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模擬戦闘の話

訓練所での一幕はエミ先生が俺の魔法を相殺してくれたおかげで大事には至らなかった。最も、余波で近くにいた生徒が数人吹っ飛ばされてたが。


「イリアス君、今のはなんだったんですか…」


「そんなの俺が聞きたいですよ。火の玉が大きくなるのをイメージしてたらあんなことに…」


エミ先生はウーンと考え込んでいたが、クラスの全員に待機するよう指示するとどこかへ去って行った。他のみんなはまた魔法の訓練を再開したり、友達と喋ったりしだして、特にすることもない俺はただ立ってそれを眺めていた。そんな俺のところへ近づいてくるのが2人、カノンちゃんとフリージアちゃんだ。、


「イリアス君イリアス君!私も見てたんですけど、どうやったらあんな強力な魔法を撃てるんですか!?」


「俺にもよくわかんないんだよ。イメージが大切だーって言うから言われた通りにしただけなんだけどな。」


「いつか私と勝負しましょうねぇ?私も負けてられないわぁ。」


「別に勝ったつもりは無いんだけどな… まぁいつかやれる時にな。」


「ところで、イリアス君の適正は結局何だったんですか?あれだけ強力だったんだからやっぱり火ですかね?」


「いや、それがわからなかったんだよ。学園長に渡された水晶玉は真っ黒に染まってたな。」


「真っ黒にぃ?それはおかしいわねぇ。あれは基本的にパステルカラーにしかならないからねぇ。何十年かに1人の逸材と呼ばれる人達も、それぞれの適正に由来した色に染まるはずよぉ。まぁ色は濃いんだけどぉ。」


「そんなこと言われてもな。俺はただ言うことに従っただけ… お、エミ先生が学園長連れて戻ってきたぞ。」


俺がそう言うとみんなの視線が一斉にそちらに集まる。2人は神妙な面持ちでこちらへやってくる。


「イリアス君、話は聞きましたよ。来て早々なんですが、間近で見る必要があるのでもう一度撃ってくれませんか、僕に向かって。」


「ええ… 大丈夫かよ。まぁあんたがいいなら俺は別に構わないけど。」


俺はもう一度目を閉じて両手を前に突き出した。さっきと同じようにイメージすると、また目の前で熱が膨張していくのがわかる。周囲の人間の息を呑む様子が伝わってきたところで目を開ける。一度目よりもさらに成長した火の玉がそこにあった。


「目で見ると確かにすごいですね。いいですよ、それを放出するイメージで!さあ!」


こうなったら言われた通りにやるしかない。俺は目の前の巨大な火の玉、いや、もはや火柱と呼べるものが速度を持って飛んでいくのをイメージした。

学園長はエミ先生とは違い何もしようとはしない。そこまで早くはないとは言え、火柱は確実に距離を詰めている。いくら精霊とは言えあんなのが直撃したら…


「みなさん心配しているようなので説明したいところなんですけど!多分見た方が早いのでちゃんと見ていてくださいね!」


学園長がそう言い終わるのとほぼ同時に火柱が直撃した。さっきとは比べ物にならないくらいの爆風と衝撃が起こり、俺は立っているのがやっとだった。

ようやく煙も消え、あたりの視界も良くなった。爆心地には1体の影が…学園長だ。


「私は魔法を分解してその魔力を吸収することができるんですよ!どうです!?すごくないですか!?」


「あんたは自慢するためにここまで来たのか。」


「ああ!そうでした、忘れてました。まぁ今ので結構わかったことが増えましたし、そのことから話しましょう。いい話と悪い話、どちらから聞きたいですか?」


「強いて言えばいい話かな。」


「了解です。まずは君の適正についてですが、おそらくすべての属性がそうです。火や水なんかの基本属性もそうですし、回復魔法なんかの特殊なやつもです。そしてそれらを扱う大元の魔力ですが、そんじょそこらの精霊の比じゃありません。僕たち大精霊並、あるいはそれ以上です。もはや人間の限界なんてはるかに低いところにあります。」


「つまり俺は歩く兵器なわけだ。」


「ぶっちゃけるとそうです。そして悪い話ですが… これが外に漏れれば特別討伐対象になるかもしれません…」


「なんだそれ?どういうことなんだ?」


「簡単に言うなら、国が君のことを新種の魔獣だと認定するかもしれないってことです。」


「はぁ!?ふざけんなよ!なんで俺が魔獣扱いされなきゃならないんだよ!」


「君の言い分ももっともです。ですが人間は、過ぎた力を恐れるのです。君の力が認められて精鋭部隊にでもスカウトされれば万々歳なんですけどね。」


「俺はこれからどうしていけばいいんだ?」


「とりあえずはカリキュラムどおりに過ごしてください。今の状態では余りある魔力を持て余すだけです。それをコントロールする術を身につけねばなりません。学園外のことについては僕たちに全部委ねてくださいな。」


「わかった。だがもしも刺客が現れた時には…」


「援軍が来るまで応戦してください。なんなら返り討ちにしたっていいんですよ?」


「そういうことならよかった。俺だって魔獣扱いされたままみすみす討ち取られるのはごめんだからな。」


学園長は笑顔でウンウンとうなづいているが、言ってることはだいぶえげつない。


「あ、ついでなんで君の剣の腕前も見ておきたいですね。誰か、剣の心得のある生徒はいませんか?」


「私と手合わせ願おう。」


前に進み出たのは髪を後ろで束ねた、目つきの鋭い彼女はいかにも剣士な見た目をしている。


「君は… えーっと…」


「メリル=バレンシアだ。まだまだ未熟ではあるが、剣の名家、ガルディック家の者と剣を交えるまたとない好機だ。よろしく頼む。」


「そんなにかしこまらなくても… まぁいいや、学園長!二振り剣をくれないか?」


「二振り?君は自分のがあるじゃないですか。」


「俺のは代々うちに受け継がれてるものだ。剣の善し悪しで勝負が決まるのはあまりいいことじゃないだろう?」


「なるほど。わかりました。………はい、どうぞ。」


俺とメリルちゃんの前に剣が現れる。特に変わったところの無いごく普通の剣だ。

お互いその剣を抜くや否や相手に斬りかかる。女性だからだろうか、伝わる衝撃自体は軽いものの、太刀筋は悪くない。数合交えただけで彼女が相当な手練であることがわかった。


「イリアス君もメリルちゃんも頑張ってくださーい!」


遠くでカノンちゃんの応援が聞こえる。

その一瞬の隙を突いてメリルちゃんの刃が俺に迫る。これは避けても間に合わない、アレを使うしか…





「え… 今何が起こったんですか…?」


「メリルが勝ったと思ったんだけどねぇ。やっぱり彼は強いわぁ。」


俺が左手に持った剣は彼女の首筋に押し当てられ、彼女の剣は根元から折れて数間先の地面に突き刺さっている。これは勝負ありだな。


「さすがガルディック家の跡取りだ。今の私では君には勝てない、完敗だよ。」

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