家族の話
ここにいる生徒会のメンツは俺のことを庇ってくれるみたいだが… 本当に信用していいのか?
「なぁ、どうして俺を庇うんだ?素直に国に引き渡せば済む話だろう?」
「確かに、お前がいくら強いと言っても学園生全部を敵に回して生き残るのはまず無理だろう。強引にでもとっ捕まえる方が早い。だが、私が会長の座に着いてる間はそんなことはさせない。学園長の命令ってのもあるが、私の私情も入ってるな。」
「私情?どんなだよ?」
「私も、お前と同じ境遇にあったんだよ。11歳で当時の生徒会長を打ち負かした時、王国管理局に強制連行されてさ、色々調べられたんだよ。その時は学園長が直接乗り込んできて、私を連れ帰ってくれたから助かったが、もし助けが来なかったら… 私は殺されていただろうな。」
王国管理局はなんで強力な魔道士を殺そうとするんだ?魔獣の脅威は子どもでも知ってるはず。なのに戦力になる者をみすみす手放すなんて…
「なんで、殺されたってわかるんだ?」
「私を調べてた研究者の1人がな、私のところに来てこう言ったんだ、『お前の魔力は黒だった。黒は魔族の証。じきに死刑執行人がやって来るだろう。』ってさ。」
「黒は魔族の証…?冗談だろ?」
「その反応を見る限りじゃあ、お前何か心当たりがあるな?違うか?」
「俺も… 俺も黒だったんだ… 最初の検査で水晶玉が…」
「なるほどな。つまり私と同じ状況ってわけだ。だが心配するな。別に私は自分が魔族だって構わないし、魔族の味方をするつもりもない。だからお前も…」
「俺はあんたとは違う!!違うんだよ… なんで俺が… よりにもよって魔族だなんて…!」
「ガルディックさん?大丈夫ですか?」
アマネさんが心配そうに声をかけてくれてるのがかすかに聞こえるけど… 声がかすれてうまく喋れない。ちくしょう… 涙まで出てきた。いきなり大声を出したせいか喉も痛い。
「イリアス君いきなりどうしちゃったのさ?」
「ごめん… 突然怒鳴ったりして…」
「お前、魔族に何か辛い過去でもあるのか?」
「辛いなんてもんじゃないさ… 俺はそのせいで、魔族を殺したくてたまらないんだ。」
「よかったら聞かせてくれないか?言葉にすれば少しは辛さも和らぐはずだ。」
「母と兄2人が死んだんだ。あの時出征してたのは、当主である父と魔道士としても有名だった母、それと兄3人も騎士として戦いに参加してた。俺はまだ魔法は使えなかったし、騎士団にも所属してなかったから留守番だったんだ。みんなが出発してから十日目くらいかな、急に屋敷中が騒がしくなったんだ。なんだろうと思ってるところに帰ってきたのは大怪我を負った父と二番目の兄だった。」
「五年前の戦いか。魔族の領域との境界線で起こった大規模な戦争… 当時の生徒会役員も参加させられたよ。私たちは前線には回されなかったが、魔族が絡んでいるという話は聞いていた。まさかあのガルディック家が負けるほどだったとはな…」
「帰ってきた2人はどうにか助かったが、他の3人は二度と… 後に俺が聞かされた話だと、ガルディック家を中心とする部隊1500人を壊滅させたのは1人の魔族。それから俺は、魔族を根絶するために剣を降ってきた。魔道士に覚醒したのは幸運だと思ってた、奴らを殺す手段が増えるからな。なのに… 俺自身が魔族なんてさ… 皮肉だな…」
俺の独白を聞いて、みんな黙り込んじまった。それもしょうがないか。すげぇ重い話だしな。
「あの… えっと… いいですか?」
最初に沈黙を破ったのは、意外なことにカイリちゃんだった。
「なんだ?」
「えっと… もしイリアス先輩が魔族だったとして、他のご家族の皆さんは先輩のこと恨むでしょうか?」
「ん… どういうことだ?」
「確かに、先輩のご家族の皆さんを傷つけたのは魔族です。でも先輩とその魔族との間には何も関係ないじゃないですか。それに先輩だって… 亡くなった方のために頑張ってきたんです。あ… 偉そうなこと言ってすみません…」
また涙が… 今日俺泣いてばっかだな。家にいる時に散々親父から"ガルディック家の男は絶対に涙を見せるな!"って言われてきたのにな。
「いいかイリアス、私たちはお前を守りたい、お前は仇討ちするまで死ぬわけにはいかない。利害の一致ってやつだろう?だったら是非…」
「わかってるさ。俺のすべきことも何もかも。生徒会に入ろう。」
俺は涙を拭いながらそう言った。もう俺の中では決心がついている。ジェーン会長の言う通り、まだ死ぬわけにはいかないんだ。
「賢明な判断だ。じゃあお前は今日から… そうだな、風紀委員とでもしておくか。学園の風紀を守ってくれ!」
「会長、女しかいない学園にいる唯一の男って一番風紀を乱す原因だとあたしは思うんだけど… 」
「イリアス、ミロクが何かしでかしたら遠慮なく魔法をぶつけてやれ。私が許可する。」
「会長!?」
一時はどうなることかと思ったが、なんとかやっていけそうだな。風紀委員ってのはちょっとめんどくさいが… まぁなんだかんだで楽しいよな、きっと。




