エキシビジョンマッチの話
学年ごとのクラスマッチはA組が優勝を収めた。だがしかし、このイベントの本番はこれからだ。
「決まりました!B組がA組の大将を討ち取りました!これで優勝が確定しました、おめでとうございます!」
今日一番のざわめきが観衆の間に広がる。優勝したのは生徒会長率いるB組とのことだ。序列1位… 生徒会長の座に8年間居座るあの女性は学園史上最強だと噂されている。
「生徒会長!報道部の者です、インタビューをしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、もちろんいいぞ。なんでも聞いてくれ。」
「では初めに…」
「すごいですねー、生徒会長。1年生の頃から序列1位を貫いてますからね。」
「午前中にやってた1年生のクラスマッチ見たけど、周りがあのレベルの中で学園最強って相当だよな。」
「ええ、だから当時は魔獣疑惑さえあったそうよぉ?私はまだ入学前だから知らないけどぉ。」
「私は11歳で入学しましたから2年生からの生徒会長なら知ってますけど、その噂は本当ですよ。」
「へぇー。俺と同じだな。」
「ああそうだ。君も変な噂に負けちゃだめだぞ。」
カノンちゃんだけでなく、フリージアちゃんまでも顔が引きつっている。まるで何かに怯えるように…
「初めまして、だな。君がイリアス=ガルディックだな?よろしく頼む。」
見た目に反してものすごい威圧を放つ金髪の女性、指には生徒会長の証である真紅の指輪をはめている彼女の名は… ジェーン=セミラミス。
「あんたが生徒会長… 噂に聞いた通り、化物じみた力を持ってるみたいだな。」
「ほう、なぜそれがわかる?」
「君の身体から有り余る魔力と抑えきれない殺気が滲み出てるからに決まってるのです。」
「なるほどな。ちなみに君がシュメリア、イリアス君の専属メイドとやらだね。」
「そうなのです。」
「ふふ… 『最強の矛と盾』2人同時に会えるとはな。1時間後に開始される予定のエキシビジョンマッチで闘えるのを楽しみにしてるぞ。」
ジェーン会長はそれだけ言うと去って行った。学園長も相当な強者だが、あれとはまた違う恐ろしさを持つ人だな。
50分後、各学年の優勝クラスはコロシアムに集められエキシビジョンマッチの説明を受けていた。
「基本的なルールはクラスマッチと変わりません。ただ、復活のみルールが異なります。今回の件の試合では一度やられてしまうと戦線への復帰はできません。要するに、より実戦に近づけた条件での闘いとなります。」
さあ、作戦も何も考えてないがどうしようか。
「イリアス君、私たちはあなたの指示に従います。どう攻めますか?」
「実を言うと… 何も考えてないんだ。だが、騙し討ちみたいな方法であの生徒会長を倒しても意味が無ぇ。ここは正攻法で行こうかと思ってる。」
「なるほど、わかりました。私たちは雑兵の処理をしますので、イリアス君とシュメリアさんの2人で一気に攻め込んでください。」
「わかった。後ろは任せたぞ。」
「了解なのです。」
こうして学年の壁を超えた闘いの幕が開いた。
「お前ら!8年生以外は全部下級生、おそらくは格下だ。恐れずにガンガン攻めろよ!」
A組生徒はみんな散開していった。どの学年も同じような戦法をとり、コロシアム中央では大乱戦が繰り広げられている。
しばらくして、そのあちこちから悲鳴にも似た叫び声が聞こえてきた。
「8年生が来たぞ!一度退けーーー!」
「たった1年の訓練の違いがここまで出るのか!」
最初は圧倒的に優勢だった7-Aも、群衆を包囲するように参戦してきた8-Bにはなす術もなく、今ではジリ貧だ。
「まじか… どうするシュメリア!あいつらを助けに向かわないと包囲殲滅されるだけだぞ!」
「そう…なのです。復活できないルールの都合上、対会長戦を見据えるなら、少しでも人員を確保しておきたいところなのです。」
「よし、じゃあ行く…」
「イリアス!シュメリア!いたら合図をしろ!」
通信用の魔法を使って呼びかけてきたのはジェーン会長だ。あたりを見回すと、混戦を極めている群衆のすぐ側にその姿を見つけた。合図をしろと言われてもな… とりあえず一発撃ち込んでみるか。
キョロキョロと俺たちのことを探しているジェーン会長は、俺が放った火球をいとも簡単に手で打ち払った。
「そこか。ということはあの位置からあの向きに撃てば… よし!」
何だ?何を企んでいるんだ?
ジェーン会長は俺たちに気づくや否や、俺たちに背を向け距離を取った。
「『最強の矛と盾』、一度闘ってみたいとは思ってたんだよ。いい機会だ、誰にも邪魔されたくない、3人だけで楽しもうぜ。」
ジェーン会長は呪文を唱えながらその左手をコロシアム中央、群衆の方へと向けた。その瞬間、そこには何も残っていなかった。あの戦闘狂は、敵である下級生だけでなく味方の8年生さえも消し去ったのだ。




