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第七話 やっと・・・

チュンチュンチュンチュン



「・・・もう・・朝か・・・・・。」



あのデスマーチの一年から、さらに一年の時が過ぎた。

それでもまだ、私は14歳でしかない。


領民からは既に、変人の跡取りとして定着してしまっている。

領主として跡を継ぐのにも苦労するかもしれないが、現状、対馬は領地を維持することに忙しい。

さらにいうなら、私の評判も、悪評ではないために、父たちもそこまで大げさにするつもりはない様子である。


ここで優秀な弟でもできれば、信長の如く、自らの地位の心配でもしなければならないのかもしれないが、

父には、子どもを作っているような精神的余裕さえない様子なので、今後も心配する必要はなさそうだ。



「しかし、内政に直接関われないのは痛いな・・。」


先年からの頑張りの成果もあってが、今年の収穫量は、農漁業ともに高まっていると思う。

正確な数字を誰かが調べているというわけではないので、みんなの概算でしかないが、例年よりも取れ高は多いらしい。


だが、これはいいことばかり、というわけではない。

漁業の方では、新しい網での漁獲量が多いために、多少問題も出た。


魚介類は、当然のことだが、米や麦に比べ腐りやすい。

だから、収穫量が多すぎるのも、また問題なのだ。


今年の余剰分は、干物などの保存食として残すことになった。

が、来年度以降のことも考えると、収穫量が多くなりすぎている現状は、歓迎できるものではないのだ。


父上や重臣たちは、未だ国に戻らず、鎌倉での協議に明け暮れているそうだ。

これでも、年に数度は戻っているらしいが、対馬に居つくことはほとんどない。


余程、関東のほうが居心地がいいらしい。

母上も言っていたが、曾爺さんさんが亡くなってからの父上は、かなり遊び歩いているらしい。


爺様もこれには嘆きを隠せないようだが、重臣たちもこれに付いていってしまっている手前、対馬の現状を司っているのは、完全に爺様の手腕一つだ。



爺さんの名前は、宗盛国。

文永の役の時、蒙古軍と戦ったって言われている、宗助国の孫でもある。


ちなみに父上は、宗経茂。

俺はその息子だ。


宗龍臣なんて言う人間は、この時代的に考えて、存在しないはずだ。

龍臣なんて言う名前からして、もうあり得ないしな。


言ってなかったかもしれないが、俺の名前は宗龍臣そう たつおみ

幼名も、多津匡たつおみだ。


今まで読めなかったっていうやつがいたらスマン。謝っておこう。

幼名と諱を同じ読みにするのは縁起が悪かったはずなんだが・・

俺には、適用されないらしい。


どういうわけか同じ読みだ。


龍臣の龍の字も臣の字も、どこからとってきたのかさっぱりな漢字だし。

正直、俺自身が忌児であった可能性は高い。




と、話がずれたな。

父のいい評判はあまり聞かないが、爺さんと叔父上は俺ともよく会ってくれるし、領内の評判もいい。

俺自身も、先年、元服を迎え、叔父上たちの仕事を手伝い始めるようにはなった。


まだまだ本当に些末なことにしか関わらせてもらえないので、もどかしいこともかなり多い。

だが、爺様や叔父上の手腕には、本当に感心させられる。


対馬の人口も少ないとはいえ、一万人程度はいる。

それだけの領民たちの諍いを調停し、周辺諸国からの圧力を遮っているのは、完全に二人の手腕そのものである。


この時代、地方領主の仕事というのは、多岐にわたるが、

そのうち、最も重要視されるのは、調停。裁判権である。


水利権の調停から、土地境界線の裁定。

相続や個人間の借金まで。


様々な案件が持ち込まれている。

まぁ、個人間の借金についてなどは、適当に済ませてしまうが。


地方領主は、その軍事力を背景にある程度、原告被告の納得がいくように裁定を下すのが原則である。

まぁ、当然、むちゃくちゃな案件も持ち込まれたりするので、、すべてがすべてとはいかないのだが・・。



叔父上は、この調停が異常にうまく、持ち込んできた領民たちも、不満をほとんど抱かずに帰ることが多い。

普通、‟不満抱かずに”なんて不可能だと思うのだが・・、それだけ説得が妙技なのだろう。

私が、横で聞いていてもなお、理解できないほどに結論がいつの間にかすり替わっている。


正直、詐欺だと思う。



そして爺様は、領軍の統率がうまい。


もう、今年で40になるはずだが、歴戦の戦士、といっていいほどにその体は絞られているし、家臣や兵も、爺様の手足の如く縦横する。

その様は、まるでオーケストラの指揮者かのようだ。

爺様の指揮で、軍は思いのままに敵を切り分けていくのだろう。



俺が生まれてからは、大きな戦も起こってはいないが、野盗や他国との小競り合い程度なら、この対馬にも存在する。

朝鮮からは、半島からの漂流者も多いし、海賊やら飢えた他国民などが漂着することもよくあるのだ。


そういった輩を駆逐するのが爺さんの仕事である。

叔父上が参加することもあるが、軍の統率といった面では、叔父上よりも爺様のほうが上手だ。




そういうこともあって、対馬内のことについては、‟今は”心配するほどではない。

だが、私が対馬の開発を加速させてしまったこともある。


正直、叔父上たちだけじゃ追いつかなくなることが出てくることは想像に難くないだろう。


「うん、全部私のせいだな。」


納得させられた。

過去改変とか心躍ることを、自分の未来がうんたらかんたらいう理由なんかで、止められるはずがないだろう。


正直、私が今いる場所は、私のいた未来に繋がっているとは考えてない。

だって、俺がいる時点で、過去は変わってしまっているし、そんな俺が呼吸するだけでも、未来は変わっていくだろう。


よく、物語なんかで、特異点が云々とかいう話があるが、正直ばからしい。

歴史の修復力が~とかいうのも同じくだ。


歴史に修復力なんか存在するわけないだろうが、バカめ。

どんだけ人類に幻想を抱いているのだろうか。


人類=神ではないのだ。そんな人類の歴史に修復力なんか働くわけないだろうに。



・・・・・・・。


と、いうわけで。

今までもこれからも、私のいた未来のことなんぞ気にするまでもなく。

躊躇いなく、歴史改変を行っていくだろうし、自分の都合のいいように、新たなものを作っていく。



ととと、またもや、話がずれてしまった。


叔父上や爺様の尽力があったとしても、人の欲望は限りない。

私の作った道具が、周辺諸国に間接的直接的問わず、影響を与えることは想像に難くない。


例えば、千歯扱き一つとってもそうだ。

あれ一つで、収穫期に必要な人手が圧倒的に少なくなる。


それはつまり、収穫期に、‟ほかのことができる人間が増える”ということだ。

それは、兵士でもいいし、土木工事でも構わないだろう。


つまり、それだけ、対馬の発展、対馬の国力が増加するということでもあるのだ。


だから、

だからこそ。


「叔父上。少しお話があります。」


手は、早急に打たねばならないのだ。



―――対馬が、焼け落ちる前に――



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斎藤 恋(仮名)が、いろいろな世界へと転生していく物語。転生伝記
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