彼女は人であって人でなかったりする。
「んん、」
俺を朝っぱらから不快な気分にさせるのは、目覚ましの音と、「さっさと起きなさい!」というオカンの怒鳴り声だ。
「ほら!さっさと起きて、ちゃちゃっと朝ごはん食べて!今日から学校でしょうが!」
と、まだ鳴りやまない雷を朝飯を食いながら避雷針の如く受け続ける。
そう、俺は今日から高校生だ。
「オカン、もう子供じゃないんだ、自分で起きるかさぁ、朝から怒鳴るなよぉ」
とか言ったら雷の他更なる天変地異を起こしそうで言えないわけだ。
ズズッと味噌汁をすすり、未だ鳴り響く雷を掻い潜り俺は家を出た。
いや脱出した。
俺が通う事になるのは普通の県立高校だ。
学校に向かう最中、新しい生活に胸を踊らせる気持ちと、自分の人生の普通さを実感していた。
いきなり後ろから頭をはっ叩かれた。
まるで扇子で叩い様なイイ音だ。
「ってぇ!何すんだボケー!」
と反射的に発言する自分がいた。
「えっへへぇ」と笑顔で俺の前に回り込んだのは幼馴染みの 竜崎 絵美だ。
「えへへじゃない!何なんだお前はー!いきなり後ろから殴るヤツがあるかー!」
「いつも通りのリアクションね。つまんないわね!高校生になったんだから、もっとこうぶっ倒れるとか何かないわけ!?」
と無理難題を要求してくる。
こいつは、俺と一緒の学校に通うという女子高生なわけで、俺の天敵だ。
物心ついたときには既にこのような立場だった気がする。
喧嘩してやり返すもののいつも泣かされていた忌々しい記憶しかない。
幼馴染みとの記憶がそれってどうなんだろうか。
「ねぇ、高校生になったんだしぃー何かするの?」と俺の顔を横から覗く。
「さぁな、別に何にも興味ねーし、特にこれといって特技もない俺だ、今さら運動部にも入ろうと思わねーし」
「ふーん、……まぁ強いて言えばあんたの特技は普通な事だもんね!」
「お前に言われるとむかつくぜぇ」
そんな話をしながら俺達の学校へ到着した。
県立高校『西中部高等学校』
ここが俺達の通う学校だ。
俺達はクラス配属の掲示板を見ていた。
「一緒のクラスね!」と絵美が俺の肩を叩いた。
「はぁ、どんなイタズラだ、これは」。
「イイじゃない、どうせあんたあたしが居ないとダメダメだからね!」
「うるせーよぉ」
そう、俺と絵美は保育園から今日までずっと同じクラスなのだ。
どう考えても、おかしいだろ!
小さい頃、俺がガキ大将との喧嘩で負けていたところを突然現れそのガキ大将をボコボコにし、又、運動会やその他行事で俺を振り回し、第三者から見れば俺はカッコ悪いことこの上ないイメージを焼き付けられたのだ。
入学式も終わりクラスのホームルームでお約束の時期紹介なんだが、俺は普通に出身中学校などで適当に済ませた。
「南中学校出身の竜崎 絵美です。宜しくお願いします」
偉く普通だな、おい。
っと思いきダムが決壊したかの様に趣味や好きなテレビ、好きな食べ物、色、とまぁこれでもかというくらいに喋りだした。
フゥーっと息をつき、何かやり遂げた感で席につく絵美
言うまでもなく辺りは静まり返えっている。
やりすぎだ……
入学式から数日がたち、新たな生活にも慣れてきた。
絵美とは家が隣で毎朝こいつと登下校が日課になっていた。
こいつの隣は話の話題が尽きることはなく、マシンガントークで喋り続けてくるので、暇はしない。
何か知らんが、こいつはクラスに溶け込むのが早く女子からも男子からも人気者になっていた。
それどころか、一部の男子から既に告られてやがった。
中学では才色兼備、スポーツ万能、成績も常にトップで皆の憧れの的だったみたいだ。
ちなみに俺は一度も思ったことはない。
それに付け加え巨乳に黒髪ツインテールプラス眼鏡がこいつの特徴だ。
多属性モンスターか、お前は。