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獣人族はアホじゃないのだぁ  作者: 雪だるま


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8

 ベルグラード地方都市。


 朝。


 雪は薄く積もり、白い街並みが朝日に照らされていた。


 数日前まで魔物の恐怖で沈み切っていた町とは思えないほど空気が明るい。


 市場は再開。

 煙突から煙が上がり。

 子供たちが外を走り回っている。


 そして町の中央広場では――。


「のだぁ〜〜〜♪」


 レイが帰る準備をしていた。


 超大型の革袋。

 大量の干し肉。

 町民から押し付けられた保存食。

 なぜか編み物。

 なぜか花束。

 なぜかぬいぐるみ。


「のだぁ?」


 レイは巨大な毛糸の帽子を持ち上げた。


「これ何なのだぁ?」


「防寒用です!」


「のだぁ!」


 若い女性が顔を赤くしながら答える。


「レイ様、寒そうだったので……」


「うむ!」


 レイは即被った。


 耳付きだった。


「暖かいのだぁ♡」


 完全に大型犬だった。


 周囲から黄色い声が飛ぶ。


「きゃ〜〜〜♡」


「似合う〜〜〜!」


「かわいい〜〜〜!」


「のだっ♡」


 尻尾ぶんぶん。


 レイは上機嫌だった。


 だが。


 今の広場、異常だった。


 人が多すぎる。


 しかも。


 美女。

 子供。

 そして――。


 筋骨隆々の男たち。


 やたら多い。


「レイ様!!」


「握手してください!!」


「俺もあんな風に熊型魔物ぶん投げたいです!!」


「弟子にしてください!!」


「結婚してください!!」


「最後何なのだぁ!?」


 レイは真顔で突っ込んだ。


 だが本当に男が多かった。


 理由は単純。


 脳を焼かれたのである。


 特に地方兵。


 彼らは見てしまった。


 巨大魔物群へ単独突撃し。


 笑いながら殴り。


 雪原を蹂躙していく姿を。


 しかもその後。


「のだぁ♡」


 美女に囲まれて串焼き食べていた。


 強い。

 顔が良い。

 自由。

 楽しそう。


 男の理想が詰まっていた。


 脳が焼かれない方がおかしい。


「レイ様!!」


 ごつい鍛冶屋の男が叫んだ。


「昨日のあの熊型魔物!!片手で投げてましたよね!?」


「うむ!」


 どやぁ。


「軽かったのだぁ!」


「すげぇぇぇぇぇぇ!!」


 男たちが沸く。


 レイはさらに調子に乗った。


「のだっ♡のだっ♡」


 尻尾ぶんぶん。


「吾輩、世界最強なのだぁ!」


「レイ様ぁぁぁ!!」


「抱いてくれぇぇぇ!!」


「のだぁ!?」


 レイは困惑した。


「男ばっかなのだぁ!?」


 実際、比率がおかしかった。


 もちろん美女も大量にいる。


 だが。


 男の熱量が異常。


「俺もレイ様みたいになりたい!!」


「レイ様みたいに自由に生きたい!!」


「王都行きたい!!」


「筋トレするぞォ!!」


「のだぁ?」


 レイは首を傾げた。


「吾輩、筋トレしてないのだぁ」


 全員が静まった。


「…………」


「…………」


「…………」


「え?」


「面倒なのだぁ」


 広場がざわついた。


「いやいやいや」


「嘘だろ」


「だってあの筋肉……」


「いっぱい食べて寝てるだけなのだぁ!」


 男たちが絶望した。


「才能かよ!!」


「最低だ!!」


「羨ましい!!」


 レイは満足そうだった。


「うむ!」


 どやどやぁ。


「才能あるイケメンなのだぁ!」


 自己肯定感が空まで届いていた。


 その時。


 子供たちが駆け寄ってきた。


「レイさま!」


「のだぁ?」


「これあげる!」


 木彫りだった。


 不格好な狼。


 レイはしばらく見つめた。


「……のだぁ」


 ちょっと嬉しそう。


「吾輩なのだぁ?」


「うん!」


「強い狼!」


「のだっ♡」


 レイは即機嫌を良くした。


「良い子なのだぁ!」


 子供の頭をわしゃわしゃ撫でる。


 子供たちは大喜び。


 その様子を見ていた女性陣の脳がさらに焼かれていた。


「優しい……」


「子供好き……」


「しかも顔が良い……」


「尻尾ふわふわ……」


「終わってる……好き……」


 かなり危険だった。


 だが。


 一番危険なのはここからだった。


 レイは突然、胸を張った。


「うむ!」


 広場が静まる。


「元気でいるのだぁ!」


 どやぁ。


「吾輩の嫁になりたいものは今吾輩のほっぺにキスしに来いなのだぁ!」


 一瞬。


 空気が止まった。


 そして。


「レイ様ァァァァァァ!!!!!」


 最初に突撃してきたのは。


 髭面の大男だった。


「のだぁ!?」


 ぶちゅぅっ!!


 レイのほっぺに全力キス。


「うおおおおおお!!」


「英雄ォォォォ!!」


「憧れてますゥゥゥ!!」


「のだぁあああああ!?」


 さらに。


「レイ様ぁ!!」


「兄貴ィ!!」


「結婚してくれぇ!!」


 ごつい男たちが殺到。


 ぶちゅっ!!

 ぶちゅぅっ!!

 ぶちゅぅぅぅっ!!


「のだぁあああああ!?!?!?」


 レイはパニックになった。


「何で男ばっかなのだぁ!?」


 美女たちは大爆笑していた。


「ふふっ!!」


「レイ様大人気〜!」


「男にモテてる〜!」


「違うのだぁ!!」


 レイは真っ赤だった。


「吾輩、美少女にモテたいのだぁ!!」


「俺たちじゃ不満ですかァ!!」


「不満なのだぁ!!」


 最低だった。


 だが男たちは笑っていた。


 もう完全に祭りだった。


 町に久しぶりに戻った“笑い”だった。


 そしてその中心にいるのは。


「のだぁあああ!!押すななのだぁ!!尻尾踏むななのだぁ!!」


 男たちに囲まれてわちゃわちゃしている世界最強の獣人だった。


 その時。


 後ろからそっと若い女性が近づいた。


「……レイ様」


「のだぁ?」


 ちゅっ。


 軽くほっぺへ口付け。


 一瞬。


 レイが止まった。


「…………」


 女性は真っ赤になって逃げていく。


 周囲の美女たちがきゃあっと騒ぐ。


 レイは数秒固まった後。


「の、のだぁ……♡」


 顔を真っ赤にした。


 尻尾ぶわぁぁぁんっ!!


 吹雪みたいな風圧が広場を吹き抜けた。


「レイ様かわいい〜〜〜!!」


「顔赤い〜〜〜!!」


「のだぁああああ!!!」


 世界最強の男。


 現在、地方都市で美女と男たちに囲まれて情緒が壊れていた。

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