生徒会の話
「わざわざ来てもらってすまなかった。空いてるところに座ってもらっていいぞ。」
正面玄関からすぐ右手にある生徒会室の扉を開けると、ジェーン会長自ら迎えてくれた。中には他に2人、1人は副会長だろうが、もう1人はなんの役職なんだろうか。
「初めましてガルディックさん。うちは生徒会副会長を務めておりますアマネ=シノノメと申します。どうぞお見知りおきを。」
「あ… えっと… 会計のカイリ=エラムです… よろしくお願します…」
「ああ、よろしく。2人とも8年生なのか?」
「いいえ、うちは8年ですけど、カイリは6年です。」
「まぁ先輩だとわかったところで敬語になったりはしないんだけどな。」
「別に構いませんよ。会長も昔からそんな質ですし、そもそもこの国の国民性がそうですしね。」
ちょっと待てよ。この副会長、シノノメとか言ってたな。あのシノノメか…?
「一つ聞いてもいいか?」
「はい、うちに答えられることならお答えしますよ。」
「あんたシノノメって家名なんだよな。もしかして…」
「ええ、そうですよ。このジプレクス王国の建国者、アヤ=シノノメの末裔です。」
「すげぇ… あの『オリジン』の子孫にこんな所で会えるなんて… じゃああの魔法も使えるのか!?」
「うちは八十代目ですし、もうだいぶ血も薄くなってますからね。もう力も弱くなってますが… それ! この程度しかできません。」
彼女の手のひらの上には一匹の蛙がいた。本でしか見たことがない能力を間近で見られるなんて… 帰ったらカノンちゃんに自慢してやろう。
「本当に生命を創り出せるんだな。」
「かつての先祖とは違って、人間みたいな大きな生き物は創れないんですがね。」
約7000年前に起こったとされる大災害、『ロストワールド』の時に生き残った5人の内の一人、アヤ=シノノメには生命を創り出す魔法が使えたという。それにちなんで彼女は『オリジン』と呼ばれるようになったらしい。正直ガルディック家なんて比にならないくらいの名家のはずだが、そんなところのお嬢様がなんで学園で生徒会活動なんかしてるんだ?
「化け物みたいな生徒会長に、『オリジン』の末裔である副会長… もしかして他の役員も何か特殊能力が!」
俺がそう言いながらカイリちゃんの方を見ると、小柄な彼女はいっそう縮こまって、ジェーン会長の後ろに隠れてしまった。
「すまんなイリアス。こいつはものすごい人見知りでな。大変だとは思うが、少しづつでもいいから仲良くしてやってくれ。ちなみにだが、こいつにもちゃんとそれ相応の能力があるぞ。」
「どういった感じの?」
「それはまだ言えない、というかここで見せる訳にはいかないんだ。いずれ見ることになるだろうからその時に教えてやるよ。」
「わかった。ああ、ところで、俺は何で呼び出されたんだ?」
「おお!すっかり忘れてた。生徒会役員にはあと一人、書記がいるんだが、そいつが来るまで待つつもりだったんだ。どこほっつき歩いてんだよあいつは…」
その瞬間、後ろからのものすごい衝撃に俺は吹き飛ばされた。後頭部がめちゃくちゃ痛い… ぐぁっ… 背中に何か…
「遅れてすまんね会長!みんなでトランプしてたらつい… ってありゃ?転校生君まだ来てないのか。じゃあセーフだね!」
「足元を見てみろ。お前が今踏みつけてるものは何だ馬鹿野郎。」
なるほどね… 俺は今背中を踏みつけられてると…
「あぁぁぁぁ!ごめん転校生君!そんなところにいるとは思わなくってさー!」
「顔も見ない内から足蹴にされるとは思ってもみなかったぜまったく…」
「ごめんってばー!そんな皮肉言わないでさ、機嫌直して、ね?」
「やたらハイテンションだなあんた… それはそうと、あんたが会長の言う書記か?」
「そうだよ!あたしは書記のミロク=チェンバーだよ!よろしくね!」
「ミロクは肉体強化の魔法がやたら得意なんだ。情報収集にはもってこいでな。ちょっとやってみせろ。」
「りょーかーい!ちょっと待っててね。うーーーん… お!面白いことが聞こえた!先生たち今日パーティがあるんだって。いいなぁ、あたしも行きたい。」
「どこでそんな話してるんだよ。」
「んーっとねー、職員室のあたりかな。お、もっとすごいこと聞いちゃった!エミ先生ってあんなにおしとやかなのに、酔うと脱ぐ癖があるんだってさ!」
「おいやめろ。俺の中のエミ先生のイメージを崩すな。」
本当に聞こえてるのか怪しいところだが、嘘をついてるようには見えないし、一応信じておくか。
「よし、じゃあ本題に入るぞ。単刀直入に言うが、イリアス、お前には生徒会に入ってもらう。」
「はぁ?生徒会って学校の運営とかするんだろ?選挙とかしなくていいのかよ。」
「選挙なんてないぞ。会長職は序列1位の奴が担うことになってるし、あとのメンバーを選ぶ権利は全部会長にある。もちろんお前が心底嫌だというなら考えるが。」
「でも俺に事務作業なんかできると思うか?」
「いいや、お前にやってもらうのはもっとエキセントリックなことだ。まずお前がどこまで知ってるのかを聞かせてもらおう。」
「どこまでも何も、全く知らねぇよ。」
「生徒会には国から依頼が来ることもか?」
「そうだな。初耳だ。」
「変に染まってないだけまだましか。んじゃ、今から言うことは本当のことだ、心して聞いてくれ。………昨日、王国管理局の方からこんな手紙が来た。中身は"イリアス=ガルディックを捕縛されたし、生死は問わない"って感じのことが書かれてたな。」
ついに来たか。学園長から警告されていたとは言え、なかなか心にくるものがあるな。
「なるほど。いずれ来るだろうと学園長に警告はされていたから動揺したりはしないな。」
「それは心強い。それで、うちからは"イリアス=ガルディックには多大な可能性がある、有用性が確認できるまで暫し時間が欲しい"と送っておいた。その返事がさっき来たんだ。」
「ようやく話が見えてきたぞ。」
「ああ、お前の考えは多分合ってる。そうだ、お前には生徒会役員として国からの依頼をこなし、自分の存在意義をアピールしてもらう。」
「もしそれも失敗したら?」
「国外逃亡するしかないな。」
なんで俺が逆賊みたいになってるんだよ。俺の平穏な学園生活を返してくれ… それが正直な感想だった。




