現状把握
投稿が遅くなりすみません。色々と修正しました。
まず飛び込んで来たのは青空と綿雲、そして大岩、大空に浮かぶ無数の岩、隕石群と言うべきモノが存在した。もしも土星の空を見たらこんな光景が広がっているだろうと思える光景だった。
やがて視線を下げると、長い年月放置され崩れた高層ビル、雑草が生え放題のヒビ割れた道路――ゴーストタウンに呼ばれてもおかしくない廃墟が目に映る。
「「「「……………………」」」」
白夜や他の皆は遺跡の出口からその光景に見て、ポカンと口を開けて立ち尽くす。
そんな自分達にダリアが微笑を浮かべ、
「皆さん、景色を見とれるは良いですが、まだ、ここは危険地帯ですから」
息を吸い腹に込める。そして吐き出すと同時に、
「足を止めないぃぃぃぃぃぃっ!!」
鼓膜が破れそうなくらいの叫びが周囲に轟いた。
「「「「はいぃぃ!?」」」」
一喝。まさにその一言で皆の意識は現実に引き戻された。そして目に映ったのは――周囲にいた騎士達が慌ててダリアの元に集まり………叱っている光景だった。
「「「なにやってるんですか姫様っ!?」」」
慌てた騎士達がツッコミ。リュブールを筆頭に騎士達は矢継ぎ早に説教する声が飛んでいく。
「警戒している側から大声出さないくださいよ!」
「魔物達が集まったらどうするんですか!?」
「――聞いてるんですか、姫様!?」
腕を組み目を閉じたダリアは泰然自若していた。
しばらくして説教が終わると、一気にカッと目を開き、
「皆、すまん! つい新兵のノリやってしまった。――だが後悔はない!!」
「「「「ひめさまーーー!!」」」」
清々しほどのキメ顔を作るダリアに、騎士達は一斉にツッコんだ。
白夜はそんな様子を眺めていると雪妃が、ダリア達に近づく。そして冷めた眼差しを向け。
「コントはもういいか、早く移動しましょう」
バッサリと場の空気を切り捨てる。彼女の目から逃れるためか、ダリアは咳払いをした。
「ううん! ……そうだな、歩き続けいたから疲れただろう? よし! ジルのいる野営地まで案内する前に、目の前の広場で少し休憩するぞジャン!?」
「そ、そうですね姫様!? ジルバートと合流する前に一休みしましょう! いいな、お前達!」
「「「りょうかいです副隊長!?」」」
ダリアの提案に乗り騎士達を連れて広場に。
そこは、かつて癒しの空間だったんだろう。しかし、今は手入れされず荒れ果て、所狭しに雑草や野花がまばらに生えている場所だった。
そんな荒れた広場に全員が移動すると、ダリア達はきびきびと休憩の準備を始める。
◇ ◆ ◇
離れた場所で雪妃はその様子を見届けると、自分達に手招きをする。
手招きを見た自分達は彼女の元へ向かう。
全員が集まると雪妃は真面目な顔で、
「さて、ようやく外に出られたわね」
「おいこら委員長! なに、さっきやったことを無かったことにして話し始めてるんだよっ!?」
何事もなく話を進めようとする雪妃に、直樹は怒鳴りながらツッコんだ。
「何か問題でも在ったかしら?」
そのツッコミに対して、不思議そうに雪妃は首をかしげる。
「いや、ねーよけどよ。………そんでなんでオレら、集めたんだよ?」
「そうね、取り敢えず今まで集めた情報を共有しようと思ったの。ねぇ、天城君?」
直樹の疑問に対して雪妃は集めた目的を述べた後、白夜に視線を送り、
「いぃ、ぼ、僕!? 委員長、なんの理由で?」
名指しで視線を向けられ白夜は理由も分からず狼狽えた。
そんな自分に、雪妃は不思議そうに指摘する。
「天城君、ダリアが説明されていた時、居なかったでしょ。他の人と話しているのを見ていたの」
「まあ確かに、リュブールさんと話をしていたよ」
その場にいなかったことを肯定し、白夜はあの時の話に物思いに耽る。
「だから、情報共有して示し会わすの。だから、先に天城君からお願いするわ」
「分かったよ。じゃあ、まず………」
白夜はリュブールから訊いたこの世界――ミルトスについてを皆に伝えた。
二千年前に起きた終幕大戦と大崩壊のこと、遺跡や魔導具に関してこと、魔物や魔獣の違いのこと、大陸や海にいる存在のこと、女神や鍵のことを話す。
大体、数十分ぐらいで語り終え、聴いた皆はそれぞれ感想を述べた。
「大体、このくらいしか知らない参考になったかな委員長?」
「ええ、とっても参考になったは、まさかこの遺跡が二千年以上前の建物とは……確かにSF映画に出てきそう形しているわね」
雪妃は遺跡に関して興味を示し、ドーム型の第二遺跡《知恵》を眺める。
「それよりも、まさか海が渡れねえとか、どうやってバルクとか言う大陸に行くんだよ?」
両手を頭の後ろ組んだ直樹は海を越えることを疑問を抱く。
「滅んだ高度な文明と遺産技術。まさにロストテクノロジー、男のロマンを感じる!」
「うあ~!? またオタ吉は、鍵とか言うモノがないと只のガラクタでしょ!!」
秋吉が目を輝かせ夢見がちことを呟く。すると、そこに桃子が馬鹿にしながら現実的な事を指摘する。
「はあぁ~~やれやれ、これだからロマンもわからないギャル子は?」
それを聞いて秋吉は溜息を吐いて、桃子を小馬鹿する。
「はああぁ!? 何がロマンよ、今どきそんなのキモいだけでしょ! 現実を見ないよオタ吉!」
「ロマンのどこが悪いんだよギャル子!」
桃子の態度にキレて二人は口喧嘩を始め、今にも取っ組み合いしそうな勢いだった。
そこに、和馬が慌てて間に入り、二人を止めた。
「やめないか君達! 今は俺達の今後に関わることを話し合いしているだぞ! それにそんなくだらんことで騒いだら魔物っていう奴に襲ってくるぞ!」
「「っ!?」」
和馬の言葉に反応して口喧嘩をやめ、秋吉と桃子はお互いに睨め合い、そっぽを向く。
「「ふん!」」
「ふふふ♪」
しばらくすると顔を背ける秋吉と桃子、その様子を見ていた蓮花が口に手を添えて微笑えんでいた。
それに気が付いて桃子は微笑む蓮花に食って掛かる。
「なに、笑ってのよ、お嬢さま!」
「ふふふ♪ ごめんない石田さん。知らない場所なのにいつも通り仲が良いから、つい」
「「仲良くない!」」
ほぼ同時に反論する。秋吉と桃子は互いに顔を見つめる。
「ほら、息ぴったり、喧嘩するほど仲が良いらしいよ」
「「ちがう!? ――あ!」」
「ふふふ♪ 本当に仲良しさんだね二人は」
また、同時に言葉を被る秋吉と桃子。口に添えて微笑えむ蓮花に、苦虫を噛む二人。その時だった。
パンパンと手を叩く音が周りに響き、
「「「!?」」」
三人が音の方へ振り向いた。そこには。
「はいはい、お暑いことで。……そろそろ話を戻しても良いかしら?」
呆れ果てた顔の雪妃が三人をジトっとした目で眺めいた。
「「ちが!?」」
「それ以上やると墓穴を掘るだけよ」
「「……………」」
ジト目の雪妃の指摘に、図星をつかれように黙る秋吉と桃子。
そんな二人を確認して雪妃は、白夜に顔を向ける。
「まあ、天城君が知ってた情報もダリアが話してくれた事と大体同じね。違いがあるとすれば遺跡や海のことはそう詳しく聞いていなかったけど。一つこっちが多いくらいかしら」
「一つ? 僕の知らない情報があるの?」
どうやら雪妃達は、自分の知らない情報が知ってるらしい。
白夜は真剣な表情で、腕を組む雪妃を見つめ、
「それで委員長。僕が知らないその情報ってのは?」
「……私達がこの世界に召喚された理由よ」
「凄い重要なことだね!?」
「ええ、そうね。……はあ~」
と、目の前で溜息をつく雪妃。
そんな彼女を不思議そうに眺め白夜は、
「……なんで溜息なんてついているの委員長?」
そう問いかける。すると、雪妃は不機嫌そうに顔を歪めた。
「溜息つきたくなるわよ! 加藤君いわくテンプレ展開だそうよ」
「ええ!? まさか!」
ファンタジーのお約束を予測できた白夜は、そんな彼女を二度見する。
「ええ、そのまさかよ。魔族と言う人達がエノク大陸に攻めてきたらしいわ」
「そうなんだ。でも、どうしたの委員長? なんで怒ってるの、凄く怖いだけど!」
段々と顔を歪めていく雪妃に白夜は素直に答えると、彼女にドスの効いた声で睨み返された。
「あん?」
ゴゴゴゴゴゴゴ………!
背後に業火に燃える炎の幻影ともに。
「「「ひぃ!?」」」
様子を伺っていた白夜達は一斉に悲鳴を上げた。
そんな皆の反応も気にせず雪妃は憤りの理由を告げる。
「怒りたくもなるわよ! 例の魔族に関する情報が凄い曖昧なんだからっー!」
「そ、そんなにひどいの!?」
白夜の側にいる和馬と直樹の顔を見る。二人は同時に頷く。
「正直、話を聞いても魔族が人類と戦う気あるのか? と思うぐらいだった」
あの正義感の強い和馬ですら、戸惑いながら教えてくれる。
「いや、戦うとかマジで無理だろう! なんせ一人で一万の軍勢を滅ぼす奴にどうやって戦えってんだ! オレらに死んでこい言ってるもんだろッ!!」
イラついた声で会話に割り込んだ直樹は地面にペッと唾を吐く。
その言葉を認めるように雪妃は頷いた。
「福島君の言う通りね。取り敢えずダリアから訊いた魔族が攻めて来た時のことを話すわ、ことの発端は五年前―――」
◇ ◆ ◇
大空洞。エノク大陸の最東端にそう呼ばれる遺跡が存在した。そこは外海を渡る術がない人々にとて、バルク大陸と繋がる唯一の地下通路である。
そこはオルレアン王国の領地でもあり、当時はただの魔物の住処だった。
だが、今から五年前、突如と大空洞から〝大氾濫〟と呼ばれる災害が発生した。
〝大氾濫〟――魔物達の生態系が何らかの原因で大きく崩れた時に発生する災害であり、普段は滅多に起きない魔物災害だった。
しかし、この時に起きた大氾濫は過去に類を見ない程の規模で、王国側も予想以上だったそうだ。
当時、王国騎士団の全戦力でも足りなく西にある同盟国、プロテスト教国に救援を求めるほど危機的な状況であった。
救援から数週間後、ようやく教国の援軍を得た王国は騎士団を二つに分けた。
一つは、ダリア達――王国騎士団が当時、魔物達の被害が多い場所に向かい。
もう一方、シャルマ王太子率いる騎士団が原因を調査するため大空洞へ、別々に行動したそうだ。
そして原因究明にきたシャルマ王太子率いる軍が、大空洞の付近で魔物達と戦っていた。その最中。
◇ ◆ ◇
「そこで魔族が現れたの?」
白夜は雪妃の語りから魔族の存在を確かめる。
「ええ、その通りよ天城君。当時は魔族の存在自体、半信半疑で国の記録でも百年前、此処がまだ別の国だった頃に傲慢の魔王と呼ばれる魔王が現れたくらいしか、記録が残っていなかったそうよ」
しかめ面を作りながら雪妃は教えて貰った内容を自分に伝えた。
それを聞いた白夜はふと、疑問に思ったことを雪妃に訊ねる。
「〝別の国だった〟って事は、その国は現在はないってことだよね委員長?」
「そうらしいわ。なんでも国との戦争で滅んだそうよ」
「……え、魔王に滅ぼされたんじゃなく?」
「ええ。ダリアの話だとその国が持つ戦力と魔王が戦い、多大な犠牲を払って魔王を倒したらしいわ……それ以外分かっていないけど」
(……随分と曖昧な言い方だな)
そう考え込む白夜に、気にするな手を振る雪妃。
「まあ、その辺の記録はこの国との戦争で解らなくなったそうよ。じゃあ続きを話すわ」
◇ ◆ ◇
大空洞から五人の魔族が戦場に姿を見せ、五人の魔族のうち一人。
銅色の宝石が付いた片刃の深紅の大剣を持つ赤い長髪の女性が前に出る。そして彼女は戦場を見渡し、片刃大剣を構えて――
「焼き尽くせ憤――」
紅の炎を刀身に纏せる。そして騎士団や魔物達がいる戦場目掛けて暴力的な力を秘めた横薙ぎを放つ。
剛剣一閃
「『地獄―――――――」
放たれた紅炎を纏った豪快な一閃。
ブオォーン、と風切り音と共に鼓膜を破る爆発音が戦場に鳴り響く。
業火繚乱、紅炎を纏う斬撃。業火の濁流を撒き散らしながら騎士団と多くの魔物達諸共飲み込む。万の軍勢を悉く屠り全てを焼き尽くす焔。
辺り一面、炎の熱によって大地は溶け、炎の地獄を生み出した。
その戦場にいた約一万以上の軍勢は灰すら残さず全滅。
この時、その惨状で運良く助かった部隊がいた。戦場外で奇襲を仕掛けるはずだった別働隊である。
生き残った別働隊はその惨状を唖然と見渡した後、急ぎ戦場だった場所から撤退。
その後、王都へ帰還した別働隊は、戦場で起きた出来事を報告したそうだ。
◇ ◆ ◇
雪妃に話を聴き終え、唖然する白夜の身体から脂汗が止まらなかった。
「い、一撃で一万を屠ったぁ! どんな化け物なのその魔族!?」
自分のそんな姿を見ながら雪妃は衝撃的の事実を告げる。
「……後で分かったらしいけど、天城君その魔族は憤怒の魔王だったらしいの」
「はあ、魔王!? じゃあ委員長、今もその憤怒の魔王はこの国に攻めて来てるの!?」
驚きながら白夜は国の現状について質問した。雪妃は不機嫌な表情を作り、
「その時の戦い以降、何もせず大空洞に帰っていたそうよ」
「成程、だから曖昧なのか」
と、頷く白夜は「じゃあ」と問いかける。
「この五年間は平和だったってことなの委員長?」
「魔物や魔獣の被害が多いけど、魔族を目撃したって報告はないらしいわ。……ただ」
「ただ?」
白夜の目の前で、雪妃は表情を曇らせ、
「その時の戦いでシャルマ王太子が戦死したそうよ。そのせいで息子を溺愛していた国王が復讐に取り憑かれ、仇である魔王を殺すためにバルク大陸に無茶な遠征を行い続けたらしいの。だけど、その都度失敗し、現在はその遠征失敗の影響で……この国自体が傾き始めてるそうよ」
「それが委員長が怒ってた理由か……」
オルレアン王国の現状に、雪妃が怒り心頭な訳を理解する白夜。
(……でも、この情報って僕達が知ってしまっても良かったのかな?)
普通、自分達に都合の悪い情報は伏せているものである。
そうした方が相手を利用しようとする際には何かと都合のいい筈だ。
なのに、何故ダリアは自分達にこの情報を教えたんだろうか。
「なんでダリアはそのことを話したんだろう? 僕達を勇者して協力させたいなら、その……教えない方が都合が良かったんじゃないの?」
白夜が心配そうに訪ねると、雪妃は「ああ、それね」と淡々と事実を答えた。
「ダリアは元々勇者召喚に反対派だったの。〝復讐の為に関係のない者達を巻き込むのは間違ってる!〟って感じにね。それに天城君、覚えている? 初めてダリア達に出会った時の出来事」
「それは覚えてるよ。ついさっきのことだよね」
と、さっきほどの出来事を思い出す。
剣を構えた騎士達に囲まれる自分達。すぐに忘れる事ができない体験だった。
………あ! と白夜はその光景で気付いた事を雪妃に言った。
「も、もしかして僕達、意図した召喚じゃなかったってこと!? そうなの委員長?」
その答えに雪妃は少し沈黙した後、頷き肯定する。
「………半分正解よ。ダリア達は国王に何かしらの条件を飲んで、この遺跡に来たそうよ。此処は元々危険な魔物達が生息する危険地帯で、王国でも精鋭しか来れない場所らしいわ」
ふぅ、と息を整えた雪妃がゆっくりと口を開く。
「それに本人達も勇者召喚なんてできるかどうか半信半疑だったらしいわ。教会に教えられた方法で遺跡にある祭壇にアークを使って起動させたそうよ。何かあってもすぐに対応できるように備えてね」
「アーク? ………もしかして鍵のこと委員長?」
自分の知らない言葉に、白夜は首を傾げながら質問した。
「そうよ、一般的に人類が所持してる七つの鍵――通称アークと呼ばれているの。残りの七つがレガリアって呼ぶらしいわ」
「へぇぇ、あ! だからあの時、ダリア達は予想以上って言ってたのか」
「そう言うこと。つまり、私達はそんな理不尽な理由でこの世界に召喚されたの」
そう言うと雪妃が、疲れたというように親指でこめかみを揉んだ。
そんな時だ。
「皆さん! 休憩の準備が出来ましたのでこっちに来てください」
タイミングを測ったかのようにダリアは声をかけながら近づいてくる。
白夜は声の方に視線を向けると、笑みを浮かべていたダリアが急に顔をしかめ、腰の長剣――魔導具《ゲオルギウス》を抜いて突っ込んできた。
その光景に理解できず自分達は戸惑いながら見つめた。すると、ダリアは《ゲオルギウス》で鋭い突きを放つ。
――白夜の顔に。
悲鳴を上げる暇もなく迫り来る凶刃が……自分の耳の側を通り過ぎた。
あと二センチずれたら……。
ブルンッ、と想像した白夜が身震い起こす。
「キイィィィィィ!?」
だが、すぐ後ろで動物の悲鳴が聞こえた。
ぎこちなく振り返ると、《ゲオルギウス》の刃先に顔面を貫かれた灰色の毛皮を持つサル。それが今にも白夜を襲い掛かる体勢で絶命していた。
「ヒィィ――グゥ!?」
と、白夜が悲鳴を上げる暇もなくダリアの左手で服の襟首を掴まれ。
「ジャーーーン! 受けとめろろぉぉぉぉぉ!!」
どこにそんな力があるのか、白夜を片手の腕力だけで後方に離れた――リュブールの所に投げ飛ばす。
「わあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「何をしているお前達!! ジャンの元へ走れれれぇぇぇぇ!」
白夜を空に投げると同時にダリアは石像ように固まる和馬達に、辺りに響く怒声を上げた。そしてそのまま、いつの間にか現れた灰色のサルの群れに踏み込み斬りかかる。
「「「キイィィ!?」」」
扇状に並んでいる五匹の灰色のサル、その真ん中の一匹に瞬時に踏み込み。
岩を切るように《ゲオルギウス》を振り落とし――
真っ二つに両断する。
そして、ダリアは素早い返しで、右の灰色のサルを脇から右肩かけて薙ぎ払う。その勢いを殺さずに、そのまま右にターンしながら――
二匹のサルに、疾風の速さ剣を放つ。
二匹の首と血が飛ぶ、と同時にしゃがみ弓の引くように一歩前に踏み込み――
紫電の突きで最後の一匹、その顔面を貫いた。
「………………」
貫いた最後の一匹が死んでることをダリアは確認すると《ゲオルギウス》を抜き、血を払いながら此方に走ってくる。
空中で縦回転する白夜はその光景を眺めていると、落下地点にいるリュブールが持っていたモノを地面に置き、受け止める体勢を取っていた。
そして白夜は、リュブールに背中から受けとめられた。しかし、
「いったぁぁーー」
「ぐあぁぁぁ!?」
ガシャッ、と金属音が鳴るとともに、自分の臀部に激しい痛みを感じ悲鳴を上げた。同時にリュブールが白夜を受け止めきれず、後ろへ――
見えていた景色が、一瞬で青い空から廃墟に変わった。次の瞬間。
「――フゴッ!?」
ドンッと背中から強打。地面の感触と衝撃が身体に伝わり息を詰まらせる白夜であった。
◇ ◆ ◇
「す、すげえぇ」
刹那の時間、ダリアの踊るような剣さばきに見とれた直樹は自然と口からその言葉が漏れた。
すぐ近くの和馬達も同感なのか黙って頷いた。
その時だ。
「いったぁぁーー」「ぐあぁぁぁ!?」「――フゴッ!?」
モノをぶつかる金属音と悲鳴が俺達の耳に聞こえた。そちらに振り向く。
そこには地面に倒れたリュブールが、白夜にジャーマンスープレックスをかけた――二人の姿があった。
「「「「………………」」」」」
あまりの光景に無言になる俺達。すると横から戻ってきたダリアが、白夜達のその姿を目撃。――数秒、固まった後、身体を震わせたダリアが、
「きさまらぁああああああーッ! こんな時に何を遊んでいるぅぅ!!」
崩れ建物から小さな瓦礫を落ちる程の大きな怒声が周囲に響き渡る。
ダリアの怒声を聞き白夜達は慌てて転がり立ち上がるも、立ち上れずその場で弁明する。
「ひ、ひめさま!? 私やハクヤ殿は遊んでいませんよ!」
「その通りです! 元はといえばダリアさんが投げたせいでしょ!」
二人の弁明も怒り狂うダリアに耳には入らず、一歩ずづつ踏み込んで近づく。
ダリアのその姿は、まさにティラノサウルス。そんな迫力だった。
白夜は彼女の後ろにいる俺達に助けを求める視線を送る。
……いや、無理だろうこれ。
と思い俺は他の奴らと一緒に、ムリムリと首をブンブンと左右に振った。
そんな絶望的(?)な状況を救ったのは、
「ウオォォォォォォーーーン!」
「「「!?」」」
近くの崩れた建物から身長三メートル以上のある灰色のマントヒヒに似た魔獣が雄叫び上げながらドラミングをする。
「「「キキィーー!!」」」
それを合図に灰色サルの群れが現れて広場を包囲した。