二階奥
「あ、りゅー夕食食べてないよね?」
しょーとは、兄の宵星のことだとわかるけど。
姉が何を?というか誰を?言っているのかわからず、あたしはその言葉を問いかける。
「りゅーくん?」
「? じゃあ、ハナちゃん呼んできてくれるの?」
なんでそうなったとか、どこにいるのとか、なんていう疑問はともかく。
姉じゃ埒が明かないと思い、兄を見た。
「りゅーくん?」
「ああ、お前鞄忘れたんだって? 置けばいいのにアイツわざわざ持ってきてくれてさ。あとで礼言えよー?」
ち が う !!
鞄が何の事だかわからないし、そもそも誰なのかがわからないし。
妹を見た。
憐れんでいるその目は、何だろう。
「花姫ちゃん……ひどい」
「何が?」
「いくら、りゅーくんがおかしいひとだからって存在自体忘れなくてもいいじゃない……」
ひとをおかしいだなんていう、妹が一番ひどいと思う。
誰がわからないまま、とりあえず“りゅーくん”が2階の部屋にいるということで、行ってみる。
“りゅー”って時点で、まさかと思うけど……。
2階を上って驚いた。
元々奥は壁だったのに、扉がある。
戸惑いつつ警戒。
兄、姉と自分の3つの部屋を確認。
わかっていたけれどいなかった、恐る恐る奥の扉をノックする。
緊張。
『はい?』
「ゆ、夕食です」
『わかりました』
扉が開かれた。
……ああ、やっぱり。
やっぱり、リューオーだ。
目を見開いた後、リューオーはにっこり笑う。
初めて見たときと同じリューオーのようだった。
妹、百々季の部屋は1階にある元書斎っていう、どうでもいい設定があります。