第八話 叔父上との話。
長い間、お待たせしていて済みません。
第八話投稿いたします。
「失礼します、叔父上。」
夜
叔父上の手が空いた時間を見計らい、家の将来について話すべく執務室へと入った。
「ん?こんな時間にどうした、龍臣。」
「叔父上に、都や隣国についての話を聞きたくてまいりました。」
「ほぅ。都なら、お前の父の方が詳しいがな。まぁ、少しなら教えてやれるか。詳しく聞きたいなら、お前の父に聞きなさい。」
「はい!……でも、父上は、ほとんど帰っても来ませんが………」
「まぁ、……鎌倉殿との交渉は大変だからな……。どうしても時間がかかる。だが、5年もすれば戻るだろう。安心するといい。」
「はい!ありがとうございます!……で、この対馬や隣の国について叔父上から聞きたいのですが……?」
「ん、そうだな……。隣国……。この対馬の北には、高麗と呼ばれる国があるのは知っているか?まずは、その国から話そう。………」
こうして、私は現在の対馬での周辺外交について教わった。
おおよそは歴史通りであり、朝鮮は元の属国であったし、九州は太宰府を中心に御家人と御内人が配されているようだ。
対馬は、日本の領土というより、独立国に近い立ち位置だということだ。
距離的にも朝鮮に近いことがそうさせているのだろうと思われる。
しかし、それでも朝鮮に組み込まれないのは、島民の意思なのだろう。
「半島の人間は、厄介ごとしか持ち込まない」
それが、今の対馬島民全員の意見だ。
普段から、漁場の争いがあるし、商人は足元を見てくる。
北側には、勝手に住み着こうというような輩も出てくる。
挙げ句の果てには、"大陸からの略奪者"(元寇)を連れてきた。
どれだけ近くの隣人だとはいっても、所詮は他人。
だからこそ、対馬は今まで朝鮮の支配下にも入らずに、日本側の立場で存続してきたのだ。
しかし、本州も本州で、いざという時に助けてはくれない。
対馬にとっての隣人とは、結局、通りすがりの赤の他人でしかないのだーー
「大雑把だが、こんなところだろう。」
「・・・はいっ!ありがとうございました。」
とりあえず、叔父上の話から分かったのは、過去についてだけだ。
現況の外交などについては何も教えてはくれなかった。
「(いや、あるいは何もしていない?向こうとは現在も一応し戦争状態だ。対馬一国、朝鮮一国では、それに干渉できない……か。)」
爺様からは、朝鮮からの流民が何人か流れてきていると聞いているから、半島の現状について、叔父上が知らないわけではないだろう。
「(もう、二刻は話してたしな。今日はこれで終いだな…。)」
「龍臣。」
「はい?」
「……また、聞きたければ来なさい。今日のように手が空いている日なら、話してやれるだろうからね。」
「……はいっ!!」
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叔父上の話から感じ取れたのは、何より、対馬の帰属意識の低さだ。
対馬という国は、本当に一種の独立国で、その時々で立場を変えて利益を得る、海洋民のような所だということだ。
歴史的に見ても、一応、日本に所属し続けてはいるが、立地としても経済的にも、朝鮮半島の影響を受けやすい土地柄だ。
私は、この土地の完全な独立を目指してはいるが、それには何よりも、自給自足できるだけのモノが必要だ。
最終的に周辺経済を掌握するにしても、それによって対馬が一喜一憂してしまうようでは、独立国としては不安定極まりない。
「何より、衣・食・住!!三種の神器さえ揃えば勝てます!」
やることは、山積みである。
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ーー対馬の現状。
私の作った道具によって、取り敢えずだが、農作業が楽になっているところがあるという。
けれども、私に作れたのは、唐箕や千歯扱きくらいで、肝心な肥料などの土壌の改良はできていない。
農業に欠かせない水についても同じだ。
対馬は島国であるために、どうしても農業に使える淡水が少なく、叔父上に持ち込まれる訴訟ごとの大半が水争いになっている。
対馬の淡水は、山や森の湧き水だけなので、どうしても少ない。
これを改善するには、改めて貯水池を作るか、周辺の海水を濾過し飲料水にしてしまうといったような、大規模工事が必須になる。
いずれは行わなければならないが、今のように領民そのものの数が減っている現状では、それも困難だ。
何にせよ今の対馬には、
・人が足りない。
・人を増やすには食料が足りない。
・食料を増やすには水が足りない。
・水を増やすには工事が必要
・工事を行うために人が必要
といったような、無限ループになりつつある。
その貯水池にしたって、"津波が起こった時にはどうするか"といった問題もあるのだ。
正直、お手上げである。
「あと、できることといえば……」
かつての日本のような(といっても未来のだが)加工貿易で収入を得て、その収益でもって新たに土地を得るか、対馬で大規模工事を行うといった方法もある。
「他国から人を雇って工事する方が現実的か……」
雇った人間は、そのまま対馬に住んでもらってもいい。
そうすれば、人口も上がることだろう。
だが、ここまで色々考えてはきたが、対馬は他国よりも食料は豊富だ。
何よりの利点は、対馬の領民大半が海洋民であり、海産物の確保の困らない点だろう。
農耕には向かない土地だが、他国との中継貿易には最適な土地柄だ。
その上、暖流の影響で、温暖な気候で海産物の確保にも困らないとあれば、十分にいい土地だと言える。
だが……
「その主軸たる交易が、戦争の影響で閉ざされてしまっている。」
正史では、この貿易氷河期を倭寇としての活動で乗り切っている。
しかし、それをしてしまうと我々は朝鮮や大陸とまたも争わねばならず、正直、面倒ごとが増えるだけだ。
「・・・・・対馬の強みとは何だ……?」
この現状を変えるには、どうすればいい……?
取り敢えず列挙してみるが、対馬の強みは、
・領民が船に慣れ親しんでいること
・冬場にも食料確保の手段があること
・他国との国境線が陸地にないこと
・領民が少なく、領主との距離が近いこと
・日本と朝鮮との間にあり、両国の中継地として最適な位置にあること
・暖流の影響で、気候が温暖であること
そして、
・未来人たる、宗龍臣がいること
正史での倭寇は、朝鮮から台湾、中華の東海岸を荒らしまわったと、記録には残っている。
つまりは、船舶でそれだけの規模の移動が可能だったのだ。
だとすれば、これらを逆に向けてはどうだろうか?
"東シナ海を股に掛け略奪する海賊(倭寇)"から、
"アジアを支配する貿易商人"になることもできるはずだ。
「……よしっ!」
これで、対馬の未来構想は整った。
第八話如何でしたでしょうか?
正直、誰にもまだ見てもらっていないので、色々と問題アリアリの作品になりつつあると思います。
次話もすぐに投稿いたしますが、何かしら問題などありましたらご連絡くださいませ。
できうる限り早くに訂正いたします。
その際は、、、できれば優しくお願いします、、、、、
キツい言葉で興奮できるような人間ではありませんで、。
注文が多くすみませんが、。
では、また!!