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はらへり。

さて、最初のバットエンドはギリギリでセーフだった。

家はそこそこ裕福。

結構でかい家だが、使用人が少ないこともあって使われていない部屋もある。

兄達はそれぞれ部屋を持っていて、自分で掃除して使っているようだ。

微妙に兄弟仲はよろしくないらしい。

いがみ合っていないのは、共通の蔑み対象おれがいるからだろう。

俺は毛布一枚で、親兄弟と遭遇しないように点々と移動して寝起きしてたらしい。

だって、まだ母親の部屋の隣(子供部屋っていうか赤ん坊部屋か)にいた頃は、毎日のようにハイハイし始めた赤ん坊を、奴ら普通に蹴るのだ。

魔術師体質じゃなかったら、生きてはいなかっただろう。

離乳の頃には泣き声が煩いと、その部屋も蹴り出されたし。

使用人が二人いて、兄が五人いる……

俺は六男だった。

ぼんやりとした記憶の中でも、父親が「また男か」とがっかりした様子で呟いてたのを覚えている。

そう、六男で魔術師体質

下の世話は皆無でも、とにかくよく飲むし食べる。

赤ん坊の頃など、夜泣きも凄かったらしい。

しかも最近まで半覚醒状態。勉強や言われたことはするけれど、口にする言葉は「お腹へった」が、ほとんど。

なんつーか、兄達の視線も冷たい。

『使えない』

って、やつだ。

よく蹴られたりもするしな。

まだ幼児なのに、足が結構速いのはこのせいだろう。

あと隠れたりするのも得意だ。


……ギリギリセーフ?


ともかく俺は家の書物……たぶん見栄で買って用意されつつも、放置されていた埃だらけの書庫を少し掃除して、そこで寝起きすることに決めた。

お腹へったしか頭になかった頃とは違い、埃だらけイコール滅多に人がこないというのも分かるし、汚れてつかえない部屋でも掃除すればいいと思いつくのだ。

それから、少しくらいの空腹は我慢するようにした。

娼館が買い取る子供は七歳からだ。

俺は、そんなバットエンドは嫌だぁぁぁぁっっっ!

何としても七歳までに、魔術師の塔へ行くのだ。

書物を読みあさり、使用人さん達の手伝いをしてお小遣いをもらい…食べ物を買いたいのを我慢して、貸本屋に通う。

普通の子供だったら、こんな心配せずに目の前のことでいっぱいになるだろう。

いや、むしろ親の愛情を求めて、なんとかしようとしたのかもしれない。

売られる可能性なんて…そこそこ裕福なら想像もしないと思う。

が、俺の中身は陸弥だ。

そして、この世界によく似たゲームをプレイしている。

バットエンドのエログロさは、泣く。

主人公が騙されて娼館に売られるバットコースでは、デブったバーコードハゲ親父のガチホモに、媚薬使われたり魔宝石って高価な宝石を入れられた状態で挿入、魔素吸収に魔宝石はなくなるけど、無くなるまでに普通の固形物より時間がかかる。

魔素に酔って、ナニで喘がされ、しかも媚薬も使われて落ちてゆく経過………バットエンド、あんなに長くやる必要ないだろっ!

俺はこれまでにないほど必死で、知識を詰め込んだ。


家族から愛情を感じないって、結構キツイ。


ギリギリな位置だけど、唯一あの親や兄達で良かったことは、ほとんど干渉されないってことだろう。

「ぼっちゃん大丈夫ですか?」

「あめ舐めますか?」

と、優しく気にかけてくれる使用人さん達も、忙しさから俺に構いっきりではいられないし。

三歳児が一人で貸本屋に、お金を溜めて本を読みに行っても咎められないのだ。

貸本屋は最初は俺が本を傷めないか、凄い目で睨んでたけど…一年もすれば放っておいてくれるようになった。

ちなみに使用人さんが、こっそり紹介してくれたパン屋さんのおっさんは良い人で、俺の意識が蘇ってからちょっとアドバイスしたら、前日の売れ残りのパンをくれる約束をしてくれた。

時々焼き立てじゃねえ?ってのも混ぜてくれる。

うん、お小遣いくれるのも使用人さん達だしね、親や兄達は最低だけど、救いはあった感じだ。


安心出来ない状況と、慢性の空腹感を抱え、それでも優しい人達と不干渉に助けられ、俺は必死で知識を蓄えていった。





そして俺は五歳になり…そいつと出会った。


足は変な形に腫れ、顔を刃物傷の血で濡らし小さく丸まって、震えているそいつと。

小さな子供はお腹を抱えて、途切れそうな声で呟いた。

「おなか、へった」

俺は、貸本屋には行かずに、いつものおっさんのでない、近くのパン屋へと走った。

こんなのは偽善だと分かっている。

魔術師体質で売られていく子供を全部救えるわけないし、捨てられた子供だっていっぱいいるだろう…けど、顔を切られたり足を折られたりした子を、実際に見て捨ておけるだろうか?

とりあえず、一番腹に貯まりそうな大きさのパンを買って、駆け戻った。

「食えるか?」

小さくちぎって口に突っ込めば、子供は何とか咀嚼して飲み込んだ。

「も…っと」

「ああ、ゆっくりな」

小さくちぎっては口に入れてやることを、繰り返すも数分後…パンは全部無くなったが、子供の顔色は良くない。

顔の刃物傷から流れていた血は、辛うじて止まっていたがそれ以上治る気配はない。

設定では魔素さえ足りてれば、魔術師体質の体はどんな傷や怪我でも治る。

「…も…っと、」

お金はもう、ない。

いつものおっさんのパン屋は、ここからだとちと遠い。


俺は子供を抱き起こした。少し期待したかったが、やっぱり子供は男の子だった。

…これは、人工呼吸だっ!と、自分に言い聞かせ、唇を重ねた。

舌を差し込む。

相手が子供だから出来た…もっと育ってたら出来なかったと思う。

物凄い葛藤を押さえこんで、舌を絡め唾液を飲ませる。

キスでも魔術師体質同士なら、魔素の質を高められる。

気持ちよくなれば、空気中からでも魔素を取り込めるのだ。

最初、驚いていた子供は、すぐにどうでもよくなったのか、それより空腹感が薄れていくのに気づいたのか、積極的に舌を絡めてきた。

「ん…ふぐ…っ」

色々と葛藤がありぎこちない俺と、本能で空腹解消に夢中になる子供…ええ、主導権はあっさり子供のものとなりましたともさっ

「ちょっ、まっ…てっ」

「やだ、もっと」

小さな路地の土の上で、縋られるように何度も何度も…いつの間にか体制も逆転して、深く唇を貪られた。

「んんんっ」

子供の顔の怪我は勿論、足の怪我も淡く輝く魔素が纏わりついて、治った。

それは俺の初めて見る魔法現象っぽいもので……とても綺麗な現象だった。


意識は朦朧としていたが(きっとたぶん酸欠で。)よかったと…久しぶりな笑顔になれた。





しかし俺、本当魔素の吸収保有量どれだけあるんだろう?

子供が満腹になって眠ってしまっても、俺は薄まったとはいえ空腹感の残る腹に手を当てた。




バットエンドコース

娼館・主人公が騙されて売られるコースで、強欲な商人や貴族などによるエロテクを味わうこととなる。媚薬や異物混入(宝石やら高価なアクセサリー)嫌がる様子も楽しまれ男娼調教されていく。


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