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保護。

翌日。

結局俺は、騎士リュースに引き取られることになった。

妹の方は、騎士リュースの知り合いで、子供に恵まれない夫婦の元に行くこととなった。

どうやらリュウが、今は精神的に妹が側に…と、いうか騎士リュースに可愛がられることが耐えられないらしい。

「リュウの時はまだ、君らの両親も親らしく接していたらしくてね…どちらの方が幸せかは分からないが……捨てるのに、悪戯に好意を持たせるのと、最初から意識も向けられないのと…」

引き離してしまうことになる、すまないね…と、リュースに謝られて苦笑した。

「俺、あの夜まで、母親が子供を宿したことも、産んだことも知らなかったから…平気ですよ」

妹は俺が守ったことになっていて、名前をつける権利をもらった。

やっぱり騎士リュースがつけると、リュウの精神が不安定になるからだというのが大きな理由だろう。

「ヒィラ」

赤ちゃんは可愛かった。

俺は赤ちゃんにヒィラと名付けて、彼女を引き取る両親へと渡した。

男同士の夫婦だったけどね…

そういえばこの世界、男同士の婚姻も普通だった。

騎士…リュースの部下トーヤと、一件従者みたいな青年ジオの、それなりに若い両親だったが、人格は騎士リュースが保障してくれた。

元気になったら、遊びにおいでとも言われたし…彼らが妹を見る目がとても優しくて、安心できた。

塔の主張所でイタしていたホモカップルはキモいと思ったのだが、この夫婦に嫌悪感は湧かなかった。

まぁ、比べるのも悪いかとも思うが。

「ヒィラをよろしくお願いします」

「うん。大切にしますね」

にこっとジオは笑い、トーヤは無言で頭を下げた。

ゲームには出てこなかった存在だが、姉が知ったら目を輝かせそうな夫婦だった。

リュウに、落ち着いたらお兄ちゃんになってあげて…と、ふんわりと微笑んだジオの雰囲気は…何だか無敵だった。

騎士リュースに聞いてみると、二人もあの夜の真相やリュウの葛藤は知っているそうで…でも、完全に縁を切らせるつもりはないようだった。


俺に関しては、リュウはもっと複雑らしい。

同じ魔術師体質で、実は捨てられる前の名と一緒の名の弟だ。そして殺しかけてもいる。

あの夜を脱してから、少し落ち着いたリュウは…俺に自身を重ねたりする所もあるらしく、騎士リュースが引き取ることに反対はしなかった。

距離はおかれているが。


一つ嬉しいことは、ご飯の量が増えたことだろう。

リュウの食べる量を基準に出されているのだろう…少し心苦しいが、ありがたくいただく。

……空腹感が、全然足りないと訴えるけれど、あの家よりはずっとずーっとマシだし、流石というかこの屋敷には貸本屋にも置いてないような、高価な本がたくさんあった。

とりあえず、信用できる保護者は出来たけど……魔術師の塔を目指すのは止めない。

つーか、無遠慮に騎士リュースに甘えたりしたら、リュウに嫉妬で殺されそうだし……

騎士リュースにしても、一番大切なのはリュウだろうし。

魔術師の塔に入るには、最低限魔力を発動出来なければならない。

勿論学ぶのも無償じゃない、一年は寮に入れて最低限の生活費は保障されるが…一年たったら、その分の借金は利息込みで月々返していかなければならない。勿論、授業料も二年目から取り立てられる。

そう、一年で魔物退治が出来るようになったり仕事が出来るようにならなければ、お金持ち以外は塔に所属していられなくなるのだ。

なんにせよ、入ってからの話だ。

そう、俺はまだ、魔力発動が出来ない状態だった……なにせ見本も何もない、紙の知識しかなかったから実感湧かなかったし、前世の常識も邪魔をしていた。

だが…シャルの怪我が治っていく様子や、精霊の喜び…そして攻撃のとばっちりを受けた現在……怪我さえ治れば、『試せる』気がした。


しかし、試せるようになるほど、回復したのはそれから三か月後のこと……


俺は五歳になっていた。




とくに気にすることなく、いつものように起きて、リハビリで庭を散歩して…騎士リュースは仕事がら家を出る時間も帰ってくる時間も疎らで、ご飯を一緒に出来るのも疎らである。

リュウはリュースが一緒に取れるご飯の席には、必ず顔を出したが…それ以外で俺と同席する気はないようだった。

塔へは家から通っている。

だから、お昼は使用人さん達に混じっていた。

使用人さん達は騎士リュースに仕えていることを、心の底から誉ていていつも楽しそうだ。

そして優しい人が多い。

穏やかで温かく、幸せだった。

お昼後のリハビリ散歩も終え、借りた本を抱えて部屋に戻ると……その日、そこにはなぜか、リュウがいた。




トーヤ×ジオ・リュクヤの妹ヒィラを引き取った夫婦(男同士)

リュースの部下で、無口な騎士トーヤとジオは同じ孤児院出身である。トーヤは無口であるが剣の腕には天才的なものがあり、若くしてリュースの右腕に挙げられている。ジオは文官として勤めている…細くて童顔のせいか舐められているが、かなり優秀で外見で侮る相手を手玉にとり不正の取り締まりなどを担当している。実は打撃系の攻撃が得意で、腕っ節は剣を持ったトーヤよりも強かったりする。

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