告白
恋のこの字も知らないのに、見上げなければ顔が見えない相手に告白された。
「あの…僕も男ですよ?」
「わかってる。でも好きなんだ」
「えっあっ…」
頬を赤らめて微笑む彼になぜか戸惑ってしまう。さすが微笑みの王子と言われてる人だ。
それにしてもなんでこんな地味な僕が、女子や男子に人気の彼に愛の告白をされるなんて事が起きたのか…。出来ることなら目を覚ましてほしい。彼と周りの女子のためにも。ここはきっぱり言わねば!!
深々と頭を下げ、
「ごっごめんなさい。お断りします」
「そっか…。出来れば理由を教えてくれる?」
きっちりと折った腰を上げ顔を会わせれば、悲しそうな表情に心がズキッと痛くなる。決して僕は悪いことなんてしてないけど罪悪感に襲われた。そんなしゅんと下がった眉や子犬のような瞳で見ないでほしい。
「えっと…」
なんて言葉を言えば良いのかわからない。僕は普通にノーマルだし、男の人とどうこうなる未来なんて考えた事がない。…考えたくない。
僕の答えがなかなか出せないで居たら、彼が呟くように、
「もしかして男だから?」
「っ!!」
「諒くんてば分かりやすいね。でもそれだけの理由なら諦めないよ」
「なっ」
あの儚さはどこに行ったのか!!一言も許してないのに最初の爽やかな微笑みに戻っている。ひきつる口元を手元で隠しながら、
「とりあえず冷静になりましょう!!」
「どこを?」
「どこって…まず、僕への気持ちが本当に恋愛として好きかって事ですよ」
誰にだって勘違いはある。というかそうであってほしい。
「疑ってるの?」
そう返ってくるとは思わなかった。しかも強めに言われたから怯む。
「だっだっだって!!」
「……いきなり言われたって信用しないかぁ。じゃお友だちから始めようか渡瀬諒くん」
「でっでも!!」
「俺の名前言ってなかったね?わかる?」
「……南澤楓さん」
聞く耳を持たないようだ。項垂れながらこくりと頷く。でも彼は満足したようでさっきから笑みを絶やさない。
「よろしくね」
「よろしくおねがいします」
奇妙な関係が始まったのはここから。