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留学生の話

「じゃあ一応寝る部屋は分けておくけどー、来たかったらこっちに来てもいいからねー?」


「なっ!誰が!」


にひひと笑う褐色の少女につい言い返してしまった。幼い頃から男集団の中にいたせいか、どうも女には慣れない。


「リナちゃんはいつもそんななのか…」


「まぁそうだねー。ところでさー、いきなり名前で呼んじゃう感じの人なの?意外ー!もしかして、カノンのこともー…」


「カノンちゃんと呼んでいるが、何かまずかったか?家庭環境のせいかどうにも女性に慣れてなくてな。」


「いや、別に…」


リナちゃんは少し怪訝な顔をしたあとカノンちゃんに何やら耳打ちしている。


(ちょっとカノン。この人なかなかのイケメンで名家の出で、しかも天然のジゴロなんてすごすぎない?)


「ジゴロってなあに?」


「わーーー!声が大きいって!」


どうも俺にはジゴロな部分があるらしいな。心に留めておくか…


「ところで、この後はどうすればいいんだ?夕食までまだ時間もあるし…」


「そうですね、同じクラスの人のところへ挨拶にでも行きましょうか。」


「あたしは課題がまだ残ってるから留守番してるねー。ちゃんとご飯までには帰ってくるんだよ?」


「心配しすぎだよ!私だってもう子供じゃないんだよ!」




先に出て部屋の外で待っていたが、さっきのやりとりを思い返してみると2人の関係はどうにもただの同級生には見えない部分がいくつかあったな。そんなことを考えつつ5分ほど待っているとカノンちゃんが出てきた。


「遅くなってすみません。リナったらいつまでも私のこと子供だと思ってるんだから…」


「ちょっと聞いてもいいか?君たち2人は同級生なんだよな?」


「いいえ?違いますよ?」


まずここから違ったか。


「リナはああ見えて私達より1つ歳上です。今年で18なんで卒業試験さえ合格できれば来春には卒業ですね。」


「まじかよ… どちらかと言えば歳下だと思ってたんだが…」


「リナは回復系の魔法を使いますからね。自分の身体も活性化してるんだと思いますよ。」


「使える魔法は人によって違うのか?」


「いえ、基本的にはどんな魔法でもある程度は扱えます。まぁそこに得意不得意が絡んできますけどね。」


「なるほど。じゃあ俺がどの系統が得意なのかとかわかる方法はあるのか?」


「そこら辺は学園で検査してくれるはずですよ。私の予想ではイリアス君には… そうですね、風属性なんかが似合ってる気がします。あ、じゃあ仲のいい子で風属性の魔法が得意な子がいるのでまずはそこに行きましょうか!」




ということで連れてこられたのは俺らの部屋と同じ2階ではあるものの、建物の真反対に位置する部屋だ。ネームプレートにはセレン、フリージアという2人の名前が記されている。


「セレンちゃーん、フリーちゃーん!開けてくださーい!カノンです!」


すぐに扉は開いた。その隙間から金髪の子が顔を覗かせている。


「あら、いらっしゃい。隣の少年はどちら?」


「俺はイリアス、今日からここに入学することになった。よろしく。」


「あぁ、君が噂の転校生君か。いいよ2人とも、上がって上がって。」


部屋に上がると、間取りは一緒だがカノンちゃんとリナちゃんの部屋に比べると少し簡素な感じのする部屋だった。


「こっちの方がごちゃごちゃした感じが無くて俺は落ち着くな。」


「なんですとー!私達の部屋は別に散らかってるわけじゃないんです!センス溢れるデザインなんです!」


「いやー、あんたらの部屋はこの寮でも相当散らかってる方だと思うよー?イリアス君気をつけてね、この子パンツ脱ぎっぱなしにしてたりするから。」


「セレンちゃん嘘ばっかり吹き込まないでください!私だって怒りますよ!」


どうやらこの子はセレンちゃんの方らしいな。サラサラの金髪に綺麗な碧眼、おそらくはこの国の人間じゃないんだろうな。


「君はどこの出身なんだ?」


「私はルーシランから留学という形で来ている。噂に聞いたんだけど、君はこのジプレクス王国の名高い貴族の出身なんだってね。」


「まぁそんなところだ。俺からしてみれば家がどうとか関係ないんだがな。」


「私も家のことではそうとう悩まされたよ。まぁそれはおいおい話していくとして、カノン、今日は何か用があって来たのか?」


「いえ別に。ただ暇だったのでご飯までの間イリアス君の挨拶に付きそう感じで来ただけです。イリアス君の適正の話してて、風っぽいなってことで最初はセレンちゃんのところに来たんですよ。」


「なるほどねー。確かに風っぽい感じあるね。」


風っぽいとは言われるものの本人からすればまったくイメージ湧かないんだがな… それにしても女の子2人にじっと見つめられると恥ずかしいな。


「ところで、カノンちゃんは何の魔法が使えるんだ?見た感じ… 火とか?」


「ぶっぶー!ハズレでーす。正解は雷属性でしたー!」


そう言うとカノンちゃんは両手の人差し指をこちらへ向けた。その間に小さな稲妻が走る。


「おお!すごいな!」


「へへーん。まぁこんなもんですよ!」


「ランキングじゃまだまだ下の方なのにね。」


「ランク付けなんてあるのか?」


頬を膨らませて怒るカノンちゃんをよそに俺はセレンちゃんに質問した。ランク付けなんてあったらたまったもんじゃない。まだ魔法の基礎さえも知らないとは言え、低評価に耐えられるような性分じゃないからな。


「3ヵ月に1回考査があるんだけど、この前あったばかりだから次は2ヵ月以上も先ね。」


「ならよかった。俺はまだ全然魔法のこと知らないからな。絶対下の方になっちまう。」


「まぁでも、あれはいかに魔獣と戦えるか、言わば戦闘力を測るものだからね。別に魔法が得意じゃなくても上位にくい込んでる猛者だっているし、大丈夫だと思うよ。」


なるほどそれはいい制度だな、なんて思っていると突然チャイムが鳴り響いた。


「何のチャイムだ?」


「朝、夜のご飯とお風呂の時間に鳴るんです。じゃあ行きましょうか。リナちゃん拾っていかないと怒っちゃうんで一旦部屋に戻りましょう。」


俺たち3人はセレンちゃんの用意が終わると、元の部屋を目指して出発した。

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