは、私のものだぞ!」
「崩れるぞ!」
「か、金が押し寄せてくる……うおおおおおおおお!」
崩落が収まった時、そこには――
「あっ、ああっ……」
ゲルドの手足は、壊れた人形みたいに折れ曲がっている。
それどころか、肉やら骨やらはみ出している。
そう、ゲルドは強欲らしい天罰を受けて、苦しみ抜いている。
「ゲルド、聞きたいことがある」
「何だ?」
「お前の契約した相手は、本当に異界のデーモンなのか?」
「異界のデーモン……!」
絶句するゲルド。
「知らなかったのかよ?」
「知らなかった。私に限らず、他の二人も知らないはずだ」
「単なるデーモンだと思っていたのかよ?」
「デーモンに、そう教えられたのだ」
ゲルドの返答は、言い訳には聞こえなかった。
「そう言えば、どうして遺跡は崩壊したんだ?」
「他の連中に力を渡してはならないと、デーモンに脅されたからだ」
「それなら、死体は? 顔の潰れた三体の死体は、お前たちの仕業か?」
「死体は、元からあったものだ。顔を潰したのは、提案者のデーモンだ」
「それじゃあ、追放された四人目がお宝を持ち去った噂は?」
「それも、デーモンの提案だ。全部、正体を隠すための偽装工作だろう」
答え合わせは終わった。
「ゲルド、言いたいことはあるか?」
「私は、助からないのか? 金を捨てても、本当に助からないのか?」
「助からない」
「……そうか」
「ただし、このままだと」
「助かる方法があるのか!」
見開いたゲルドの目に、希望の光が宿る。
「スラマロ、ゴレスケ、元仲間に救いの手を差し伸べてもいいか?」
「あえて生かして、罪を償わせるんですね!」
「勝ち逃げは、腹が立つから大賛成っすね!」
「二人とも、ありがとう」
かけがえのない仲間に向かって、感謝の笑みを向ける。
「俺のことを元仲間だと思っているのなら、お前は助かる――『性質変化』!」
瀕死のゲルドに、俺は『性質変化』を与える。
果たして――
「うおおおおおおおお!」
傷ついたゲルドの体は、見る見るうちに治っていく。
実際――
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名前・ゲルド
職業・ウォーリア
レベル・25
攻撃・50
防御・50
敏捷・50
魔力・10
契約・なし
備考・精神汚染除去、人体損傷完治
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ゲルドは、異界のデーモンの影響から完全に逃れたんだ!
「……私は、助かったのか?」
「命は、助かったよ。その代わりに、命以外を失うのさ」
「罪に等しい罰を受けるんだろう?」
「そう、生きて罪を償うんだ」
「ふっ、お前は厳しいな」
ゲルドは苦笑する。
「アルト、頼みごとがある。他の二人も、異界のデーモンから救い出してくれ」
「自分たちは異界のデーモンにそそのかされた、被害者だと言いたいのか?」
「もちろん、加害者だ。それでも、仲間だから救って欲しい」
「わかった、あの二人のことは任せろ」
「すまない、後を頼む」
ゲルドは深々と頭を下げる。
その後――
「代官ゲルド、汚職を始めとした罪により、お前を逮捕する!」
俺の通報により駆けつけた兵士に、ゲルドは素直に連行されていく。
「「「スカッとしたざまぁ、達成!」」」
俺たちは喜びを爆発させる。
「一度、宿に寄ろう。エリスも、心配しているはずだ」
俺たちはゲルドを見送ると、エリスのいる宿に向かって歩き出した。
お読みいただき、ありがとうございます。
本来、ゲルドは死ぬ予定でしたが、生き残りました。
迷ったためにアルトに委ねたところ、助ける道を選んだからです。




