異世界召喚
今回、主人公と一緒に召喚されたクラスメイトが詳しい姿で登場です。
光の瀑布呑めれた時、白夜は咄嗟に左腕で覆い目を閉じた。すると、しばらくして瞼から入ってくる光が段々と収まってきた。
それと同時に耳からざわざわ騒ぐ喧騒が聞こえてくる。
(……なんだろう? 聴いたことがない人達の声が聞こえる!?)
廊下に居たのは、言い争っていた男子生徒三人と女子生徒三人。そして白夜を合わせた七人しか居なかった筈だ。それなのに周囲から複数の声が聞こえる。
状況が分からず辺りを確認のため、白夜は左腕を下げ、ゆっくりと目を開けた。
そして周囲を見渡し唖然としてしまう。
まず目に飛び込んだのは無機質な白い柱、微かに光りを放つ金属ような柱が四方を囲むように存在し、壁や天井も同じ材質できているようだった。
天井はドーム状になっていて野球場並みの広さがある広間。
そんな大聖堂ような荘厳な雰囲気を醸しだす広間の中心に白夜達がいた。そしていつの間にか全身鎧を身に着けた数十人に、漫画に出てきそうな剣を構えて包囲されていたのだ。
「「ひぃぃ!?」」
状況に理解した白夜達。何人かは悲鳴を漏らす者、身構える者、状況を見守る者に分かれ、双方に緊迫した空気を漂わせた。しかし、それは長くは続かなかった。
小柄な男子生徒とギャル系の女子生徒がその雰囲気に耐えれず「ひぃ――」と二人が再び悲鳴をあげそうになる。その時、
「武器を納めよ、お前達ッ!!」
真横から凛とした力強い声が、緊迫した雰囲気を壊した。
慌てて白夜は声のした方を見る。
銀色の鎧、ウェーブかかったハチミツ色の髪、意志の強さ感じさせるマリンブルー瞳、凛々しさを纏った女性が彼ら包囲網の間から現れた。
「しかし姫様!」
「くどい! もう一度言うぞ。武器を納めよ、これは命令だ!!」
彼女に命じれた彼らはしぶしぶ剣を収めた。
騎士達のその行動を見届けた後、彼女はすぐに頭を下げた。
それを見た騎士達がまた騒ぐが、彼女に睨まれ沈黙する。
「……申し訳ございません勇者様方、こちらの予想以上の光景だったので、部下達が武器を抜いてしまいました。部下達の代わり謝罪します」
そんな彼らを眺めていた白夜達の中から一人の女子生徒が前に出る。
意志の強い凛々しい鳶色の瞳、スマートなスタイル、素朴な茶色のショートカット、その前髪にウサギをモチーフしたヘアピンを付けた特徴的な美少女――委員長が彼女と向き合い口を開く。
「……あの、あなた方、一体何者ですか? それに此処は一体どこですか?」
彼女の名前は宇佐美・雪妃。性格は真面目で、よくクラスメートから〝女傑〟と呼ばれるくらい肝が据わっているクラスの学級委員長だ。
「そうですね。初めから説明させていただきます。私はダリア・オルレアン。この国、オルレアン王国第一王女です。気軽にダリアと呼んでください、それであなたの名は?」
「宇佐美・雪妃です」
「ウサミ・ユキ、変わった名前ですね!」
素っ気ない態度で答える雪妃。ダリアはその態度を気にせず気軽に話し始める。
「それにその立ち振舞いや言葉遣い。もしや、ウサミは貴族なのですか?」
雪妃の堂々とした振舞いに興味を示し、ダリアは質問する。
「宇佐美が姓で雪妃が名前よ。あと、私は貴族でもなんでもないわ。それとダリア、こっちからも一つ質問していいかしら?」
「ええ、どうぞ」
「……フランスと日本って聞いたことありますか?」
「ふらんす? にっぽん? なんですかそれは?」
彼女になんのことか、分かっていない顔で見つめられる。
口に手を添えて思案する雪妃は淡々とした様子で尋ねた。
「………続きをお願いします」
そんな彼女の様子に察したのか、ダリアは続きを話す。
「分かりましたウサミ。ここは我がオルレアン王国の領土にある第二遺跡《知恵》と言う名の遺跡です」
「……遺跡ですか? ここが?」
そう言われ、雪妃は顔を上げ召喚された広場を見渡し、ダリアに振り向く。
「続きは移動しながらお話します。まだ遺跡に魔物が居ますので危険ですし、皆さん私達に付いて来て下さい」
「そう、ご忠告ありがとうございます。でも少し待って下さい? みんなと相談しますから」
ダリアの提案に対し、雪妃は警戒心を含む声で返事を介した。
「……まあ、当然ですね、分かりました。こちら少しやることあるのでその時までにお願いします。部下の何人かは護衛として置いていきます」
「そうですか? ありがとうございます」
その態度に、納得してダリアは三人の騎士を連れて祭壇のような場所に向かう。
離れていく彼女等を見届けた雪妃は、柱の中心地にいた自分達のもとに戻ってくる。
「………まだ状況が分からないけど? ここが日本や海外でもない事だけ解ったわ」
「いや、お前すごいな委員長! よく平然としゃべってこれたな!」
と、金髪に染めた虎刈り、獰猛な顔つきと焦げ茶色の瞳、ケンカ強さ感じさせる大柄の男子生徒――福島・直樹が感心したように雪妃を誉め――
「つーか、なんでフランスなんだよ!? 日本は分かるけどよ!」
芸人ようなノリツッコミを入れる直樹。性格は喧嘩っぱやく、クラスの不良生徒だ。そしてクラスでは、よく加藤と石田さんと一緒にいる。昔からの腐れ縁らしい。
「オルレアンっていうのはフランスある都市の名前。てっきりタイムスリップでもしたのかと思ったの?」
「だからお前、なんでそんなにも冷静なんだよ!?」
特に気にせず問い返す、直樹はさらにツッコミを入れられた。
「うん? 別に、言葉が通じるのだから外人と同じでしょ?」
何故と、雪妃は首をかしげて理解していないか平然と言葉を放った。
「「「「ちげえよぉぉ!!」」」」
男子達からツッコまれる。
「〝同じでしょ?〟じゃない雪妃! 周り居た武装した奴らが危なくなかったか、何かあったらどうするつもりだった!? 心配したんだぞ!」
茶色の短髪でポニーテール、ブラウンの瞳、優しさと頼もしさを感じさせる身体を持ち、正義感が強いイケメン男子が委員長を心配して叱りつける。
彼の名は上杉・和馬。宇佐見さんの幼馴染みで剣道部のエースらしい。
「大丈夫よ和馬。話してきて見た感じ彼女、信用できる人よ。それに周りにいた人達は蓮花の家の黒服と思えば割りと行けたわ。騎士みたいな感じだったし」
特に気にせず雪妃は素直に感じたこと伝えると、
「いや、見た感じまんま騎士じゃん!? と言うか相変わらずの女傑振りだね、委員長! 将来は大物になるよ」
鈍色のパーマヘアー、ダークブラウンの瞳、胡散臭い顔つき、小柄で身の軽さを感じさせる、ネクラそうな少年が皮肉を混ぜながら雪妃を褒めた。
そのネクラな少年――加藤・秋吉。
よくクラスで福島と石田さんにアニメや漫画、ゲームの話をするオタクの少年。
一応、本人はその事を隠しているつもりらしいので隠れオタクというべき存在だ。
ちなみに、毎回クラスでその趣味の事で腐れ縁の石田さんと衝突している。
「それ、褒めてるの? それとも貶してるの? どっちなの加藤君?」
その発言に雪妃は満面の笑顔を向ける。ただし目は笑っていなかった。
秋吉は身の危険を感じたのか、近くいた女性に話を振った。
「もももちろん、誉めているよ!? なあ、石田さん!」
「ちょぉ!? あたし関係ないんだから振らないでよ! 自爆するなあんた一人でしないよ!! そんなだからモテないのよオタ吉!」
背の低いギャルがキレて秋吉を指を差す。
着くずした服からでもわかる年相応のバランスをとれた体つき、アップテールした紅茶色髪、黄土色の瞳、あどけなさと小生意気なところが混じった顔が可愛さを引き立つ――その美少女の名前は石田・桃子。
見た目通りのギャル娘であり、家は雑貨屋らしく。そのお陰でオシャレにはかなり詳しいらしい。
「モテないのとオタクは関係ないじゃん!? これだからギャル子は!」
「はあぁ!? あんたが振ったんでしょこのオタ吉!!」
「だからッ、オタクは関係ないって言ってるじゃん! ギャ――」
秋吉が逆ギレして、桃子に言いがかりつける。そのまま二人は今の状況を忘れたかのように罵詈雑言し始める。
売り言葉に買い言葉、白熱する二人。すると、
パアァーーーン!!
と、皮を叩いた音が耳に届く。
「「ッ!?」」
秋吉と桃子はそちらを振り向くと、
ゴゴゴゴゴゴゴ………!
手を合わせた、冷たい満面の笑顔で青筋を立てる雪妃の姿があった。
「仲の良いことは良いんだけど……今は状況を考えてね?」
「「ひぃ!?」」
秋吉と桃子の二人仲良く悲鳴を上げた怯えた。そんな二人を憐れんで――
美しい濡羽色の長髪、意志の強そうな凛とした黒瞳、優しさと芯の強さ顔立ち。そして制服の上からでも解る程のビックバスト。クラスで上位に入るサイズだ。
そんな大和撫子と呼ぶにふさわしい黒髪の美少女が止めに入る。
「ユキちゃん、もうその辺で話を戻そうよ」
彼女がそう言いながら、青筋を立てる雪妃を宥めていく。
その美少女の名は小島・蓮花。名家のお嬢様で、しかもクラスのアイドル的存在だ。
ちなみに上杉と宇佐美さんの幼馴染みらしく。また、委員長とは親友でもある。
幼馴染みの蓮花に説得され、頭を抱えながら雪妃が深い溜息する。
「……はあぁ~~そうね! こんなことしている時間が勿体ないわ」
「勿体ないって……その時間を潰したのは委員長だ「あん~?」――言えなんでありません!?」
秋吉の皮肉に雪妃が即座に反応し睨み付けると、すぐに言葉を直した。
白夜はそんな六人のやり取りを微笑ましく眺めつつ、
「それで委員長、これから一体どうするの?」
「「「「えぇ!?」」」」
白夜が話し掛けると、皆は慌てて振り向き、驚愕したのだ。
「どうしたのみんな? そんなに驚いた顔して?」
少し疑問に思いながら、皆に問いかける。
「ええ!? なんで地味男が此処にいるんだよ!?」
「そうよ、 いつの間に居たのあんた!?」
「はあぁ!? いったい、どこから現れたんだ!」
「そうだ君! いったい何者なんだ!?」
「………え? ……え? えぇ!?」
「…………!!」
今さら気づいたかの様に、皆は捲し立てながら白夜に聞いてきた。若干、一人ニュアンスが違ってたが。
「……いつの間にって初めから居たよ! 廊下で言い争いしてた時に止めようとして話しかけたし」
「「「「え!?」」」」
白夜がそう言うと、全員――声を揃えて驚いた。
もしや、と思い雪妃達に再度、問い掛けた。
「もしかして誰も気付いていなかったの?」
「「「「………………」」」」
今後は、誰もが口を開かず黙りこむ。
そして辺り一面、静寂に包まれる。
「は、ははは…………はは……は」
誰一人答えなかったことで白夜は落ち込んだ。口から乾いた声の漏れ、遠い目しながら茫然自失になってしまう。
「あ、天城君!?」
その状態で話かける蓮花だが、思考中の白夜には彼女の声が届いていなかった。
(はあ~………そりゃあ、よく地味とか、影薄いって言われるけど、まさか今まで誰も気付いていないとかあり得ないよ、もう)
はぁ~、と心の中で溜息と愚痴をこぼしていると、
「ん?」
ふと、視界に剣が突き刺さる祭壇とダリア達の様子が見えた。
気になって視線を向ける。
(……遠くからじゃ、はっきりと見えないけどアレって確かロングソードだけ?)
白金色に輝く両刃の剣。黄金でできているかのような柄、その鍔の真ん中にゴールデンサファイア色の宝石が填まっているのが特徴的だ。
〝聖剣〟というべき剣を、ダリア達は祭壇から回収していた。
その光景を眺めていると突如、体が揺さぶれ白夜は慌てって顔を戻すと、正面に蓮花の顔が目の前に映った。
「あ、やっと気づいた! 大丈夫ですか天城君?」
「うあぁぁ!?」
突然、目の前に現れた彼女に、白夜は驚き声を上げ、後ろに一歩下がった。
「どうかしたの、天城君!?」
「いや、なんでもないから! それで小島さん、なにか用でも?」
慌てて返事をする自分の顔を、蓮花は小首をかしげ不思議そうに眺める。
「うん! みんなで話し合ってとりあえずダリアさん達と一緒に此処から出ることになったから、その事を伝えようと思ったの」
「え! みんなって僕、話し合って無いけど!?」
蓮花に告げられた事実に驚愕してしまった。
「話し掛けっても、上の空だったでしょ天城君は!」
その質問に対し蓮花は少し怒って答える。
どうやら自分抜きで、皆は話し合ったようだ。
「そのご――」「そろそろ、宜しいでしょうか。皆さん」
謝ろうとした白夜の言葉を遮り、ダリアと騎士の一人が布を巻いた剣ようなモノを抱え戻ってきた。
「ええ、話は纏まったわ。いつまでも此処に居るわけにはいかないもの。取り敢えずはあなた達を信じて着いていきます」
皆の代表として雪妃が前に出て答える。
「みんなもそれで良いわね!」
そして雪妃は振り向き、確認を取る。白夜達は一斉にうなずく。
その答えにダリアが「良かった!」と満足したように笑顔で振り返り、
「では、外の出口まで護衛しますので皆さん、私達について来て下さい」
出口に向かって案内を始める。
そんなダリア達を見つめ、まだ見ぬ世界に不安と興奮を覚えながら白夜達は、彼女達の後に付いて行った。
最後までお読み頂きありがとうございます。ご感想や誤字指摘などいただけると嬉しいです。次回の投稿も不明で、申し訳ございません