病と血。
リュウが血を吐いて…診察の結果ゲームと同じ病を発病したことを知らされた。
最初は、リュウが塔を出るのも魔法騎士になるのも…よく思い出してみればゲームより早くて、この世界では発病しないのかと思っていた。
「知っているか?七年の呪いだ」
知らせに来たサフル様に、シャルが青ざめながらも首を傾げた。
シャルとリュウは意外と仲良しなので、ショックは大きかったようだが『七年の呪い』という名称は知らなかったようだ。
ぶれることなく俺を慕ってるシャルだが、完全に盲目的ではなくなっている成長が見れて、嬉しいとか考えてしまうのは……少し、現実逃避なのかもしれない。
「魔術師体質の者がまれにかかる病でな、魔素を吸収する器官が暴走するというか…魔素を大量に使ったりすると内臓が勝手に傷ついて血を吐くのだ。この病を発病すると必ず七年後には死ぬ。苦しみながらな…」
淡々と説明しながらも、サフルの表情は明るい。
シャルの頭をぽんぽんと撫でて、やっぱり青ざめているだろう俺にも安心させるように微笑む。
「ただ少し血縁者の血を混ぜ精製した薬を飲めば、簡単に治る」
「あ、じゃあ」
ほっとしたように俺を見るシャルに、俺はつい視線を反らしてしまった。
「リュクヤ?」
あぁ…どうしよう、心配させたくなかったのに…と、泣きたいような気持になってしまう。
「サフル様…俺、俺…」
「どうした?リュクヤ」
そっと服の胸元を広げる…胸の中央には浮かび上がった痣……滲んだ魔法陣のようなソレに二人は固まる。
「それ、どうしたの?リュクヤ…」
「…わかん、ない…七歳になってから、だんだん出てきて…時々、急に魔力とか枯渇寸前に消えるんだ」
俺の血を薬に使っていいのか?やばいんじゃないか?という不安が、この現象を告白させた。
「……今、スファーロを呼んだ。完成途中の魔法陣のように見えるしな…リュウの薬に関しては妹君に協力してもらおう」
それからゴツンと拳固を食らった。そんなに痛くないが、サフル様は珍しくも真剣に怒っていた。
「なぜすぐに言わなかった。馬鹿め」
「心配させたくなくて…」
「それでお前に、何か取り返しのつかないことが起きた場合、手遅れだった場合の周囲の気持ちはどうする」
「あ」
「リュクヤ」
冷えた声が響いた。
ゾクリと背筋が震える。
見れば、シャルが無表情になっていた。
「お風呂、また一緒に入ろうね」
何となくゆっくりと、刻み込むように言ってから、シャルは全然笑ってない目でにっこりと微笑んだ。
もう一人で入れるからと、一人で出来るもん…を、主張しつつシャルの執着を薄れさせる計画が崩壊した瞬間だった。
と、いうか怖い、怖いよシャルっ
魔王アクラスっぽかったっ
俺が大切で心配だから、凄く怒ったということは伝わって魔王とは全然違うって分かるのに、怒り方が凄く似ていた。
あぁ…人って凄く怒ったり憎んだりしてると、いっそ無表情になったり笑顔になったりするのかもしれないなと学習したのだった。
七年の呪い・魔術師体質者がまれにかかる病。大抵の病や怪我はオートで直してしまう魔術師体質だが、魔素を吸収する器官が暴走するのがこの病。血縁者の血を少々混ぜて精製した薬で簡単に治る…が、血縁者がいないと七年間苦しんで死ぬ。魔宝石で苦しみを和らげることは出来る。