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精霊に愛されし子。

とりあえず、眠ってしまった子供の血を拭く…もしかしたら、汚したままの方が危険を避けられるかもしれないが、血の匂いも色々と危険を引き寄せる世界だ。

街中でも、黒いマリモのような魔物は出てくる。普通の人…子供でも踏みつぶせるようなものだが、血の匂いにたかるのだ。

害虫害獣の死骸やらなんやら食べるのと、あまりに弱いので問題視はされていないが、心情的に前世?の天敵イニシャルGを連想させられて、よろしくない。

形状的にはススワタリなんだが、食事形態はクリオネなんだもんな……ぐろい。

何度か噴水と路地を行き来し、ちゃんと血の匂いを拭うと…子供は目を開いた。

しかしその眼は、何も見ていないかのような……ちゃんと意識が戻ったか怪しい色をしていた。

「あ……」

「大丈夫か?」

覗きこんで尋ねると、そこでやっと目に俺の姿を映して……子供は顔に手をやり、足を触って…少し不思議そうに頷いた。

「腹はへってる?」

俺の言葉に、子供の手が腹に置かれた。

「……へって、ない」

初めてと小さく子供は呟いた。

「そか、良かった」

「きみ、だれ?」

「俺か、俺はリュクヤ」

「ぼく、どうして…怪我治って……」

不思議そうな子供に、もしかして魔術師体質って一般的にはあまり知られてないのだろうか?と、気づく。

そう言えばゲームの舞台は初めから魔術師の塔で、あまり一般人との接触は多くない。

市街地のモグリだが巨大な力を持った魔術師アクラスは隻眼だった。

魔術師体質なのに、顔に傷があって……子供の頃傷つけられて捨てられた人嫌いのアクラスは、闇の精霊使いだった。精霊使いは精霊に愛されし子として、塔が無償で保護する存在なのだが…捨てられたアクラスは主人公にそれを聞くまで知らず、塔に保護された他の精霊使いを妬み憎み襲うのだ。

勿論、塔に保護されている主人公は最初に襲われ(性的に)魔術師としてのレベルと好意値がかなり高くないと、娼館に売られてしまう。

アクラスは塔を呪い、この世界を破壊して終わるという魔王的ポジションだった。

隻眼だったってことは、怪我が治せなくなるまで、魔術師体質のことを知らなかったのだろうし、誰も魔素を補給してやろうと考えつかなかったのだろう。

「魔術師体質の人間は凄くお腹が減るけど、いっぱいご飯か魔素を食べれたら、怪我とかすぐに治るんだよ」

「まじゅつしたいしつ?ぼく、まじゅつしなの?」

「んー、魔術を使える体質だけど、魔術を使えなければ魔術師じゃないよ」

「そっか…ぼく……あ、パン…キス?」

うぐっと胸を押さえる。アレは人工呼吸、人工呼吸っ

「ご飯を食べる以外で、その…キスとかすると、魔素を吸収出来るんだよ」

「ありがとう、すごく、きもちよかった」

あぁっ、無邪気な赤い目をキラキラさせて見ないでっ

罪悪感がぁぁぁっっっ

「ぼく、ア…シャ…ル、ト……」

無邪気だった子供の目が、名のった段階で再び絶望に染まった。

……もしかして、親に捨てられたのだろうか?

捨てられた子供、売られた子供は、親から名を取り上げられる。

俺だったら、娼館に引き渡される時に

『呪われろ、リュクヤ』

と、告げられるのだろう。

それがここの風習で、子供は拾われた先や売られた先で、他の人から再び名付けられなければ呪われるという迷信もある。

たしかアクラスは顔の怪我のせいもあって、他人は手を差し伸べず…しかし元の名は呪わしく、自身で自身の名をつけた存在で、結局呪われているのだと自嘲していた。

「シャル?」

「え?」

「シャルって呼んでいい?」

俺は子供の名を真ん中しか聞こえなかったフリをして、言った。

これで迷信とはいえ、子供は呪われた存在ではなくなる。

子供は泣きそうな顔をして、でも嬉しそうに頷いてくれた。

「怪我、聞いていい?」

「…お母さんが、」

うおーいっ、あの刃物傷母親かよっ

「お母さんが連れてきた、おとうさんになる人が」

あ、なんだ、ちょっとほっとした。

「よる、いっしょに寝ようって来て、気持ち悪くてこわくて」

「……え」

「そしたら、ゴオッて燃えちゃって…お、お母さんがぼくを、ばけものって」

えぐえぐと泣き出した子供、シャルを思わず抱きしめる。

うわぁ…としか言えない。

「燃えたのか?」

シャルは泣きながら頷いた。

「こわい?ぼく、ばけもの」

「あほ、怖くなんかねぇよ。それたぶん炎の精霊だ、精霊は知ってるよな?」

怖がらせないよう、にかっと笑って言ってやる。

「精霊が守ってくれたんだ、お前、精霊に愛されし子だったんだな」

「精霊?」

不思議そうなシャルの頭を撫でる。

「そ、お前が助けてって思ったから、お母さんなんかより早く、助けてくれたんだよ。だから、シャルは化け物じゃないよ」

「たす、けてくれた?」

「そ、お前を助けて、守ってくれたんだよ」

精霊に愛されし子ってのは、ゲームの攻略対象に全種一人づついたけれど、他にまったくいないってわけではない。

まぁ、珍しいことは珍しいし、強力な精霊の加護を受けてたのは攻略キャラくらいだろうけど。

火の精霊に愛されし子親衛隊のリーダーも、弱いけど愛されし子だったはずだ。土だったっけかなぁ……


あったかい光の渦が、シャルを取り巻いた。

抱きしめてた俺も、その感覚の恩恵を受ける。

「なに?あたたかい…きれい」

自覚させたことで、精霊が力を増したんだろう。

光りが色を持つ、炎の赤と黒曜石のような黒


………ちょーと待てぇ、炎と闇、二種類の精霊に愛されし子って、どんなチートキャラだよぉぉぉっっ!






ゲームキャラ・アクラス

市街地のスラムの闇を支配する塔に所属しない魔術師。闇の精霊に愛されし子で、ゲーム中最強。人嫌いで気難しい、よく寝ている。自分を捨てた母親を惨たらしく殺すことを人生の目標としている。母親に捨てられる際、殺されかけ隻眼。髪も目も肌も、呪いと闇の精霊に染まって黒い。下手に接触すると騙されて娼館に売られる。売られず交流出来ても、選択肢を間違えると犯されて売られる。

主人公とくっつくハッピーエンドか、戦って倒さなければ世界を滅ぼす。魔王ポジキャラ


シャル・リュクヤは気づいていないが、アクラス幼少時(笑)

隻眼となる原因である顔の傷も治り、呪いに染まる予定の炎の精霊も健在。闇と炎の精霊に愛されし子という、最強キャラ?肌は白で髪は黒く、目は赤い。たぶん気づくの無理(笑)

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