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クラスマッチ-練習の話

今日から練習開始だ。昨日決めた通りにみんな動いてくれればいいが。ちなみに、他クラスの大将や指揮官が誰か、などの情報は当日公開されるらしい。もちろん人数もだ。つまり俺たちの作戦は当日まではバレないということになる。


「よーし、みんな集まったな。じゃあ昨日話した通りに動いてくれよ。」


俺がそう言うと、場の空気が少し引き締まった。練習とは言えすでに実戦と同じ環境に立たされていて、もちろん死ぬこともあるので当然だ。

各クラスの大将に学園から配布された水晶体を手で砕くと、遠方に集団が出現した。これが訓練開始の合図になるらしい。そして現れた集団はというと、これまた説明の難しい代物である。わかっていることといえば、この空間も含めたすべての物質は学園長の魔法で作り出されたものだということだ。


「もっと引きつけてから散開しろ!お前らが狙われたら元も子もねぇ!」


「了解です!」


こちらに向かって疾走してくる集団は皆顔がない。いわゆるのっぺらぼうというやつだ。1人だけ王冠を載せたやつが、あいつが大将ってことか。

中距離の魔法の射程内に奴らが入った途端、俺以外の全員は散り散りに駆け去った。奴らの先頭を行く数人が一瞬そちらへ注意を向けたが、すぐに俺の方へ向き直した。


「ほら、大将はここだ!倒せるもんなら倒してみろよ!」


敵は数発魔法を打ち込みながら俺の周囲を円形に囲み始めた。とりあえず避けられる程度は剣で弾いておく。完全に囲まれるや否や、奴らは一斉に魔法を放った。今だ!


「ウォール!!」


俺の周囲にバリアのようなものが展開されて、敵の魔法とぶつかる度に激しい衝撃が起こっている。いつまで耐えられるかはわからないが今のところは大丈夫そうだ。

もう何発受けたかわからなくなってきた頃、突然大声が聞こえてきた。


「今だ!殲滅しろ!」


奴らの包囲の隙間から、走ってくるクラスメイトたちが見える。タイミングばっちりだ。

その後は戦闘と言うには一方的過ぎるものになった。負傷者を一人も出さずに初戦は終わった。倒した奴らの身体は光になって消えて言った。ほんとどういう仕組みなのか…


「すごいです!ここまで被害が出ないなんて思いませんでしたよ!」


「まぁ作戦勝ちだな。みんなこの調子でもう一戦も頼んだぞ。」




二戦目も何の支障もなく勝利した。敵の大将を討ち取るとすぐに元のコロシアムに戻ってきた。


「まさかあんな奇天烈な作戦で二勝をあげるなんて思わなかったわぁ。」


「それにしても、やっぱりあそこはこのコロシアムとは別の場所なんだな。」


「そうです。学園長の魔法で作られた空間なので他のクラスと重なることもありません。」


「なら常に作っておけばいいのに…」


「僕だってあれだけ魔力を使えば疲れるんですよ?それにコロシアムや訓練所以外でケガをすることなんてそうそうないですし、回復魔法の練習がしづらくなっちゃうじゃないですか。」


「うわぁ!どこから現れたんだよあんたは!」


突如姿を現した学園長には心底驚いた。


「それにしてもイリアス君、編入してきて早々大将を務め、作戦まで立てるなんて大したものですね。」


「そりゃどうも。」


「では、この後の授業も頑張ってくださいね。」


「授業があること忘れてたぜ… もうヘトヘトだってのに…」




二日間朝練と授業のコンビを受けて相当疲れた… これがあと何日も続くのか…

三日目の朝練が終わり、校舎の方へ向かって歩いていると、明らかにこれまで扉なんてなかったところに入り口ができていた。ここはなんだろうかと思って中へ入ると、上へと続く階段があった。これはもう行くしかないよなという好奇心に駆られ登り始めると、一番上には学園には似つかない、異質な部屋があった。


「なんだよ… ここ…」


「誰かいるのかね!?またあやつは鍵をかけ忘れおったな!そこの君、しばらく待っておれ。じきに手が空く。」


5分ほど待っていると、奥の方から銀髪の老人がやってきた。見たこともない裾の長い白い上着を着ている。


「やはり生徒さんか。わしについておいで。学園長がいるところまで案内しよう。」


老人と一緒に歩きだしたが、部屋の中には変なものがたくさん置いてある。どれも金属製のようだが、何に使われているのかさっぱり見当もつかない。ウィーンって音までしてるしな。


「おい学園長!また鍵をかけ忘れおって!生徒さんが迷い込んできたぞ!」


「これはすみませんね、僕としたことが。おや、これはこれは。イリアス君じゃないですか。」


「一体何の部屋なんだよここは。」


「本当は秘密なんですけどね。君には僕も期待してるので特別に教えてあげましょう。ここは、言わば科学室と言ったところですね。ちなみに必要な機材は全部魔法で生んだ雷で動いてます。直流を交流に変える変電機も作ったんですよ。」


「科学?そんなわけないだろう。科学は何千年も前に失われた技術、そんなの子どもでも知ってることだぞ。」


「確かにその通りですよ。ここ以外ではね。あ、もう一つ科学室はありますがどうでもいいことです。どうせ誰もたどり着けませんしね。」


「じゃあ俺も一つ秘密を教えてやるよ。俺には前世の記憶とやらがあるみたいなんだ。もちろん科学の知識だってあるぜ。まぁ信じてくれなくてもいいけど。」


「それはすごいですね。」


満面の笑みだが、これは絶対信じていないな。そもそも信じてもらえるなんて思ってなかったけど。


「ここであったことはもちろん他言無用ですよ?もし喋っちゃったら… どうなりますかね?」




その後俺は老人に連れられ元の廊下へと戻ってきた。老人にお礼を言うと彼は会釈して扉を閉じた。そこにはもはや扉があったなんて思わせないほどだった。


「あー!こんなところにいたんですね!もう授業始まっちゃいますよ!早く早く!」


たまたま出会ったカノンちゃんと一緒に教室へと向かった。どうやら彼女は俺のことを探していたみたいだがいつまで経っても見つからないのでどうしようかと思ってところへ、ひょっこり俺が現れたらしい。今回は出ることが出来たが、もしあんなところへ閉じ込められたりしたら… いや、考えるのはよそう。

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