頼み事の話
「よし、じゃあさっそくだが、風紀委員長にはある仕事をしてもらおう。」
「お手柔らかに頼むぜ。」
ジェーン会長は横にいたミロクちゃんの肩を掴んで俺の方へ寄せてきた。
「ミロクと一緒に学園長のところに行ってきてくれ。話は通してあるから、会えば次にすることを教えてくれるはずだ。」
「よし、わかった。」
「えー、あたしも行くのー?」
「お前が一番適任だろうからな。頼んだぞ。」
「しょうがないなー。」
わかったとは言ったものの、やけに遠回しなやり方だな。何か学園長を間に挟む必要があるのだろうか。
生徒会室を出るや否や、ミロクちゃんがこっちを見て、ニヤニヤしながら話しかけてきた。
「ねぇねぇ、イリアス君。」
「なんだ?えーっと… ミロクちゃん?」
「お、もう名前覚えてくれたんだ!うれしいなぁ!まぁそれは置いといて、イリアス君友達たくさんできた?」
「たくさんかどうかはわからないが、ある程度はできたかな。クラスのみんなとも仲いいしな。」
「じゃあさじゃあさ!ぶっちゃけどの子が好み!?」
「なっ…」
「いいじゃん教えてくれたってー。あたしはさー、14歳でここに来たから、ろくに男子との付き合いもしたことないんだよねー。だから君が入学するって聞いた時すっごいわくわくしたんだよねー。みんなも多分同じだと思うよー?」
そうか、みんな男との関わりが少ないのか。だからみんなあんなに積極的に… いや、きっと勘違いだ。俺に好意を持ってるやつなんているわけないよな。それに異性との関わりで言えば俺だって同じだし、気になる人なんていないんだから向こうも同じはずだ。きっとそうだ!
「別に誰かを特別視してるとかそんなのはないぞ。」
「えーーー… つまんないなー。」
会話もそこそこに、学長室に到着した。廊下の端と端とは言え、歩いて一分程度だしな。
「7-B ミロクでーす。失礼しまーす。」
「お前タメだったのかよ!カイリちゃんと同じだと思ってたわ。」
「失礼な!これでも7年です!」
そんなところへ、半開きの扉から学園長がひょっこりと顔を覗かせた。
「人の部屋の前で痴話喧嘩するのやめてもらえます?特に独り身の男の部屋の前で。」
いつになく不機嫌そうな顔をしているが無視しよう。
「ジェーン会長に言われて来たんだ。話は通してあるんだよな?次に何をすればいいんだ?」
「まぁまぁそう急がずに。とりあえず中に入って座っててくださいよ。お茶くらい出しますから。」
俺たちが中で待っていると、紅茶の入ったティーカップを3つ、魔法で浮かせながら学園長が戻ってきた。
「はいどうぞ。ミロクくんとここに来たってことは、君も生徒会に入ったんですね?」
「ああ、風紀委員としてな。」
「学園長、あたしも何するか聞かされてないんで、さっさと教えてもらえると嬉しいです。」
「二人ともほんとにせっかちですね… わかりましたよ、話せばいいんでしょう話せば。」
自分も椅子に座ると、紅茶を一口飲んでから、学園長は話し始めた。
「これは一部の者しか知らない極秘情報だということを念頭に置いておいてください。生徒会の3人は知ってるのでそこは安心してくださいね。」
「えっ!あたしだけ知らなかったの!?」
「君が呼ばれない限り生徒会室にいないからですよ… 僕だってそう何度も向かうのは嫌ですし。」
「くそー、会長め!あたしを騙したな!何が"お前が適任"だよ!あたしも聞いてこいってだけじゃん!」
「はいはい、落ち着いて。じゃあ話しますよ。実はですね、最近魔獣の活動が活発化してるんですよ。人的被害も結構出てますが、混乱を避けるために今のところ伏せられています。」
「それが大変なことだってのはよーくわかる。だが、俺たちにどうしろって言うんだよ?倒してこいってか?」
「人の話は最後まで聞きなさい。えー、その処理で王国管理局が手一杯の今、僕は報告するしかないと思ったんです、科学室のことを。」
「さよなら、学園長。短い間だったけど世話になったな。」
「お世話になりましたー!」
「人を勝手に罪人扱いしないでください!まだ監獄送りにはなりませんよ!まぁ始末書は書くハメになりましたが… それで今朝、僕の読み通り王国管理局の方から正式な依頼が届いたんです。非力な者でも扱える武器を作ってくれって。訓練された兵士がもう何千人も殺されてますから、戦力を増強しないといけないんでしょうね。でも、僕が今まで研究してきたことで小型の武器を作るのは厳しいんです。そうは言っても向こうさんは待ってくれません。そこで、イリアス君の出番なわけですよ!」
「俺に武器を作ってくれってか。」
「そういうことです。この学園で頼めるのは君しかいませんから。ではイリアス君、"銃"というものをご存知でしょうか?」
「ちょっと待てよ… あーわかった。火薬ってのを
急激に燃やすことで生まれるエネルギーで金属の弾を飛ばすやつだろ?」
「そう、それです。それを作ってほしいんです。」
「なぁ、それってやばいものなのか?」
「色々あるが… 下級騎士の鎧程度なら貫通できるな。」
「でもそれって誰でも使えるんだろ?もし完成すれば…」
「ええ、今なお増え続ける魔獣を一般人でも狩ることのできる時代がやって来るかもしれませんね。あとこれはできればでいいんですが、お友達に頭のいい子がいるなら、その子に君の知識を教えてあげてください。君自身も戦力としては貴重なので、ずっと後衛に引きこもってるのはちょっともったいないんですよね。」
「わかった。じゃあ科学室の鍵を借りていくぞ。」
「いいですよ。あ、中にいる人と仲良くしてくださいね。彼のことはガウス博士と呼ぶように。」
頭のいい友達… 心当たりがあるのは一人か。まずはそっちに寄って、事情を説明してから科学室へ向かおう。




