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行き倒れ。

と、いうことで、この年代で出会う可能性のある精霊に愛されし子は、残り一人となった。

元々、ゲーム上でもキオは父親を殺してしまったことで、牢に数年入れられて精霊に愛されし子だと判明するまで塔には来ない。

そしてこの世界では、キオはもうしばらく、父親自身に魔術師のことを教わるらしい。

残り一人…歳の離れた兄が、王位を継いだ時から塔に預けられた魔術師体質の王族…王弟。

魔術師体質だけだったら、王族でも問題なかっただろう。

しかし、彼は王弟で水の精霊に愛されし子で、容姿も兄である王とよく似ていた。

魔術師が中心のようなこの国で、それは争いの旗頭にしかならない。

体質だけだったら、歳が離れていることから危険は低かった。

けれど、愛されし子だ。

魔術師の中でも特別扱いされる存在が、王族に現れるのはこれが初めてであるし、塔と王族との関係にも亀裂を呼びかねない政治的にも複雑な立場なのだ。

だから彼は秘される。

ゲームの年齢から逆算すると、十歳から塔入りし現在は十一歳…か?

たぶんシャルより少し前に塔入りしているはずである。

一級魔術師になるよりも、研究者思考の強い彼は…専用の部屋にほとんど籠り切りなのだろう。

ゲームでもほとんど自室の研究室にしかいなかったからな…

水の精霊に愛されし子がいるって話を聞いても、当分会うことはないだろう。


と、思っていたのだが………


「行き倒れ?」

「見事な行き倒れだな…」

双子が慎重に構えたまま、足先で…包帯お化けを突いた。

ゲームのキオと同じように、その容姿が分かるのは選んだルートのみという人物の片割れ

……秘された王子、水の精霊に愛されし子…だ。

「怪我してるの?」

シャルは俺に背後から抱きついたまま、首を傾げる。

基本塔内部で、魔術暴走と虐め以外に危険はない。

あ、あと痴情のもつれ以外では。

「怪我はしてねぇな」

「寝てるようだが…」

双子がそう言った瞬間、ぐるるるるゅうと音が響いた。

「…おいおい、塔で餓死寸前かよ…」

あぁ、ゲームでも主人公とのエピソードであったなぁと思い出す。彼は集中すると、寝食を忘れるタイプなのだ。

主人公の保護者的責任者なのに、反対に主人公が寝食の世話をやいていた。

「仕方ないね、これあげよう」

持っていた箱を開けて、おやつにと作って入れてたシュークリームを取り出そうとする。

「待ったっ、補給なら俺がしてやるから、それはとっとけ」

コジーィの言葉にロジーィも激しくこくこくと頷く。

シャルは…行き倒れて俺にパンを貰った記憶があるからか、何も言わない…ただ俺がキスで補給とかしようとしたら嫌がりそうだが。補給を言い出したのはコジーィなので文句は無いのだろう。

出会った当初はキスは補給の手段以外の意味など、理解していなかったシャルだが塔で勉強をして色々知ってから、俺に対する独占欲が割り増ししたようだ。

コジーィが抱き起こし、唇を寄せるのを止められなかった。

「ぶわっ」

水の鞭がコジーィの体を弾いた。

「なんだぁ?」

害する気はなかった所か助けようとしていたからだろう。コジーィにダメージはない。

前髪が濡れて、滅多に見れない目元が露わになってしまっているくらいだ。

「意識…ないよね?」

シャルの呟きに頷き返して、俺は苦笑する。

「たぶん、水の精霊に愛されし子だね。きっと性的補給が嫌いなんだよ」

だからはい…と、シュークリームを改めて差し出した。

「うぐぐぐぐ…」

「足りなかったら、クレープでもつくってあげるから」

それに双子はお菓子だけで満腹になろうとしないでよね…いくら魔術師体質とはいえ偏食が体にまったく影響を与えないとは限らないんだし……何か心配になったな、今度ちょっと調べてみようかなぁ……

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