日 常
異世界を転々としていて1年以上は経過していると思う。
それなのに兄妹があまりにも、いつもどおりだった。
トリップした前後の時間は、あまり経ってないということ??
わからないけど、その日だったならいいかということにする。
着替え終わり、さんざん悩んだ結果、あの衣装を洗濯機に入れることにした。
洗濯コースを“手造り”にして、スイッチを入れる。
……クリーニングの方がよかっただろうか?
まあどうせ着ないし、何かまずいことあっても大丈夫でしょう、うん。
リビングに行くと、ソファに座っている兄が挙動不審だった。
案の定、妹はにやにや笑っている。
……。
「お兄ちゃん」
「な、何だよ?」
「キャーエッチイーヘンターイ」
「おおおま、ふ、ふざけんなよ!?」
からかうつもりで棒読みで言ったら、動揺した兄の反撃がきた。
ほっぺをつねるなんて痛い。
そのあと本人は裸締め……後ろから首を絞める。
軽くしているつもりなんだろうけど、苦しい。
妹はついに大笑いして腹を抱え、ばしばしと床を叩いていた。
何この兄妹、ひどい。
「はーい、そこまでねー夕食だよー」
のほほんとした声で、姉が兄を止めた。
「適当に分けてってねー」
テーブルに、どどんと置かれたフライパン。
鍋敷きの代わりに新聞がフライパンの下に敷いてあった。
中身は大量の焼きそば。
一品料理は、のんびり屋で面倒くさがりの姉が得意とする物で、もはや定番となっている。
「あたしはいいや……友達と食べてきたし、ごめん」
久しぶりの姉の料理。
だけれど、4度目の世界ですでにニコと……あのときは昼食だったけれど、食べたばかりで満腹だった。
本当のこと話しても、どうせ信じないことだろうと思うし……うん。
母と姉は素敵な夢を見たのねと喜ぶだけで、あとは無言か怪訝な目で見られること請け合い。
「そう……?じゃあ、しょー食べてよ」
「……へいへーい、そういやアイツどうした?」
「りゅーくんなら部屋にいるよー」
んん?
りゅーくん??
三人だけがわかる言葉が何なのか、わからなかった。