クラスマッチ-本番の話
「えっと… じゃあシュメリアちゃん?」
「気安くちゃん付けで呼ぶななのです。少なくとも君たちよりははるかに年上なのです。」
「ロリババ…」
「ご主人?そんなに口を縫い合わされたいのです?」
「冗談だって。ところで、お前は自称メイドだが、学園にそんなのがいていいのか?」
「それもそうなのです。」
案外あっさりと納得したな。強引にでも自分の理論を展開してくると思ったが。
「じゃあイリアス君の"所要物"ってことにすればいいんじゃないかしらぁ?専属メイドなんて似たようなものだと思うけどぉ。」
「あたしはご主人の物だと言っても過言じゃない存在なのです。」
「じゃあそういうことにしておきましょうか。」
俺もシュメリアもうんうんとうなづいている時だった。もうA組しかいないコロシアムにカツカツと足音が響いた。
「話は聞かせてもらいましたよ。僕に内緒で何楽しそうなことをしているんですか。」
「が、学園長…」
「君が… いや、あなたがトップなのです?」
「おや、あなたも勘づいているのですか。ええ、そうです。僕がここの管理者です。」
…?なんか雰囲気が変わったな。シュメリアと学園長は何か関係があるのか?
「まぁいいでしょう。イリアス君、これを君の"所有物"だということにしておきます。」
「そんな簡単に認めていいのか?」
「言ってしまえば、あの石版を解放するだけの魔力の持ち主に与えられるご褒美みたいなものですからね。僕の力がもっと戻っていれば… あ、まだ仕事が残ってました。ではこれで失礼します。」
学園長は帰り際、シュメリアに何かを耳打ちしていった。それにしてもなんでここへやって来たんだ?本当なら俺たちも訓練に出ていて、ここには誰もいないはずなのに…
「と、とりあえず訓練を始めましょうか… 時間もだいぶ押してますし。」
ユキちゃんがそう言うと、みんな我に帰ったかのように戦闘準備を整え始めた。
「あたしも参加していいのです?」
「クラスマッチでは武器の使用が認められてますからね。多分いいと思います。」
「責任はもちろん?」
「イリアス君が負います。」
「どうせそんなことだろうと思ったぜ… じゃあみんな、準備はいいか?」
全員の目が集まったところで、俺は水晶体を手で砕いた。
まぁやっぱりどんな状況でもスパイってのはいるよな。シュメリアが現れた次の日には全学年に俺たちのことが広まっていた。『7-Aには最強の矛と最強の盾が備わっている』と。
「いやーもうすっかり有名人ですね、イリアス君。付いた二つ名は『最強の盾』だなんて。」
「どっちかっていうと矛の方で呼ばれたいんだけどな。」
「『最強の矛』はあたしなのです。」
クラスマッチ前の最後の休日、俺とシュメリア、それにカノンちゃんの3人は部屋で歓談にふけっていた。8年生は卒業試験のための講習会があるみたいで、リナちゃんは朝からいない。
「それにしても二戦目用のあの作戦、あんな回りくどいことする必要あるのでしょうか?シュメリアさんも加わったことですし、どんなことがあっても負けないと思うんですよ。」
「いや、加わったからこそあの作戦が生きるんだよ。そもそもスパイが紛れ込んでることまで想定済みだしな。」
「私は指揮官には向いていないみたいです… 魔法もダメですし、ほんと何もできませんね…」
「そんなに落ち込むなって。カノンちゃんにだっていいところあるさ。例えば… えー… あれとか…」
「そうなのです。たとえ長所が無くたってカノンはカノンなのです。」
「一つくらい上げてください!全然フォローになってませんよ!むしろ余計に落ち込みました!」
長いようで短かった三週間、ついにクラスマッチ本番の日を迎えた。午前中は1〜4年生、午後は5〜8年生という感じで分かれている。
開会式の後は早速一年生の対戦だ。一年生が魔法を使うところは初めて見たが、やはり上級生のものと比べると格段に劣るものだな。たまにずば抜けているやつがいるが、まだ体が慣れてないのかすぐに魔力切れを起こして戦線離脱していた。
そして昼食を挟んで、5、6年生と続き、俺たちの出番がやってきた。
「みんな、これまでの頑張りと私たちの訓練の成果を見せてあげましょう!」
オーーー!とA組の士気は過去最高潮に高まっている。緊張で少しピリピリとした空気ではあるが、実質戦争をするようなものだし当たり前か。
「一戦目はB組だ。作戦通りに動いてくれよ!いつも通りやればいいんだ、緊張しすぎることなんてないさ!」
カノンちゃんは緊張で目が泳いでいる。フリージアちゃんはその反対でまったく緊張した様子もなく、いつも通り落ち着いている。シュメリアにいたっては飛んでいる蝶を追いかけ回している。
「B組で手強いのは紫色の髪の姉妹です。みんな優先的に倒しに行ってくださいね。」
カノンちゃんなりに貢献しようとしているのだろうが、声が震えているのが痛いほど健気だ。
「さぁみんな!エミ先生にもかっこいいところ見せてやろうぜ!」
俺を中心に再び鬨の声が湧き上がった。
一戦目は俺の作戦も功を奏し、圧倒的大差でB組に勝利した。8割くらいシュメリアが薙ぎ払ってたが。
「みんなよくやったわ!」
「本当にお疲れ様ぁ。まだあと一戦残ってるけどねぇ。それにしても次の作戦、本当に相手はイリアス君の予想通りに動いてくれるのぉ?」
「クラスマッチはコロシアムであるから、対戦相手がどういう作戦をとるのか研究することが出来るからな。C組は必ずああ動く。」
「あたしもそう思うのです。みんなはただご主人に従っていればいいのです。」
そして10分の休憩を挟んで、二戦目が始まった。




