UFO研究家、星野あかりの第一種接近遭遇!!!
ギャグコメディです!
「来た……!」
深夜の草原で、望遠カメラを構えた美人UFO研究家・星野あかりは目を輝かせた。
「三十年追い続けた謎が、ついに私の目の前に!」
夜空から、銀色に輝く円盤が音もなく降下する。
「きゃー! 本物! 本物よ!」
興奮したあかりは、誰も聞いていないのに実況を始めた。
「皆さん、ご覧ください! 推定直径十五メートル! 表面は鏡面加工! あ、ちょっと左に寄ってくれる? 写真映えするから!」
すると、本当にUFOが少し左へ動いた。
「えっ、聞いてくれた?」
ハッチが開き、細身で大きな黒い瞳を持つ宇宙人が静かに現れる。
歴史的瞬間だった。
宇宙人はゆっくり右手を上げる。
あかりも慌てて手を振る。
「こんばんはー! 地球へようこそ! 日本語わかる? 英語? 宇宙語?」
宇宙人は首をかしげる。
沈黙。
「えーっと……」
あかりはスマホを取り出した。
「翻訳アプリで何とかなるかな?」
『こんにちは。』
宇宙人が機械のような声で言った。
「あっ、しゃべった!」
『電波を受信。言語学習完了。』
「便利ー!」
『質問があります。』
「どうぞ!」
『なぜ人類は写真を撮る前に変顔をしますか?』
「え?」
宇宙人はスマホ画面を見せる。
そこには、あかりが興奮して白目になった自撮りが大量に映っていた。
「ちがうの! これは事故!」
宇宙人は真剣にうなずく。
『地球の正式な挨拶と理解。』
そう言うと、後ろから次々と宇宙人が降りてきて、全員そろって白目をむき、口をへの字にしてポーズを決めた。
「違う違う違う!」
あかりは慌てて訂正する。
「普通はこう!」
にっこり笑顔。
宇宙人たちも笑顔を真似しようとする。
しかし顔の筋肉の構造が違うらしく、全員ものすごく怖い笑顔になった。
「ホラー映画じゃないの!」
その瞬間、一人の宇宙人が足元の石につまずいた。
「わっ!」
ドミノ倒しのように宇宙人全員が転ぶ。
ゴン!
ガシャーン!
円盤の非常階段まで飛び出してしまい、リーダーらしき宇宙人が逆さまにぶら下がった。
『隊長、重力を切り忘れました。』
『しまった。』
あかりは吹き出した。
「宇宙でもそんなミスあるの?」
『新人ですので。』
「親近感しかない!」
ようやく隊長が体勢を立て直し、あかりに向かって小さな箱を差し出す。
『友好の証です。』
「プレゼント?」
箱を開けると、中には七色に光る不思議な球体が入っていた。
「すごい……!」
思わず持ち上げる。
ポチッ。
「……あ。」
球体には押してはいけないらしいボタンが付いていた。
次の瞬間。
ブオォォン!
あかりも宇宙人も、草もカメラも円盤も、全員ふわっと宙に浮いた。
「きゃーーー!」
『重力反転装置、起動しました。』
「先に言ってーー!」
空中でくるくる回る研究家。
必死に泳ぐ宇宙人。
草原では牛までふわふわ浮き始め、のんびり「モ~」と鳴いている。
『非常停止!』
『ボタンが見当たりません!』
「押した本人もわからない!」
ようやく装置が止まると、全員が一斉に地面へ。
ドサドサドサッ!
あかりは草の上に大の字になった。
宇宙人たちもその横で同じ格好になっている。
しばらく静寂。
やがて隊長がゆっくり起き上がり、翻訳機越しに言った。
『第一種接近遭遇。成功。』
あかりは笑いながら答えた。
「成功……なのかな?」
『少なくとも、忘れられない出会いです。』
「それは間違いないね。」
宇宙船は静かに夜空へ飛び去った。
翌日、あかりが記者会見で真実を語ると、誰も信じなかった。
「宇宙人と一緒に空を泳ぎました!」
「牛も飛びました!」
「宇宙人、意外とドジです!」
会場は静まり返る。
そして一人の記者が手を挙げた。
「証拠はありますか?」
あかりは笑顔でスマホを取り出した。
そこに映っていたのは、白目でポーズを決める宇宙人たちとの記念写真。
その一枚だけは、世界中の誰が見ても――どう見ても、ドタバタコントの集合写真にしか見えなかった。




