女神と母とアラサーと
前の続編です。
続くか自信なかったので短編集にしました。
今回は主人公と母親の話です。
俺の名は江崎幸太。 とある介護施設で介護士といて働いている。
いつも、いつもハードな仕事をし、帰ったら寝るという暮らしが
繰り返されていた。
俺は仕事においての人間関係もあるが、もうひとつ問題がある。
母親だ。
俺と母は、中学二年生まで一緒に田舎に住んでいた。しかし、
二重生活ができなくなり、中学二年生の時、引っ越したのだ。
しかし、引っ越し後2ヶ月後、学校を休みそこから不登校になった。
学校に行ってるときは優しかった母が、思い通りにいかなかったりすると、すぐに八つ当たりの対象となった。
それが許せなかった。悪いのは人のことを悪く言う人たちなのに、何故、それから逃げた俺が攻められなければいけないのか?
俺は何回も母に訴えた。今、仕事してるときはなにも言わないのにそのときは嫌なほど八つ当たりされた。
ハードな仕事をしてたのもあると思うが、俺だって一生懸命
やってるんだ。少しぐらいのニートだって許してほしい。
俺がこう考えてるとき、誰かが話しかけてきた。
「また、くだらん悩みか? 私が褒め称えといたのにまた、
同じことばっかりやって。」
そこには、黒いへそだしのタンクトップに青いショートパンツ、
黒髪のストレートヘアーのスタイルのいい女性がいた。
「女神さんっ! 何で!」
この人……人って言っていいのかわからないが、どうやら昔から俺のことを見守ってきた神様だという。
だが、神様が本当にいたのであらばもっと早い段階で
俺を助けているはずだ。俺は半信半疑で彼女の言うことをとりあえず信じ、女神さんと呼ぶことにした。
「というか女神さん! あの時、俺のことはもう安心だと言って
どっか行ったんじゃないのですか?」
「私はあの時、今のお前なら大丈夫だと確かに言った。だが、
今回来たのは……」
「来たのは?」
「暇だからだ!」
堂々とそう言った女神さん。はぁ?アンタ、60憶人の面倒自分が見てるといい、普段は人前で姿を現せないアンタがなぜそんなことを言ってんだ?確か俺にはそんなこと言ってたぞ!
そう俺が思ってるなかペットボトルのお茶を飲んでる女神さん。
……って、それ、俺のじゃん!
「ちょっと!女神さん!それ、俺のですよ。なぜかってに飲んでるんです?」
「夏だから喉乾いているのだ、いいのだろう。安心しろ、全部は飲まん。」
そういう問題じゃないですよ。飲むんだったら自分で買ってきてくださいよ!」
「私は神だ! 買いものはできん。それとも、私と間接キスするのは不服か?」
間接キスもなにも、あなた神様だから性別不詳でしょうが。
どうやら女神さんは俺の理想の女性の姿になり、俺のもとへやって来たそうだ。
でも、この容姿……綺麗だけど性格がちょっと……まぁ、でも
汗をかいてるセクシーな雰囲気に俺は少し、緊張してた。
神様だけどね。
「今、お前はどうやら母親のことに対しての不満があるようだな。何度も、訴えてるが、母親は過去の事として向き合ってくれない。
といったところか?」
と、すんなり人の心を勝手に読んだこの自称神様は、何をしようとするんだ今日は?そう思い俺は聞く。
「何か企んでません?」
「お前が、そんなことをずっと考えて、切りがないなら私が
その不満に対して決着をつけようと思ってな。
早速、おまえの母親に話してくるぞ」
「えっ!ちょっと、ちょっと!」
そう言い女神さんは嬉しそうに2階にあるこの俺の部屋から階段をつたってバタバタ下へ降りてった。まったく……
一階の今でテーブル越しに、俺と母さんが向かい合い、その間に女神さんが座ってるという状況になった。緊張する〜
そして母さんは聞く。
「幸太。この人は?」
俺が説明しようとすると、女神さんが礼儀正しくこう言った。
「はじめましてお母様。私、以前、幸太さんの仕事場でお世話になっていた神代マリアと申します。幸太さんにはいろいろとお世話になっていたのですが、幸太さんが悩みが多く、私が何とかしないとと思い、本日このように話し合いをしようと思い、こちらへお伺いしました。」
と偽名を使い、いつもより若干高い声で自己紹介する女神さん。
えっ?アンタ誰だよ!さっきまで俺に話してた時は横暴だったような気が……まぁいい。いいのはいいのだが母さんの表情が
少しおかしい。いつもだったら母はこんな時、知らない人を家に連れて、自分の家のトラブルに他人を巻き込み家に恥をさらすのかと言うと思ったが、微笑ましくこちらを見て。
「そう。これからも幸太をよろしくね。」
絶対なにか勘違いしているよ!交際相手と思ってるのかな?
天然なところあるからな。母さんは、
そして、俺は以前、母にいった以下の件を箇条書きにした。
・学校行かなくなってからヒドイことばかり言った件。
・塾に少しでもいかないと怒る件。
・高校時、バイトをせず家でレポートを書いており、家でのんびりしてた件。
・高卒後、父が倒れても、すぐにバイトをせず2年間ニートをしていた件。
・働いてから態度が急変した件。
俺は、自分はなにも悪いことしてないのに、なぜこのようなことで怒るのかを指摘したが、二人は明らかに人を批判するような目で見ていた。
えっ、何で?悪いのは俺を追い詰めた人が悪いのであって
俺は何も悪くないんじゃないのか?
俺は被害者。だから、擁護するのが当然ではないのだろうか?
その訴えをずっと母親にしていたのに受理されず、八つ当たりによる批判しかされてない。
そう言った、俺が思ってると、二人はこそこそ話をし。
(お母様も大変ですね。お二人が大事に育ててきたお子さんが
こんなわがままになって。)
(そうなのよ。最初はただ素直でいい子だったのに、途中からなにもしなくなってね。)
おい聞こえてるぞ。誰がわがままだ!俺だって好きでニートしていた訳じゃないんだぞ!周りがいけないんだよ。周りが俺のことを批判したり、いじめるからいけないんだ。
俺がそう思ってると、母さんは
「幸太。夕食の準備をするね。」
そう言い母はテーブルから立ち、女神さんはヘッドホンをつけ始めた。
「ちょっと二人とも! 俺の話は? 今日こそ聞いてもらいたいんだけど、何故あの時、俺のことを責めたのかをはっきり聞きたいんだけど。」
それに対して母さんは
「幸太。その話5回目よ。私が悪かったっていったじゃない。
あんまり長話してると、すぐに夕飯になるから準備させてもらっていい?」
俺はいつものようにあっけなく返す母に話すのをあきらめ、
女神さんの方を見た。すると女神さんはヘッドホンで音楽聞いて
歌っていた。……ってそれ賛美歌じゃん。何、自分で自分を賛美してんの?
そんなマイペースな二人に話しかける俺だが、二人ともまともに話を聞いてくれない。
そんな時、女神さんが手招きしてきた。
俺は女神さんのそばにきて、女神さんは一旦ヘッドホンを外す
そして小声で俺と女神さんが話す。
「どうやらお前の悩みはお前の母にとっては小さい悩みみたいだな。いや、そもそも悩みとも思ってないようだな」
「悩みと思ってる訳ではないのはわかってる。母さんにとっては
過去の事と思ってるんだが、俺にとっては違う。あれからもう15年近く立つが、俺にとっては現在進行形。14歳のままで年をとらず、外見や社会上では30手前となっているだけなんだ。
いつも母さんは怒ることはない。だが、自分の思い通りにならないことがあると俺にすぐ八つ当たりになる。
そんな都合のいい怒り方。俺は許せないんだ。」
「相変わらず、お前はわがままだな。いいか?幸太。この世は理不尽なんだ。クソみたいな現実が待ち受けてんだ。そんなことで人生詰むのは自分が馬鹿を見るだけだ。第一お前のことを本当に嫌いであれば、
ここまでお前のことを育ててないと思うぞ。」
「そんなことはわかってますよ。でも、許せないものは許せないんです。
あなたが神様だったらなぜ、理不尽な世の中を作るやつを裁かず、何故被害者を助けようとしないんですか!?」
そう俺と女神さんが話してると、母さんが
「幸太! お父さん起こして!」
俺は母さんに呼ばれ、ベッドで横になってた。父親の起床介助を行った。
父親は俺が高校卒業の頃に病で倒れた。後遺症で脳梗塞を発症し
左側が麻痺である。だが、リハビリのおかげで右手、右足は動くようになり、短い時間だが、立つことができるようになった。
「幸太、相変わらず乱暴だな。」
いつも父親は俺がベッドから起こすときこのように文句を言う。
俺は、いつも通り父親を車イスに乗せ、女神さんの座ってるテーブルに誘導した。
「幸太、お客さんか?」
いつの間にか携帯ゲームをプレイしている女神さんを見て父が言う。すると、女神さんはゲームを一旦やめて
「はじめまして、お父様。私、幸太さんに以前仕事お世話になった神代マリアと言います。」
「はじめまして。さっき少し聞こえてたよ。いろいろ大変だけど、幸太をよろしくね。」
と父さんは返す。父さんはかつて生真面目だったが脳梗塞をおこしてから少し頭が緩くなってしまったんだ。
かつての父さんが今いてもこういった台詞を言うものだろうかと
俺は思った。
そして母さんの手料理がテーブルの上にぎっしり置かれた。
母さんはいる人数に対し、かなりの数の料理を用意する。
まぁ、父親の希望もあるけど。
焼き肉、焼き魚、ポテトサラダ、シチュー、シュウマイ、菜っ葉と於いてあった。
俺たちはいただきます。といい食べる。そこには、女神さんもいた。というかどさくさ紛れにご飯食ってるし、俺の悩みを相談しに来たのではなく、飯食いに来たのかこの人は!
「お母さん。このご飯美味しいです。こんなに美味しいのは初めてです。」
と見え透いたお世辞をいってる女神さん。そこで母さんは
「ありがとう。神代さんは普段料理作ってるのかしら?」
「いえ、いつもコンビニの弁当だったり、召し使いに作らせてます。」
「あら、じゃあ神代さんって金持ちなの?」
「まぁ、それほどではないんですけど、よく周りからは雲の上の人だとか、世界全体を見回せる家にすんでるとか、12人の召し使いと、何万人もの親戚がいるとか、まわりのみんなに話を無駄に広げられて困ってるんですよ。」
「まるで神様だな」
父親が女神さんの返しに笑いながら答える。
冗談に聞こえないのが恐ろしい……
俺たちは夕食を食べ終わった。結局話を今日もうやむやにされてしまった。
「では、私はこれにて。」
「えっ! 帰るんですか? 女神さん!」
「当たり前よ。ここで泊まるわけには行かないでしょ。」
「いいわよ泊まっても。私、お父さんと寝てるから一つ部屋空いてるわよ。」
「有難うございます、お母様。ですが、幸太さんやご両親に面倒はかけたくないのでこれで私は失礼します。」
女神さんは帰っていた。
俺は自分の部屋に戻って電気を消し夜空の星を見ながら寝っころがり考えていた。やはり、俺の過去をむしかえし、怒鳴り付け、親に間違いを指摘してもらうのはまちがったことなのだろうか。
やはりの俺の考えていることは無駄なことなのか?
「何くだらないこと考えてんだ? 幸太?」
「えっ! 女神さん! どうして!」
「夕方言ったことと同じことを言うな。」
だって女神さん。行きなり現れてビックリするよ。しかも俺の隣で寝っころがてんだよ。
「さっきはお前の母さんに怪しまれたくなかったからすぐに帰ったんだ。だが、お前はまだ納得いってないのであろう。」
「女神さんにはさっき話したじゃないですか? 俺が言いたいのは母さんに直接訴えたいんです。長らく一緒にいた母さんにわかってほしい。学校に行かなかった理由が不良だらけの訳のわかんない中学でどうして言いかわからず。バイトだって母さんが勉強しろとか働けというのを場の空気でコロコロ変えたりして、それが嫌だったんだよ。」
「だとしても、お前の言ってることは全て過去だ。誰も思い出すこともできない。お前がバカを見るだけだ。この家族は本当にいい家族だ。確かに父親は病気もあり、裕福ではない。だが、他の家族はもっと子を呼びつけしたり、あんなしっかりした料理は作らないぞ。この家族は愛のある家族だ。お前はそれを誇ってもいいくらいだ。
世の中にはもっと大変な家族もあるからな。お前の親もお前が不登校になり、大変だっただろう。だが、それ以上の悩みを抱えてる家族もいるから今あるものを大事にしてほしいんだ。」
と女神さんは綺麗言を言う。そんな事誰でもわかってる。
だが、それに気づいたときはもう遅いんだ。
俺は女神さんに聞き返す。
「じゃあ、父さんは何故、病気になり、障害をもったんです。
神様ならそれを回避できたんじゃないんですか?」
「あれは、お前の父親が望んだことだ。お前の父親は家族のために身を粉にして働いていた。
自分が死ぬかもしれないとかネガティブなことを考えつつ働くしか方法がなかった。
お前の母もそうだろう。金が足りなくなり、理不尽な職場で働いていて、お前に八つ当たりをしていた。
全てがお前のためにやってたことなんだ。
お金がない中、全てはお前のためにして、そして病気になった。
お前がもっとしっかりし、親が倒れる前に何とかしようとすれば
それは回避できたはずだ。」
こう言う女神さんだったが、俺はこう言った。
「やろうとしましたよ! 俺だって母さんや父さんのために。
でもいくら何やっても努力してないって母親に言われ、
勉強して大学いこうとしても、そんな事よりも働け!と怒鳴ったり、働こうとしても履歴書の書き方がわからず、電話もできず
結局はパフォーマンスだろとか、やる気もないのそんなこと言うなとか。俺は大学行ったりしたり、バイトすれば母さんに認められると思ったんだ。
学校休んだのだって母さんに俺の気持ちをわかってほしかったからだ。
そうしようとしてるにも関わらず、努力してないと勝手に決められ、全てやる気がなくなった。
周りの生徒も学校休むことを批判していたが、人のことを平気で笑ったり、だらしない格好しているあいつらが、真面目と言えるのか! 俺は、真面目でないあの悪の巣窟から脱出しただけなんだ! 俺は被害者なんだぞ! 被害者である俺が何故、否定されなきゃいけないんだ!」
こう俺が言うと、女神さんは
「前もいったはずだ。それぐらいハードにしなければ、
お前の場合は他の人よりハードにしないと駄目だと。
いいか? 幸太。お前は母親が死んだらどうする。
そう全て母親にたよったって、先に死んでいくんだぞ。」
「それは……わかってるよ。」
「本当か? 実際事が起きたら、どうしていいのかわからないとお前は騒ぐと思うが。」
「恐らく、自殺するかもしれない。母さんがいないと俺は生きていけない。父さんがああなんなければよかったのに。」
「もし、お前がホントに自殺するのであればお前はそれまでの男ということだ。お前がどれだけわめこうが、時は進み、皆歳をとる。お前は過去にとらわれ、周りの言ってることにふりまわされ結局変わらない。ただそれだけの話で終わる。
変わるためにはきっかけという刺激が必要だ。
私はそれを偶然に見せかけて行っている。」
「じゃあ、お父さんはその刺激の一つなんですか?」
「そうでもしないと、お前はなにもしない。人との別れや死、
そういったネガティブなものもきっかけとなる。
現にお前は動いたであろう。」
この言葉に俺は反論できなかった。だが、俺の言うことは正論だ。この事を母に伝えわかってもらえなければいけない。
そして女神さんはこう言う。
「お前が自ら伝える必要はない。明日になればわかる。」
そういい、女神さんは窓から飛び降りどっかへ行った。
俺は寝た。
次の日俺は母さんにおはようと挨拶し、いつもつくってもらってる弁当を持っていった。俺は、
「いつも弁当作ってくれてありがとう。」
「どうしたの? いきなり。」
「いや、いつまでも母さんの弁当が食べれるわけじゃないと
思うと」
「そんな事考えんじゃないの。弁当作るのは当然のことだから。」
「昨日はごめん、俺、母さんが今まで育ててきたのにそんな事なにも知らないで自分のことばかりいってたから。」
「いいのよ。私もカッとなってあなたのことわからなかっただけだから。ほら、早くしないと遅れるわよ。」
「ありがとう。母さん。」
そして俺は出かける。すると、頭のなかで誰かがこう言う。
「幸太。母さん少し、申し訳ない様子だったろう。実は昨日の話全て筒抜けなのだ。私の頭と母さんの頭を同期し、お前の話が聞こえるようにしといたのだ。」
この声は女神さんだ。
「えっ、てことは昨日のことは。」
「全部聞こえてる。」
「だから! 女神さん余計なことしないでよ!」
一人叫ぶ俺は仕事に向かった。
シリーズ二弾目。
読んでくれてありがとうございました。
このシリーズは気まぐれで書いてくので、
更新が途絶えることもあると思いますが
よろしくお願いします。
気まぐれでまた続編書くかも。