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癇癪。

押しかけ弟子ステフ…ゲームでは優しくて友情厚い青年だったが、現在の彼はちょっとうざい。

……ごめん、正直盲信レベルの敬愛ってちょっと…

出会ってから数日で、すでにげんなりしつつある。

ついでにシャルと仲が悪いのだ。

なんつーか…友達の取り合いする幼稚園児みたいな……知り合い同士が仲悪いと、結構胃にくるからちょっと辛い。

シャルは講義の際、助手をしてくれるから…ステフにとっては余計に張り合う対象に見えてしまうのかも。最初のインパクトもインパクトだったろうし。

あの日、休み時間に飛んできたシャルは、俺の側にいる人物が増えたことに暴走しかけた。


涙目で

「ずるいずるいっ、ぼくだってずっとリュクヤと一緒にいたいのにぃぃぃいっ」

………と。


当初の予定より一緒に居られないことは、納得したと言ってもまだ子供なのだから仕方ないだろう。

うねうねと影が増殖し、火の粉がちらちらと舞う中…落ち着かせるために駆け寄って抱きしめるしかなかった。

勿論増殖した影の効果は様々なので、どうなるか分からない。だから影の舞踊を使って火の粉を防御し、影を避けるために足場を作って飛びつくようにして。

しっかりと受け止められた時は密かにショックだった。やっといてなんだけど…

どうも意識としては年上という意識があるからな…

シャルが二歳年上で、体格だってすくすくと育ち俺より大きいって、何度も改めて認識しているようだ。

「おちついて、シャル」

「リュクヤ…」

俺の行動に驚いたのか、影の暴走も火の粉も消えて…そしてシャルは、ちょっと拗ねた表情で俺のことを抱きしめて……ステフに引き剥がされたのだ。

「なんなんですか、あなたはっ、教室内で精霊を暴走させるなんてっ!リュクヤ様に怪我でもあったらどうするんですっ」

「うるさい、リュクヤから離れろ」

シャルの眼差しがすぅっと冷えて、俺は反射的に『まずい』と思った。

だからまぁ、とっさにステフの腕を振りほどいて…シャルを再び抱きしめた。

知り合ったばかりのステフより、シャルを優先するのは当然だろう。

「大丈夫、おちついて」

そこにいたのは癇癪を起した子供じゃなくて、敵を除外しようとする子供……じっとその目から殺意が抜けるまで、覗きこんでいるとシャルはいつもの子犬のような人懐っこい眼差しに戻って、ほにゃりと笑ってくれた。

「リュ、リュクヤ様…」

「ステフ、シャルに飛びついたのは俺だよ。それでシャルを責めるのは違う。シャルも、ステフの言うようにこんなとこで精霊を暴走させちゃだめだ。俺が力に怯えて、シャルの言うこと何でも聞くようになったら嬉しい?」

シャルは俺の言葉にふるふると頭を振った。

何だか泣きそうになってるが、癇癪や我儘で力を暴走させたらシャルのためにならない。

「リュクヤは怯えたりしない…もん」

「でも、力で人を虐げるような相手は、好きになれないぞ?それが自分相手じゃなくても、傍から見てて不快」

「わ、わかったっ、我慢、するっ」

「我慢はしなくていいよ。我儘は言ってもいいし、甘えてもいい。ただ精霊を暴走させちゃダメ。制御習ってるんだろ?暴走する精霊は危険視される、シャルを守ってくれてる精霊達が嫌われるの嫌だろう?」

俺も嫌。そう伝えると、シャルは泣きそうな表情のまま、今度は嬉しそうに頷いてくれた。

ちなみに護衛の双子は、静観していた。事前にリラックからシャルに関わる俺には、干渉しないように注意されていたらしい。

…いつかシャルが癇癪を起こすことや、それを俺が何とかしてしまうだろう…むしろ俺しか何とか出来ないだろうと予測していたそうだ。

それもあってか、シャルとコジーィとロジーィは、相性悪くないみたいなんだけど。

最近は結構仲良く、話をしてるし。

ちなみに双子とステフは、仲は良くも悪くもない感じ?つーか、互いに関心が無いみたい。

…ある意味、こっちの方が性質が悪いかもしれない。

なんかステフはいいとこの家で、両親にも恵まれているらしい。……なんかこれまでまともな両親に恵まれてる人には、滅多に会ってないから何となくシャルや双子の気持ちも分かる。

魔術師の才能も能力もあって、でもそれを軽く扱えるくらい…将来への選択肢も夢も、不安なく持てるっていうのがね……


とりあえず料理の講義に混ざる許可は出した。

直接の弟子にはしなかった。むしろ無理だ。なにせ彼以外にも、俺に師事を受けている料理人さん達は講義代を払って、特定の時間だけ教わっている。

ゲームの登場人物で、本来なら料理界に革命をもたらすはずだったとか、クラスメイトだからとかで贔屓は出来ないだろう。

最初は、人数いっぱいの講義に混ぜるのもどうかと思ったが…許可出さないとずっと付きまとわれそうだったし……おかしいな?、ゲームでは結構好感持てた人物だったのに……まぁ、ここがゲームによく似た世界であって、ゲームの世界ではないということだ。


そして俺も、陸弥のままではないのだ…


なんて今更なことを、実感したりした。



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