アクマ
食事をしながら、この世界について話してくれた。
それからアクマについてのことも。
召喚した獣や使役いわゆる人型の使い魔のことを、そうひっくるめてアクマと呼ぶそうだ。
「ここでは肯定的な意味として捉えるので、あしからず気にしないでください」
ただ単に言葉や意味といったモノがなく、あてはめたモノがたまたまその単語になってしまったとのこと。
アクマは本来ならば召喚した人が主人となるけれど、あたしは皆川くんという生徒が失敗したため、特別に先生、もといリューオーがあたしの主人となるらしい。
何でもそのクラスでは、まだ習っていない高度な術だったとか。
リューオー以外召喚紋から、外に出たあたしをアクマにすることができなかったとか。
そんなこんな、なんやかんやな理由があって、とにかくあたしは、リューオーのアクマ、ということらしい。
主人とか、アクマとか……なんか納得できないけれど。
「今は納得できずとも、もし皆川くんに技術があったとしたら、危うく皆川くんのアクマになっていたところでしたよ」
もし皆川くんのアクマになっていたら。
リューオーのアクマと、どう違うのだろう。
リューオーのその言葉に、あたしは、アクマがそもそも何をする存在なのだろうと疑問をもち、首をかしげた。
あたしがわからないと判断したのか、アクマについて簡単に説明する。
「基本は隷従ですが近年では愛玩用動物とされていますね。獣よりも人型のほうが力は劣るものの優れた能力があるということもあり、貴重な存在として扱われています。人型のアクマと契約することができる人間は尊敬の念を向けられますが……好色な目で見られることが多いかもしれません」
中学生の男子ですからねえ、命令に背くことがない思うがままの異性と二人っきりとなったらどうなるでしょうね。
好色の意味がこの時はわからなかったけれど、後から続く言葉と、くすくす笑うリューオーにぞっとした。
笑う場面じゃないだろうに。
この男、怖い。
「ああ、わたしですか?あなたは、恋愛対象ではないので大丈夫ですよ」
そういうイロコイの意味で見てはいないのにもかかわらず、彼はさらりと言ってのける。
「……まあ、この世界で、たまたま主従関係だったという話ですから、しばしの辛抱です。もちつもたれつ、そのうち帳消しとなります」
んん?
思わず眉を曇らせた。
「どういうことですか?」
食後の紅茶を優雅に飲みながら、にっこりとリューオーは笑う。
「それはおいおい。この世界について教えましたが、ここから本題です」
「本題……ですか」
「ええ、単刀直入に言います。花姫、あなたは世界から世界へと移動することは、何度目でしょうか」
え、と口をぽかんと開けるあたしをよそに、リューオーは淡々と、自分の状況を話す。
……本当にいきなりですね?